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【研究成果】高齢期のサルコペニア(骨格筋量の減少)に対する運動(エクササイズ)の効果~自宅で実施可能なプログラム

[記事掲載日:20.05.15]

 この度、医学部保健学科理学療法学専攻牧迫教授の研究チームによる研究成果が発表されましたので、下記のとおりお知らせいたします。

 

【本研究のポイント】
1. 鹿児島県垂水市で実施されている垂水研究(たるみず元気プロジェクト)の一環としての取り組みです。
2. サルコペニア(骨格筋量の減少)およびそのリスクを有する高齢者に対する運動の効果を調べる研究です。
3. 運動プログラムは、ゴムバンドを用いた筋力トレーニングのほか、柔軟運動(ストレッチ)、バランストレーニング、有酸素運動を含む多面的な運動プログラムで、運動手帳を見ながら自宅でも実施可能なプログラムです。
4. 1回60分の運動プログラムを週1回の頻度で12週間参加した運動群36名では、対照群36名に比べて、身体機能(椅子からの立ち上がりなど)の有意な改善が認められました。
5. しかし、大腿部(太もも)の筋肉量の明らかな増加は認められず、運動群においても筋量の低下を抑制することが可能な程度の効果でした。
6. 高齢期の身体機能は12週間程度の運動プログラムで改善可能であることが示されましたが、骨格筋量の増大を得るためには、さらに長期間で高負荷のトレーニングが必要であるかもしれません。
 
 本研究は、垂水市・垂水市立医療センター垂水中央病院・鹿児島大学との共同研究により、日本学術振興会・公益財団法人大和証券ヘルス財団の研究助成を受けて行われました。本研究成果は、ジャーナルオブクリニカルメディスンのオンライン版にて5月8日に公開されました。
 
【背景】
 加齢に伴って、骨格筋量は減少し、握力や脚力といった筋力も低下しやすくなります。このような加齢に伴って生じる骨格筋量の減少と筋力の低下は「サルコペニア(sarcopenia)」と呼ばれ、国際疾病分類では疾病のひとつに分類されています。サルコペニアは、転倒や骨折の危険を増大させ、将来に寝たきりや要介護を招いてしまう要因のひとつとされています。そのため、高齢期におけるサルコペニアの予防や改善のための支援方法の確立が求められていますが、どのような支援方法が効果的であるかは、よくわかっていません。サルコペニアの予防および改善のための方策として、運動による介入プログラムの効果の検証とプログラム内容の充実が期待されています。
 
【研究内容】
 サルコペニアおよびプレサルコペニアを有する高齢者の身体機能や大腿筋量に対する筋力トレーニングを中心とした多面的運動プログラムの効果を調べました。健康チェック(垂水研究2018)に参加した60歳以上の1011名のうち、国際的な基準と照合して身体機能(握力の低下もしくは歩行速度の低下)の低下と筋肉量の低下を合併した者(サルコペニア)、または筋量低下のみに該当した者(プレサルコペニア)の72名(平均年齢75.0歳、女性70.8%)が参加しました。参加者は運動群(36名)と対照群(36名)に無作為に割り振られ、3か月間の介入期間の前と後で身体機能と大腿(太もも)の筋量(MRI画像)の変化を比較しました。運動プログラムは、ゴムバンドによる筋力トレーニングを中心とし、柔軟運動(ストレッチ)、バランストレーニング、有酸素運動を含む多面的運動プログラムを週1回(60分)の頻度で12回実施しました。
運動群の運動教室の平均参加率は81%でした。3か月間の変化を比較した結果、運動群で身体機能(椅子からの立ち上がりや歩行など)の改善を認めました。大腿の筋面積・筋体積の変化では、運動群で筋量の減少を抑制する傾向でしたが、明らかな筋量の増大は認められませんでした。
 
【今後の展開】
 サルコペニア(プレサルコペニアを含む)と呼ばれる筋量の減少および筋力の低下した高齢者に対する筋力トレーニングを中心とした多面的運動プログラムは、立ち上がりや移動といった身体機能の改善に有効であることが示唆されましたが、大腿筋量や体積の増大に対する効果は明らかとなりませんでした。本研究で実施した運動プログラムは運動手帳を見ながら自宅でも実施可能なプログラムであり、自主的な運動の促進へのツールとしての活用が期待されます。今後は、長期的な運動プログラム実施の効果や栄養介入を加えた相乗効果の検証が望まれ、高齢者の筋力や筋量の改善を促進する要因を探索することも有用となると考えられます。
 
【掲載論文】
題  名:Effects of a multicomponent exercise program in physical function and muscle mass in sarcopenic/pre-sarcopenic adults
サルコペニア/プレサルコペニアを有する高齢者の身体機能および骨格筋量に対する多面的運動プログラムの効果
 
著  者:Hyuma Makizako, Yuki Nakai, Kazutoshi Tomioka, Yoshiaki Taniguchi, Nana Sato, Ayumi Wada, Ryoji Kiyama, Kota Tsutsumimoto, Mitsuru Ohishi, Yuto Kiuchi, Takuro Kubozono, and Toshihiro Takenaka
牧迫飛雄馬1・中井雄貴1・富岡一俊2,3・谷口善昭2,4・佐藤菜々2・和田あゆみ2・木山良二1・堤本広大5・大石充6・木内悠人2・窪薗琢郎6・竹中俊宏3・
 
1:鹿児島大学医学部保健学科理学療法学専攻
2:鹿児島大学大学院保健学研究科
3:垂水市立医療センター垂水中央病院
4:鹿児島医療技術専門学校
5:国立長寿医療研究センター予防老年学研究部
6:鹿児島大学医歯学総合研究科心臓血管・高血圧内科学
 
掲載誌:Journal of Clinical Medicine 2020 May 8;9(5). pii: E1386. doi: 10.3390/jcm9051386. 
 
【関連ページ】
医学部保健学科理学療法学専攻 牧迫研究室(HP
 
 
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