トップページトピックス桜島防災ワークショップ「桜島大噴火時の避難行動を確認する―何を備え、レベルごとにどう行動するのか―」を開催しました。
桜島防災ワークショップ「桜島大噴火時の避難行動を確認する―何を備え、レベルごとにどう行動するのか―」を開催しました。
[記事掲載日:25.10.27]
9月26日(金)に鹿児島市桜島公民館大研修室において、桜島防災ワークショップ「桜島大噴火時の避難行動を確認する―何を備え、レベルごとにどう行動するのか―」(主催:桜島地域コミュニティ協議会連絡会、国立大学法人 鹿児島大学、共催:鹿児島市)が開催しました。
昨年8月に実施した鹿児島大学防災シンポジウム「桜島の火山防災と地域コミュニティ―『桜島火山爆発総合防災訓練』学生発表から考える―」の延長として行われたものであり、大規模噴火時の避難行動の主体となる桜島住民を中心に、鹿児島市職員、大学関係者、学生、高校生等、計63名が参加しました。
開会にあたり、主催筆頭の桜島コミュニティ協議会連絡会の竹ノ下武宏 前会長(兼 鹿児島市桜島支所長)から「鹿児島大学の学生が桜島火山爆発総合防災訓練に昨年度まで7年間参加し、岩船 昌起教授(合教育機構共通教育センター)の指導のもと、火山防災にかかわる住民行動等をアンケート等で研究している。これらの研究は、地域にしっかりと入っての調査に基づいており、島民でも普段気付かないところの問題提起につながっている。そして、本日参加の桜島の方々は、災害時も含めて、桜島の校区や集落等でのリーダーであるので、いろいろな角度から地域の防災を見直す機会としていただきたい」と挨拶がありました。
桜島コミュニティ協議会連絡会の竹ノ下武宏 前会長(兼 鹿児島市桜島支所長)の挨拶
続いて、有倉 巳幸理事(教育担当)・副学長から、「鹿児島大学は地域に根差す総合大学として、桜島火山爆発総合防災訓練に7年間参画しており、桜島の方々との交流を通じて、学生は貴重な経験を頂いている。昨年8月開催の鹿児島大学桜島防災シンポジウムに続く、今回の桜島防災ワークショップで桜島大噴火時の避難および、その後の避難生活にて、建設的・実質的な意見交換がなされることへの期待している」と挨拶しました。また本ワークショップ共同主催の桜島地域コミュニティ協議会連絡会、共催の鹿児島市、後援の国立大学法人 京都大学防災研究所に謝意を示しました。
鹿児島大学 有倉 巳幸 理事・副学長(教育担当)の挨拶(*ビデオメッセージ)
ワークショップ開催の趣旨説明では、岩船教授が、「桜島住民の一部で避難行動にかかわる知識のアップデートがなされていないことが、昨年度シンポジウムでの学生現地調査等で明らかになっており、これを克服するには、㋐住民と直接対話するワークショップが必要であること、㋑地域防災リーダーや鹿児島市職員には、本ワークショップをモデルとして、桜島各所で住民避難行動を確認する機会を作っていただきたいこと、かつ今回も桜島島内に入っての学生研究によって解明された桜島防災にかかわる実態を参考にしてほしい」と述べました。
ワークショップでは、「島外避難_大規模噴火時」の立退き避難において、ⓐ「普段の生活中に、それぞれの場面で何をして、何分で家を出られるか?」、ⓑ「家屋等を出たら、どのように行動し、どこに行くか?」、そして、これらは、「レベル4あるいはレベル5のどの段階で開始するか?」の問いに基づき、避難行動の確認がなされた。また、緊急安全確保時の避難において、ⓒ-a「避難経路で不通になりそうな箇所は、どこか?」、ⓒ-b「島外避難できない場合、どのように対応するか?」が検討され、かつ避難行動要支援者等の避難において、ⓓ「近くに『避難行動要支援者』等が、何人いて、どのよう状態か?」が問われ、グループ討議にて、ⓔ「避難の支援」についても具体的に話し合いました。
鹿児島大学総合教育機構共通教育センター 岩船昌起 教授によるワークショップ
そして、授業等による学生発表3題が、次の通り、報告されました。
A 学生発表「地域防災学実践」受講生
