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【博物館】南西諸島に生息するミミズハゼ属の新種を記載

[記事掲載日:23.11.10]

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 鹿児島大学総合研究博物館と沖縄科学技術大学院大学の研究チームは、屋久島から沖縄島にかけて生息するミミズハゼ属の新種をスミゾメヤリミミズハゼLuciogobius griseus(ルシオゴビウス グリセウス)として記載しました。和名と学名は、この新種とよく似るヤリミミズハゼと比較して暗い色彩を生時に呈することに因みます。
 本研究の成果は、ニュージーランドの国際誌Zootaxa(ズータクサ)に2023年11月2日に掲載されました。


【概要】
 ミミズハゼ属は主に海岸にある砂利の隙間に潜り込んだ生態が知られる、細長い体をしたハゼの仲間です。スミゾメヤリミミズハゼは形態的特徴からヤリミミズハゼ種群に含まれ、そのなかでも頭や腹鰭が小さい、背鰭や臀鰭がかなり後ろの方にある、体色が暗いなどの特徴を有します。
 本種は現在のところ屋久島、奄美大島、沖縄島に生息することが確認されました。本種の生息地は主に礫床の河口や海岸に点在する湧水付近であり、礫間隙を淡水が流れる限定的な環境です。生息地の間隙水が減少すると、生息が確認できなくなった地点もあり、淡水間隙水の有無は本種の生息に重要な要素の可能性が高いと思われます。
 スミゾメヤリミミズハゼをはじめ、ミミズハゼ属魚類の多くは種ごとに限られた環境にのみ生息するため、今後のさらなる研究成果に基づく生息環境の保全が求められます。

 スミゾメヤリミミズハゼと同定された42標本(標準体長1.4-4.2 cm)はすべて総合研究博物館に所蔵されていましたが、一部の標本はロンドン自然史博物館、オーストラリア博物館、フィラデルフィア自然科学アカデミーに寄贈して分散保管しています。

【掲載論文】A new subtropical species of goby of the genus Luciogobius (Gobiidae) from southwestern Japan
【著者名】Reo Koreeda, Ken Maeda and Hiroyuki Motomura
【掲載誌】Zootaxa,5361巻3号390-480頁
【DOI】10.11646/zootaxa.5361.3.5
【関連ページ】総合研究博物館 本村浩之教授のHPはこちら 

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図1.ヤリミミズハゼ種群の生鮮写真.スミゾメヤリミミズハゼ(A,B),ヤリミミズハゼ(C),ハウチワヤリミミズハゼ(D).
いずれもよく似るが,胸鰭の形や各体部の長さが異なる.

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図2.種の識別形質となる各体部の標準体長(standard length)に対する割合.星がスミゾメヤリミミズハゼ,丸がヤリミミズハゼ,三角がハウチワヤリミミズハゼ.
部位名称は図1Aの説明に対応する.



【問い合わせ先】
鹿児島大学総合研究博物館 館長・教授
本村 浩之(モトムラ ヒロユキ)
〒890-0065 鹿児島市郡元1-21-30 
TEL:099-285-8111
E-mail:motomura@kaum.kagoshima-u.ac.jp