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【研究成果】巨大星の最期・超新星爆発直前にとらえた強力な磁場

[18.04.23]

2018年日本天文学会春季年会 記者会見  Press Release in English

日 時: 2018年 3月13日(火曜日)
場 所: 千葉県庁

発表者: P.I. 新永 浩子(鹿児島大学理学部物理科学科・ 天の川銀河研究理工学センター・鹿児島大学 学術研究院理工学域理学系物理・宇宙専攻 宇宙情報講座准教授)

共同研究者:
マーク クラウセン(米国国立電波天文台NRAOサイエンティスト)
山本 智(東京大学理学部物理学専攻 教授)
下条 圭美(国立天文台チリ観測所 助教)
 
発表論文:日本天文学会 欧文研究報告 PASJ (Publications of the Astronomical Society of Japan), Volume 69, Issue 6, id.L10
本論文はOxford University Pressの注目する論文としてSNSで紹介されました。

連絡先:新永 浩子
鹿児島大学理学部物理科学科・
天の川銀河研究理工学センター
鹿児島大学学術研究院理工学域理学系 物理・宇宙専攻 宇宙情報講座
099-285-8960
 

 
  
 
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Credit: Kagoshima University 上図のクレジット:鹿児島大学


2018年 日本天文学会 春季年会 記者会見

巨大星の最期・超新星爆発直前にとらえた強力な磁場
〜雲隠れに垣間見る、大爆発寸前の巨大老齢星 最後の姿の新事実〜

発表者(登壇者)
新永 浩子 鹿児島大学理学部物理科学科・天の川理工学研究センター 准教授
 
概要
 今年2018年は戌年。夜の天空に広がるオリオン座のそばに佇む2頭の猟犬。このうち大きい方、おおいぬ座(図1)方向にある巨大老齢星(図2)について観測を行い、最新の研究から、これまでの理論的予想を覆す、意外な新事実、--- 老齢にも関わらず、若い頃と同様に、非常に活発な磁気活動を起こしている様子 --- を明らかにしました。
 老齢星は、自らが生涯をかけて作った物質 を、周囲に塵などの形でまき散らし、最後の瞬間には大爆発を起こして、星としての生涯を閉じます。周囲に撒き散らされた物質が星を覆い隠してしまう(雲隠れする)ことから、生涯を閉じる最期の瞬間の様子は、これまでほとんど知られていませんでした。
 おおいぬ座VY星は、赤外線で最も明るい星の一つとして宇宙に君臨する、太陽の25倍の重さを持つ、巨大な老齢星です。死を間近に控え、激しい爆発を何度も繰り返してきた様子は、ハッブル望遠鏡の可視光線(光)観測でも捉えられています(図3)。一方で、厚く覆われた塵の層の中の様子、つまり、星自身や、星の近くの様子はどうなっているのかは謎に包まれていました。
 可視光線や赤外線よりも波長の長い電磁波である電波を使うと、周囲の厚い塵の層を通り抜け、星の近くの雲隠れ内部の様子を、詳細に観測することができます。さらに天体から届く電波の波の偏り(偏波)を測定すると、星の磁気活動の様子を克明に記録することができます。この手法で星周辺の様子を詳しく調べた結果、老齢であるにも関わらず、VY星が若い頃と同じように活発な磁気活動を継続している様子を、世界で初めて捉えることに成功しました。
 活発な磁気活動の証拠は、星の周りに複数個発見された、強力な磁場の塊、磁気雲 から得られました。例えば若い太陽は、星表面の爆発現象とともに、物質を星の外に吐き出しています。それと同様に、この老齢のVY星も、星表面の爆発現象とともに莫大な量の物質をものすごい勢いで吐き出しており、強力な磁気雲は、その活動の証拠と言えます。磁気雲はおそらく、老齢のVY星自身の磁場が爆発現象とともに放出された物質とともに吐き出され、継続した複数の爆発現象によって星の周り にはき集められ、局所的に強力な磁場をつくっていると考えられます。
 大爆発寸前の巨大老齢星の磁気活動については、これまで全く知られていませんでした。巨大老齢星は、その莫大な半径 、低い温度 、想像される遅い回転から、若い頃のような活発な磁場活動 は行われていないだろうと予想されてきました。この研究はその予想を覆し、おおいぬ座VY星については、若い時と同様に活発な磁気活動を続けている様子(図4)を明らかにしました。
 
 本研究成果は、2017年11月10日に日本天文学会の欧文科学誌「Publication of Astronomical Society of Japan」のオンライン速報版で公開されました。
 
