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【理工学】快挙!M&E論文賞を2年連続受賞

[記事掲載日:21.10.27]

 

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 理工学研究科理学専攻の内海 俊樹教授らの論文が、Most Valuable Paper of the year 2020 in Microbes and Environmentsに選ばれました。
 Microbes and Environments(通称M&E)は、日本微生物生態学会、日本土壌微生物学会、台湾微生物生態学会、植物微生物研究会、極限環境微生物学会が共同編集している国際誌です。2020年に同誌に掲載された総説などを除く60報の論文の中から、内海教授らの論文に論文賞が授与されました。
 
 受賞論文は、根粒菌としてマメ科植物と共生できるだけでなく、イネの細胞間隙で内生菌として存在することができるという、ユニークな特徴を持った根粒菌SUTN9-2に関するもので、本学の学術交流提携校であるタイ・スラナリ工科大学、及び、基礎生物学研究所との共同研究の成果がまとめられています。
 SUTN9-2は、タイの水田でイネと混在しているクサネム(マメ科植物)の根粒から分離されました。根粒菌は、根粒細胞内で宿主植物からの強い制御を受けていることが明らかとなっていますが、内生菌に対しても宿主による制御機構が作用しているという仮説を立て、イネの抽出液を用いて詳細に解析し、その仮説が正しいことを証明しました。
 
 
【研究概要】
 これまでの共同研究で、SUTN9-2は、イネの根から侵入して幼苗期の生長を促進することを明らかにしていました。そこで、まず、イネ組織内で内生状態にあるSUTN9-2を観察し、細胞が肥大化して、窒素固定活性を有することを確認しました。次に、SUTN9-2をイネの抽出液に入れておくと、細胞の肥大化、核酸含有量の増加、窒素固定活性の上昇が誘導されることを明らかにしました。さらに、イネの抽出液中でのSUTN9-2の全遺伝子について、発現プロファイルを解析しました。これらの結果から、イネ組織内で内生状態にあるSUTN9-2は、根粒の中で共生状態にある時と同じように、イネからの制御を受けながら窒素固定をしていると考えられました。
 これらの研究成果は、「イネと内生菌との相互作用のイメージを一新し、加えて、イネからの抗菌性ペプチドの分泌等の能動的な働きかけを示唆する多数の結果を得ており、植物-微生物の相互作用研究の新展開につながる重要な成果である。」と評されました。
 
 
 第一著者のGreetatorn博士は、スラナリ工科大学の研究者ですが、2018年5月から1年間、内海教授の研究室に滞在して、多くのデータを集めました。
 内海教授と福留博士(現・香川大学農学部助教、2020年3月末まで日本学術振興会特別研究員として内海教授の研究室に所属)は、2019年度M&E論文賞を受賞していましたので、2年連続の受賞となりました。2002年に本賞が設けられて以来、これまでに2度受賞した研究者は4名、なかでも2年連続の受賞は1名のみです。M&E誌の編集長は、「内海教授と福留博士の2年連続受賞は、『殿堂入り』に値する快挙である。」と称えました。
 
 2019年度と2020年度の論文賞の授賞式と受賞講演は、11月2日午後、日本微生物生態学会第34回大会にてオンラインで実施される予定です。
 2019年度論文賞は内海教授が、2020年度論文賞はTeaumroong教授が、それぞれ受賞講演を行うことになっています。
 
 

 
【論文タイトル】
Mechanisms of rice endophytic bradyrhizobial cell differentiation and its role in nitrogen fixation
【著者】
Teerana Greetatorn, Shun Hashimoto, Taro Maeda, Mitsutaka Fukudome, Pongdet Piromyou, Kamonluck Teamtisong, Panlada Tittabutr, Nantakorn Boonkerd, Masayoshi Kawaguchi, Toshiki UCHIUMI, Neung Teaumroong
【掲載誌】
Microbes and Environments(35巻3号)
【DOI】
10.1264/jsme2.ME20049(ダウンロード可能です)
【受賞理由】
こちらよりご確認ください。(和文英文) 
【昨年の受賞について】
こちらよりご確認ください。(和文英文