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【博物館・農林水産学研究科】四半世紀の間、正体不明だったヘビギンポの学名が判明

[記事掲載日:22.07.13]

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 総合研究博物館の研究チームは、ヘビギンポ科ヘビギンポ属の一種Enneapterygius erythrosoma(エネアプテリギウス・エリスロソーマ)を有効な種であることを確認し、日本から初めて記録しました。本種は10年以上前から国内に生息することが確認されていましたが、学名は知られておらず、標準和名も提唱されていませんでした。筆頭著者である農林水産学研究科1年の出羽 優凪さんは、本種の婚姻色の雄が生時にもつ白色斑が星の集まりを連想させることに因み、新標準和名スバルヘビギンポを提唱しました。本研究の成果は、日本魚類学会が発行する英文誌「Ichthyological Research」(イクチオロジカル リサーチ)に2022年6月28日付けで掲載されました。


 Enneapterygius erythrosomaは1994年に台湾で採集された標本に基づき、新種として記載されましたが、現在にいたるまでEnneapterygius rubicauda(エネアプテリギウス・ルビコウダ)と同種であると考えられてきました。そのため、動物の学名に関するルールを定めた「国際動物命名規約」にしたがい、Enneapterygius rubicaudaが有効となり、Enneapterygius erythrosomaは無効な学名として扱われてきました。
 本研究において、台湾から得られたタイプ標本を含む約150個体の標本の調査を行い、前方側線有孔鱗数(E. erythrosomaでは17、E. rubicaudaでは15)、下顎感覚管孔開口数(E. erythrosomaでは4 + 1 + 4、E. rubicaudaでは3 + 1 + 3)、胸鰭基部の黒色斑の有無(E. erythrosomaはもつが、E. rubicaudaはもたない)などの特徴からEnneapterygius erythrosomaEnneapterygius rubicaudaが別種であることを確認しました。
 また、スバルヘビギンポを含むヘビギンポ科魚類は、繁殖期になると雄の体色が変化し、同じ種であっても雌雄で色彩が大きく異なるという興味深い特徴をもっています。婚姻色と呼ばれるこの雄の色彩パターンは、種内変異が少なく、本科魚類の種分類を行う上で重要な形質の一つです。本研究では、標本の調査や水中写真、DNA解析に基づき、これまで知られていなかったスバルヘビギンポの雄の婚姻色を初めて明らかにしました。
 本研究で使用したスバルヘビギンポ85標本(標準体長1.4-3.2 cm)はすべて総合研究博物館に所蔵されています。

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スバルヘビギンポの標本(上段:雄、体長2.2 cm;下段:雌、体長1.9 cm)
(鹿児島大学総合研究博物館所蔵)

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スバルヘビギンポのペアの水中写真(原崎 森氏撮影)


【掲載論文】
Redescription of Enneapterygius erythrosoma Shen 1994 and a synopsis of Enneapterygius similis Fricke 1997, with comments on the taxonomic status of Enneapterygius rubicauda Shen 1994 (Perciformes: Tripterygiidae)
【著者】
Yuna Dewa and Hiroyuki Motomura
【掲載誌】
Ichthyological Research
【DOI】
10.1007/s10228-022-00871-4

【関連ページ】
 総合研究博物館 本村浩之教授 ホームページ