トップページトピックスワクチン接種+過去の感染で免疫力が増強 新型コロナウイルスにおける「ハイブリッド免疫」 のメカニズムを解析

ワクチン接種+過去の感染で免疫力が増強 新型コロナウイルスにおける「ハイブリッド免疫」 のメカニズムを解析

[記事掲載日:26.07.14]

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 鹿児島大学ヒトレトロウイルス学共同研究センターの松田 幸樹准教授前田賢次教授の研究グループは、国立健康危機管理研究機構(JIHS)、熊本大学との共同研究により、新型コロナウイルスの二価ワクチン接種と過去の感染が組み合わさることで生じる「ハイブリッド免疫」が、オミクロン変異株への防御を高める仕組みを明らかにしました。これは、抗体(液性免疫)※1だけに頼らない、自然免疫※2を活用した新たなワクチン開発の可能性を示すものであり、国際免疫学会連合(IUIS)機関誌「Frontiers in Immunology (Q1. IF: 7.0)」に2026年7月2日に掲載されました。

 
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ポイント

  • ブレイクスルー感染3への抵抗性:二価ワクチンによる免疫のみを有する被験者はブレイクスルー感染の発生率が高いのに対し、ハイブリッド免疫を有する被験者は、より強力かつ広範なウイルス抵抗性を示す。
  • 自然免疫応答の強化:過去の感染歴と二価ワクチン接種の組み合わせは、抗体だけでなく、自然免疫系を独自に活性化させ、オミクロン1.16およびEG.5.1.1といった免疫逃避型変異株をより的確に認識・抑制できるようになる。



研究の背景

 

2023年の春から秋にかけて、免疫逃避能を持つオミクロンXBB.1.16株4とEG.5.1.1株5が日本国内で流行し、COVID-19ワクチンの有効性は損なわれつつありました。特に感染力の強い株が流行する時期には、複数回のワクチン接種を受けていても、ブレイクスルー感染が依然として頻繁に発生しました。ワクチン接種と過去の感染によって生じる「ハイブリッド免疫」は複数の新型コロナウイルス変異株に対する防御効果を高めることが分かっていましたが、その根本的なメカニズムは十分に解明されていませんでした。本研究ではXBB.1.16株およびEG.5.1.1株が出現する前の免疫学的防御因子を評価し、ブレイクスルー感染との関連を調べました。




研究の内容

 本研究では、ハイブリッド免疫がIL-8依存性のマクロファージ・好中球間の相互作用を介して、オミクロンXBB.1.16/EG.5.1.1株に対する防御効果をもたらす可能性があることを明らかにしました。過去のSARS-CoV-2感染はIL-8産生の上昇および好中球の活性化を特徴とする持続的な自然免疫の活性化を誘発することが明らかになりました。これらの知見は、IL-8ー好中球の相互作用がハイブリッド免疫を有するヒトにおけるSARS-CoV-2のブレイクスルー感染に対する防御に関与している可能性を示唆しています。



今後の展開

 ワクチン接種と感染歴の両方があるヒトにはワクチン接種のみでは得られないマクロファージ・好中球による自然免疫の活性化が認められ、これは液性免疫だけでなく、その他の免疫系も活性化できるような新しいメカニズムによるワクチン開発の重要性を示しています。今後も基礎研究者として新型コロナウイルスをはじめとする未知のウイルス感染症研究に取り組み、人々の健やかな暮らしに資する知見の創出を目指してまいります。




論文情報

掲載誌:Frontiers in Immunology (Q1. IF: 7.0)

題名:Hybrid immunity from bivalent vaccination and prior infection enhances humoral and innate protection against Omicron XBB.1.16 and EG.5.1.1 variants in Japan.

著者:Kouki Matsuda1,*,†, Shohei Yamamoto2, Chihiro Motozono3, Yoshiki Aritsu3, Yuki Furukawa1, Airi Noborio1, Daisuke Takada1, Hiyori Sasagawa1, Yuichi Akahori1, Kiyoto Tsuchiya4, Hiroyuki Gatanaga4, Takamasa Ueno3, Norio Ohmagari5, Tetsuya Mizoue2, Kenji Maeda1,†

*:筆頭著者
:共同責任著者

鹿児島大学ヒトレトロウイルス学共同研究センター 抗ウイルス療法研究分野 准教授 松田幸樹
鹿児島大学ヒトレトロウイルス学共同研究センター 抗ウイルス療法研究分野 教授     前田賢次

DOI10.3389/fimmu.2026.1807238




用語解説

(※1)液性免疫
主にB細胞が「抗体」を作り出し、体内に侵入した病原体を無力化・排除する免疫の仕組み。

(※2)自然免疫
生まれつき体に備わっている、病原体や異物をいち早く察知して排除する防御システム。
主にマクロファージ、樹状細胞、好中球などの貪食細胞やNK細胞などが中心的役割を担う。

(※3)ブレイクスルー感染
新型コロナウイルスのワクチンを接種して、2週間以上経ってからSARS-CoV-2に感染すること。

(※4)オミクロンXBB.1.16株
新型コロナウイルスの流行拡大によって出現した、顕著な変異を有する「懸念すべき変異株(VOC: variant of concern)」の一つ。
オミクロンXBB.1.5株から派生した亜系統の一つであり、2023年春から夏にかけて世界的に流行した。
XBB.1.5系統と共通する変異(約40カ所)に加えて、2カ所の変異(E180V変異、T478R変異)を有する。

(※5)オミクロンEG.5.1.1株
新型コロナウイルスの流行拡大によって出現した、VOCの一つ。
XBB.1.9.2株からさらに派生した亜系統の一つであり、2023年中盤から世界的な主流株となった。
EG.5.1系統のスパイクタンパク質はXBB.1.5系統と共通する変異(約40箇所)に加えて、3カ所の変異(Q52H変異、F456L変異等)を有する。