トップページトピックス電波で探る「胎児星」誕生の瞬間~磁力線を巻き込みながら母体分子雲コア中で成長する様子をとらえた!~

電波で探る「胎児星」誕生の瞬間~磁力線を巻き込みながら母体分子雲コア中で成長する様子をとらえた!~

[記事掲載日:23.02.09]

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 理工学研究科理学専攻 物理・宇宙プログラムおよび理工学研究科附属天の川銀河研究センターの新永 浩子准教授と、理工学研究科修了生の深谷 紗希子さん(令和3年度博士前期課程修了)を筆頭とする研究チームは、宇宙に生まれつつある「胎児星」(専門用語では原始星)が磁力線を巻き込みながら成長する様子をとらえることに成功しました。
 同研究の鍵となる観測は、アメリカ合衆国ハワイ州にある東アジア天文台EAO(East Asian Observatory)が所有するサブミリ波帯JCMT望遠鏡(電波の中でも波長の短い1mm未満のサブミリ波を使った望遠鏡)を用いて、「母体」であるおうし座分子雲コアL1521Fで取得されました。胎児星は、星のもとになるガスや微粒子が集まる分子雲、その中でも特に密度の高い「分子雲コア」にくるまれており、重力によって分子ガスや微粒子(タバコの煙ほどのサイズの塵)を取り込みながら収縮すると同時に、周囲の磁力線を巻き込むことで成長します。磁力線はこれまでも、星の誕生や成長に大きく関わっていると予測されていたものの、今回のようにこれら成長の様子を明確にとらえられたのは世界初の成果です。

 新永准教授は「私たちの体をつくる酸素や炭素、窒素、リンなどの元素は、はるか昔に星の中で合成されたり、星が一生を終え、最期大爆発を起こしたときに合成されたもの。星の誕生と進化の研究は、私たち地球上の生命の起源に迫ることに繋がっている」と研究の意義を、また中心となって研究を進めた深谷さんは「好きなことを研究するための頑張りが成果に繋がり嬉しい」と喜びを語りました。同研究は、2月8日発刊の欧文学術誌「PASJ(Publication of Astronomical Society of Japan;Oxford University Press)」にて発表され、論文中に用いた図が掲載誌第75巻1号の表紙を飾りました。

20230209taiji001.jpgおうし座広域写真。
おうし座分子雲は黒く影のように見える、暗く漂う低温の分子雲。

20230209taiji002.jpgハーシェル宇宙望遠鏡で撮影したサブミリ波おうし座分子雲。


20230209taiji003.jpgシュミレーションによる胎児星周辺の3次元構造。
赤は磁力線、緑は将来惑星系へと進化する疑似円盤、青は胎児星からのアウトフロー。
欧文雑誌「PASJ」第75巻第1号の表紙を飾った。

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2月8日に行った記者発表の様子


【発表論文】
Twisted magnetic field in star formation processes of L1521 F revealed by submillimeter dual-band polarimetry using the James Clerk Maxwell Telescope

【著者】
FUKAYA Sakiko;SHINNAGA Hiroko(鹿児島大学大学院物理・宇宙プログラム・天の川銀河研究センター);FURUYA Ray S.(徳島大学教養教育院);TOMISAKA Kohji(国立天文台科学研究部);MACHIDA Masahiro N.;HARADA Naoto(九州大学理学府地球惑星科学専攻太陽惑星系物質科学)

【掲載誌】
Publication of Astronomical Society of Japan (2023) vol.75, no.1,, p.120-127

【DOI】
10.1093/pasj/psac094

【関連機関】
東アジア天文台 同時プレスリリースウェブサイト
東アジア天文台 インスタグラム

【関連情報】
新永研究室および深谷さんの活躍は、鹿大だより第29号「研究室から」でもご紹介しています!
研究成果のアブストラクトビデオは以下QRコードよりご覧いただけます。
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