① 出口真優莉(工学部2年)・畔蒜悠太郎(理学部1年)・脇坂拓実(水産学部1年) 「夜間の桜島大噴火時の防災対策について」
② 吉満勇人(工学部3年)・宮里莉奈(農学部1年)・末満勇貴(工学部3年)・網代瑞樹(理学部1年)「桜島大規模噴火発生時の避難方法変更に関する意識調査」
B 学生発表「地域防災演習Ⅰ」受講生
③ 末満勇貴(工学部3年)・柳川すずな(法文学部3年)・出口真優莉(工学部2年)「避難所生活環境の課題-桜島火山爆発時指定避難所において-」
学生発表①
学生発表②
①「夜間の桜島大噴火時の防災対策」では、東桜島町住民26人(平均年齢63.2歳)を対象に聞き取り調査を実施し、a懐中電灯等を用意している人は9割程度だが、実際に夜間に最寄りのバス停等に移動した経験がある人が1割未満であること等が明らかにされ、避難主体の桜島住民を始めとして、夜間避難に対する備えを強化する必要性が指摘されました。
②「桜島大規模噴火発生時の避難方法変更に関する意識調査」では、噴火警戒レベル5時の島外避難方法について、藤野町住民42人に聞き取り調査を行い、aバス避難11人、マイカー避難31人の予定であること、b「集落の避難港からのフェリー避難とマイカー避難」が令和2年度以降「バス停からのバス避難とマイカー避難」に変更されたことについて、13人がこの事実を知らず、特にマイカー避難予定者に多かったこと等が明らかにされました。
③「避難所生活環境の課題」では、桜島島民避難先「指定避難所」小中学校等17か所で既存資料の整理等を行い、a鹿児島市では各施設の床面積を把握しておらず、避難所収容可能人数が床面積に基づいておらず、一人当たりの専有面積がバラバラであること、b半数が「一人当たり2㎡の専有面積+通路幅0.5m」の「最低限の基準」を満たさず、人権に配慮されたものとなっていないこと、c各施設では備蓄内容を把握しておらず、鹿児島市との連携が極めて弱いこと等が明らかにされ、過酷な避難所環境となる恐れが高いことが指摘されました。
これらを受けて、京都大学防災科学研究所の中道 治久教授は、(1)火山は昼夜を問わずに噴火し、桜島大噴火も夜間に噴火する可能性があることから、夜間の噴火にも対応できる準備を怠らないこと、(2)現地に入っての学生発表については、真摯に受け止めて、その改善を急ぐ必要があること、(3)ワークショップで確認されたことは、詳細かつ網羅的で、島民それぞれの避難行動を確認するには大事で基本的なことであることから、これらの確認をさらに進めて、桜島火山噴火に対する備えの強化をしてほしいこと等が述べられました。
京都大学防災科学研究所の中道治久教授のコメント
まとめとして、岩船教授は、今回のワークショップで確認した内容は、基礎的・根本的なものであり、各自で書き込んだ紙面を持ち帰っていただき、個人や家族での避難計画のたたき台として活用して、さらなる気づき等も加えていただきながら、桜島大噴火時の各自の避難計画をより充実させ、実効性があるものとして作成してほしいこと、そして、学生研究で述べられたことは、桜島大噴火時の島外避難にかかわる備えの実態であることから、鹿児島市をはじめとして早急な改善が必要であること等が述べました。
最後に、閉会挨拶では、桜島地域コミュニティ協議会連絡会の園田 幹生会長が、(ァ)桜島大正大噴火から110年の節目を経て、次の大噴火が懸念されていること、(ィ)毎年「桜島火山爆発総合防災訓練」が実施され、噴火予知に対する体制も充実しているが、噴火に対する住民意識が希薄になっていること、(ゥ)鹿児島市では、火山防災トップシティのさらなる推進を図るため、今年4月1日に「桜島火山防災研究所」が発足していることの背景が述べられた上で、今回のようなワークショップを通して、防災に対する意識の高揚を図り続けていくことが防災・減災につながることから、参加した桜島住民は新たな気づきを地元に持ち帰ってから、他の住民にも広めてほしいことが述べられました。
桜島地域コミュニティ協議会連絡会 園田 幹生 会長の挨拶
ワークショップの概要(当日配布されたチラシより)