トップページトピックス【博物館・農林水産学研究科】サンゴ礁に生息する新種のハゼを発見、アカネコバンハゼと命名

【博物館・農林水産学研究科】サンゴ礁に生息する新種のハゼを発見、アカネコバンハゼと命名

[記事掲載日:24.03.06]

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 鹿児島大学総合研究博物館と農林水産学研究科の研究チームは、薩摩半島、大隅諸島、トカラ列島で行われた魚類調査の過程でハゼ科コバンハゼ属魚類の未同定個体を発見し、形態学的・遺伝学的調査を実施し、インド・太平洋広域から得られた近縁種の標本と比較検討しました。その結果、本未同定個体が新種であることが判明し、Gobiodon spadix(ゴビオドン スパディクス)と命名しました。種小名spadixは本種の体全体が茶褐色であることに由来します。また、同様の色彩は日本の伝統色である茜色に近いことから、本種に対して新標準和名アカネコバンハゼを提唱しました。本研究の成果は、日本魚類学会が発行する英文誌「Ichthyological Research」(イクチオロジカル リサーチ)に2024年2月29日付けで掲載されました。

 アカネコバンハゼはミドリイシやニホンミドリイシなどの造礁サンゴを住み家とする全長3 cmほどの小型魚です。成魚はサンゴの枝間の奥にペアで、幼魚はサンゴの縁に単独で生息することが確認されました。
 アカネコバンハゼは国内においては鹿児島本土、大隅諸島、トカラ列島、奄美群島、八重山諸島から記録され、国外ではパプアニューギニアとオーストラリアからも確認されたため、西太平洋広域の熱帯・亜熱帯海域に生息していると考えられます。
 日本ではコバンハゼ属のすべての種が準絶滅危惧種に指定されています。これは、生息の場とする造礁サンゴの著しい減少が主な要因です。今後、さらなる研究成果に基づく多様性評価と保全の基盤形成が求められます。

 本研究で使用したアカネコバンハゼ37標本は,鹿児島大学総合研究博物館と国外の2研究機関に所蔵されています。

【掲載論文】Gobiodon spadix, a new coral goby (Teleostei: Gobiidae) from southern Japan.
【著者名】Masayuki C. Sato and Hiroyuki Motomura
【掲載誌】Ichthyological Research, 10 pages
【DOI】https://doi.org/10.1007/s10228-024-00950-8

【関連ページ】
 総合研究博物館 本村浩之教授 ホームページ
http://www.museum.kagoshima-u.ac.jp/staff/motomura/motomura.html


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( アカネコバンハゼのホロタイプ。上が生鮮時の標本写真。下が生時の個体の写真 )



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( アカネコバンハゼの生息が確認されたサンゴ。左がミドリイシ、右がニホンミドリイシ )