この発見に用いた観測施設: 
VLA (Very Large Array) 望遠鏡 ( 米国国立電波天文台 NRAO )  ニューメキシコ州 アメリカ
ALMA (Atacama Large Millimeter Array) 望遠鏡 (Joint ALMA Observatory/JAO) アタカマ砂漠 チリ
このほか、この発見のきっかけとなった観測には、国立天文台野辺山宇宙電波観測所の45m電波望遠鏡を用いました。
 
発表者(登壇者)
新永 浩子 鹿児島大学理学部物理科学科・天の川理工学研究センター 准教授
 
共同研究者
マーク クラウセン(米国国立電波天文台 NRAO サイエンティスト)
山本 智(東京大学 理学部 物理学専攻 教授)
下条 圭美(国立天文台 チリ観測所 助教)
 
Presenter :
Hiroko Shinnaga, Faculty of Science Kagoshima University, Associate professor,
Allround Galactic Radio Astronomy Research Center

Collaborators: 
Mark J. Claussen (NRAO, Scientist)
Satoshi Yamamoto (University of Tokyo, Professor)
Masumi Shimojo (NAOJ Chile Observatory) 
 
連絡先: 新永 浩子
鹿児島大学 理学部 物理科学科・天の川銀河研究理工学センター
鹿児島大学 学術研究院理工学域理学系 物理・宇宙専攻 宇宙情報講座
〒890-0065 鹿児島市郡元 1-21-35
電話 099-285-8960 Fax 099-285-8088
http://www.sci.kagoshima-u.ac.jp
 
Hiroko Shinnaga
Department of Physics and Astronomy
Graduate School of Science and Engineering
Kagoshima University
1-21-35 Korimoto, Kagoshima 890-0065 JAPAN
 
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図1 おおいぬ座の巨大老齢星VY星の位置。おおいぬのおしりのあたりにあり、赤丸上の緑のプラス印で表した。右上にはオリオン座が確認できる。(クレジット:新永 浩子(鹿児島大学) Credit: Kagoshima University )
 
 
 
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図2 おおいぬ座VY星と太陽系の大きさの比較。光で見た光球の半径は6.6AUと、木星の軌道半径よりも大きい。 (クレジット:鹿児島大学 / Credit: Kagoshima University )
 
 
 
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図3 ハッブル宇宙望遠鏡でとらえたおおいぬ座VY星の画像。度重なる激しい爆発(質量放出現象)のため、星周領域は塵とガスで満たされ、星自体は可視光では見えない。(クレジット:STSI/NASA/ESA/R. Humphreys ミネソタ大学)
 
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図4 巨大老齢星の磁気活動が活発な時の想像図。(クレジット:鹿児島大学 / Credit: Kagoshima University )
 
 

 
日本天文学会での関連講演の情報  
2018年3月14日(水)午後(13:00-15:00) [D会場]
N03a Strong magnetic field generated by the extreme red supergiant VY Canis Majoris
Hiroko Shinnaga(Kagoshima University)

 


本研究成果のポイント

  1. 世界で初めて、非常に強力な磁場を、特異な赤色超巨星 おおいぬ座VY星 から高い感度で検出することに成功しました。
  2. 赤色超巨星は一般的に、その肥大した半径と遅い回転の様子から、これまで強い磁場は持たないはずと予想されていました。
  3. その予想を覆し、強力な磁場を高い感度で検出したことは、今後の大質量星の進化の私たちの理解に変更を迫るものです。
  4. 今後、継続してより精密な星の周りの磁場の観測を実行し、強力な磁場の起源に迫っていきます。

 


発見内容の詳細:

