トップページトピックス【博物館】ベラ科の新種を発見し「コウハクカザリアカボウ」と命名。カザリアカボウ属における約50年ぶりの新種
【博物館】ベラ科の新種を発見し「コウハクカザリアカボウ」と命名。カザリアカボウ属における約50年ぶりの新種
[記事掲載日:25.12.15]
鹿児島大学総合研究博物館とシドニー大学、オーストラリア博物館、国立台湾大学の研究チームは、沖縄本島、オーストラリアおよびニューカレドニアから得られた標本に基づき、ベラ科カザリアカボウ属の新種Decodon erythroleukos(デコドン エリスロレウコス)を記載し、標準和名として「コウハクカザリアカボウ」を新たに提唱しました。本種の学名と和名は、共に明瞭な赤色と白色の尾鰭をもつことに由来します。
本種が含まれるカザリアカボウ属Decodonはこれまで4種のみが知られていた非常に珍しいグループで、日本にはカザリアカボウDecodon pacificus(デコドン パシフィカス)のみが分布するとされていました。2022年に沖縄本島で採集されたカザリアカボウ属の標本はカザリアカボウによく似ていていたものの、眼の前方にある黄色の帯がカザリアカボウでは横向きであるのに対し縦向きであることが異なりました。この標本について、形態的な精査と遺伝子解析による他種との比較を行ったところ、これまでに知られていない未記載種であると判断されました。研究を進める過程でオーストラリアの研究チームからの協力を受け、この種が沖縄本島だけでなくオーストラリアとニューカレドニアにも分布していることが明らかになりました。これらの標本を基にさらなる検討を行い、この種を新種D. erythroleukosとして記載しました。本種はカザリアカボウ属における約50年ぶりの新種となりました。また、本種の記載を行ううえで、これまで情報が少なかったカザリアカボウについてもホロタイプ標本と追加標本に基づく表徴の再検討を行い、これまで知られていなかった幼魚の色彩なども示しました。
コウハクカザリアカボウはこれまで沖縄本島、オーストラリア、およびニューカレドニアの水深110~350 mから標本が得られており、高知県とインドネシアでも水中写真が撮影されています。本種とカザリアカボウは、日本を含む西太平洋において同所的に分布しますが、前者は眼の前方の黄色の帯が縦向きであること(後者は横向き)、尾鰭後縁の赤色域が広いこと(狭い)が異なります。
本研究の成果は、Wileyが発行する英文誌Journal of Fish Biologyにて2025年12月10日に公開されました。今回使用された標本(タイプシリーズ)は、鹿児島大学総合研究博物館とオーストラリア博物館、国立台湾大学博物館に収蔵されています。
【掲載論文】Decodon erythroleukos, a new deepwater species of hypsigenyin wrasse (Teleostei: Labridae) from the western Pacific Ocean
【著者名】Seiya Kanai, Younis Menkara, Takaki Nishioka, Wei-Jen Chen, Hiroyuki Motomura and Yi-Kai Tea
【掲載誌】Journal of Fish Biology
【DOI】https://doi.org/10.1111/jfb.70262
【関連ページ】
総合研究博物館 本村浩之教授 ホームページ
http://www.museum.kagoshima-u.ac.jp/staff/motomura/motomura.html

(コウハクカザリアカボウDecodon erythroleukosのホロタイプの生鮮写真)