トップページトピックス【水産学研究科】鹿児島の島嶼域から新種のハタ科魚類を発見、「マホロバハタ」と命名

【水産学研究科】鹿児島の島嶼域から新種のハタ科魚類を発見、「マホロバハタ」と命名

[記事掲載日:21.01.21]

 鹿児島大学大学院水産学研究科を昨年度卒業した中村潤平さん(現在かごしま水族館に勤務)と鹿児島大学総合研究博物館の本村浩之教授の研究チームは、鹿児島県の島嶼域から新種のハタ科魚類を発見し、マホロバハタ Epinephelus insularis(エピネフェルス・インスラリス)と命名しました。新しい標準和名は、理想郷のような島々に分布することから「素晴らしい場所」を意味する日本の古語「まほろば」を用いて名付けられ、学名はラテン語で「島」を意味する「insula」に由来。
 
 マホロバハタはこれまでホウセキハタと混同されていましたが、種子島以北の日本本土に分布する種がホウセキハタ Epinephelus japonicus(エピネフェルス・ジャポニクス)、種子島以南の島嶼域に分布する種がマホロバハタであることが明らかになりました。マホロバハタは西太平洋の島嶼域に分布し、国内では種子島、トカラ列島、奄美大島、小笠原諸島などから確認されています。主に島周りの深場の岩礁域に生息すると考えられ、鹿児島県内各地の魚類市場には薩南諸島で漁獲された個体が水揚げされることもあります。
 マホロバハタとホウセキハタはよく似ていますが、褐色の斑点がある場所(マホロバハタは体の全体、ホウセキハタは腹部に斑点がない)、背鰭の軟条数(前者は16、後者は17)、尾鰭の形や色(前者は後縁が直接的で白色線がある、後者は丸みを帯びて白色線がない)などの特徴で識別することができます。
 なお、ハタ科魚類の研究は2018年から県内外各地の漁業・水産業関係者や魚類研究者の協力を得て行われており、その過程で多くの日本初記録種や新たな分布記録が確認されています。特に鹿児島県はハタ類の種多様性が高く、今後の調査でも様々な新発見が期待されます。
 
 
 本研究の成果は日本魚類学会が発行する英文誌「Ichthyological Research(イクチオロジカル・リサーチ)」のオンライン版に2021年1月14日付けで掲載されました。
 
Jumpei Nakamura and Hiroyuki Motomura. 2021. Epinephelus insularis, a new species of grouper from the western Pacific Ocean, and validity of E. japonicus (Temminck and Schlegel 1843), a senior synonym of Serranus reevesii Richardson 1846 and E. tankahkeei Wu et al. 2020 (Perciformes: Epinephelidae). Ichthyological Research: doi.org/10.1007/s10228-020-00790-2
 
 
 
 
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マホロバハタ Epinephelus insularis
 
 
 
 
 
 
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ホウセキハタ Epinephelus japonicus
 
 
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