 太陽に比べてはるかに大きく、重たい巨大星は、晩年に大爆発(超新星爆発)を起こし、その生涯を閉じます。
星は水素の核融合反応 をおこして自ら輝き、生涯をかけて様々な物質を作ります。死が近づくと、自らが一生をかけてつくった物質を自分の周囲にまき散らし 、雲隠れ状態になります。こうなると光(可視光線)では星を直接、見ることができません。が、波長の長い電波を使うと、星のすぐ近くまで、スカスカに見通すことができるのです。
 私たちから350光年離れたおおいぬ座VY星(おおいぬのおしりの先にあたります。図1参照)は、雲隠れ状態の、いつ大爆発を起こして死んでもおかしくない、太陽よりはるかに大きくて重い 、老齢の巨大星(赤色超巨星)です(図2参照)。この星を電波で詳細に観測した結果、これまでの理論的予想を覆し、老齢にも関わらず、若い頃と同じように活発な磁気活動を継続している様子を、世界で初めて捉えることに成功しました。
 活発な磁気活動の証拠は、星の周りに複数個発見された、強力な磁場の塊 から得られました。この強力な磁場の塊は、若い太陽が太陽風を吐き出すのと同様に、老齢の巨大星が恒星風とともに莫大な量の物質をものすごい勢いで吐き出している(質量放出とよびます)ことを物語っています。老齢の巨大星の磁場が、莫大な質量放出によって星の周り にはき集められ、局所的に強力な磁場をつくっているのです。
 大爆発寸前の巨大老齢星の磁気活動については、これまで全く知られていませんでした。巨大老齢星は、その莫大な半径 、低い温度 、想像される遅い回転から、若い頃のような活発な磁場活動 は行われていないだろうと予想されてきました。この研究はその予想を覆し、おおいぬ座VY星については、若い時と同様、活発な磁気活動を続けている様子が明らかにされたのです。

 
過去の研究が見落としていた重要な着眼点:
 この星の電波の観測は、過去にも行われてきましたが、星の周りに比較的大きく広がった電波の波の偏りを調べる観測例は、ごく限られていました。今回、私たちのグループは、星の半径の約100倍程度まで広がった領域を詳しく調べた結果、きれいにそろった磁力線、強い磁場の塊を発見するに至りました。きれいにそろった磁力線、強い磁場の塊を見つけるには、その大きさを見分けるのにちょうど良い”視力”が求められます。この領域を今回のようなほどよい視力で、波の偏りも含めて調べる観測は、過去には行われていませんでした。磁場の強度は、光を分ける分光観測(スペクトル観測とも言います)から測定できますが、まさか強い磁場からの特徴的なパターン(ゼーマン効果と言います)が出るほど、強い磁場が存在しているとは、誰も想像していませんでした。
 
なぜ私たちグループが発見を成し遂げることができたか?:
 きれいにそろった磁力線、強い磁場の塊の大きさを見分けるのにちょうどいい、最適な”視力”を持った観測に成功したこと、かつ、天体からより多くの光を集められる(集光力とよびます)かどうかも大事ですが、最高性能の観測装置で、恵まれた気象条件のもと、観測ができたことが成功への鍵でした。また、光を分ける分光観測(スペクトル観測とも言います)に着目し、強い磁場からの特徴的なパターン(ゼーマン効果と言います)が出ているかどうか、先入観を持たずに、調べてみたことも、発見への大きな一歩に貢献しました。
 
新たな着眼点からのブレークスルー:
 これまで、老成星には活発な磁気活動がないと予想されてきましたが、この発見から、若い頃と同様の、活発な磁気活動の様子が明らかになりました。星の本当の最後の瞬間である大爆発(超新星爆発)が起こる直前に、星はどのくらいの量の物質を周りに吐き出すのか、星の磁場強度はどの程度あるのか、といったことは全く分かっていませんでした。
 
発見から得られた知見と今後の展望:
 この老齢星以外にも、このような強い磁場を持つ年老いた星が一般的に見つかるかもしれません。この星が特異なのか、あるいは一般的なのかを見極めるためにも、他の老齢星も観測し、星の進化と星の磁場の関係性についても、今後、明らかになっていくことでしょう。
 
 本研究は、科研費17K05388のサポートを受けて行われました。また、鹿児島大学の若手教員海外研修事業(2016年度採択、2016年7月から2017年2月まで、米国国立電波天文台、NRAOでvisiting scholorとして研究に従事しました)、NRAOからも支援をいただきました。
 
 本研究成果は、2017年11月10日に英国科学誌「Publication of Astronomical Society of Japan」のオンライン速報版で公開されました。

 
日本天文学会の欧文科学誌「Publication of Astronomical Society of Japan」のvolume 69, L10に、以下のタイトルで掲載されました。
"Strong magnetic field generated by the extreme oxygen-rich red supergiant VY Canis Majoris"
著者 Hiroko Shinnaga, Mark J. Claussen, Satoshi Yamamoto, Masumi Shimojo
 

この発見に用いた観測施設:

 VLA (Very Large Array) 望遠鏡 ( 米国国立電波天文台 NRAO )  ニューメキシコ州 アメリカ
 ALMA (Atacama Large Millimeter Array) 望遠鏡 (Joint ALMA Observatory/JAO) アタカマ砂漠 チリ
 野辺山宇宙電波観測所45m望遠鏡 (国立天文台 NAOJ)