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【農学部】カラメルに含まれるオリゴ糖を分解する酵素を口腔内ビフィズス菌から発見

[記事掲載日:21.10.26]

 

 農学部 食料生命科学科応用糖質化学研究室の藤田 清貴准教授らの研究グループは、東京大学、理化学研究所、新潟大学、大阪大学のグループと共同研究を行い、口腔内から単離されたビフィズス菌であるBifidobacterium dentiumから、DFA Iのα-フルクトフラノシド結合を加水分解してイヌロビオースという二糖を生じる酵素「DFA Iシンターゼ/ヒドロラーゼ」とその遺伝子を発見しました。
 
 本酵素はイヌロビオースからDFA Iを作る逆反応を約90%の効率で行いますが、菌体内では10%の効率で作られたイヌロビオースを逐次的にフルクトースに分解されると推定されました(図上)。また、X線結晶構造解析法により本酵素の立体構造を明らかにして、DFA Iやイヌロビオースが結合するポケットのようすから、触媒反応がどのように起こるかを詳細に明らかにしました(図下)。
 本研究により、DFA Iシンターゼ/ヒドロラーゼはこれまでに知られている酵素とはアミノ酸配列が全く異なることが明らかになったため、糖質関連酵素の分類を行っているフランスのグループと協議を行った結果、新しい加水分解酵素ファミリーであるGH172が新設され、そこに分類されることになりました。
 
 
 果糖とも呼ばれるフルクトースは、砂糖やイヌリンに含まれています。加熱調理中のカラメル化反応により褐色になりますが、この反応の際に脱水縮合反応が起こり、様々な化合物が生じます。その中に、2分子のフルクトースが脱水縮合したジフルクトースアンヒドリドI(DFA I)、ジフルクトースアンヒドリドIII (DFA III)などがあります。本酵素はヒトの口腔内や腸内に生息するビフィズス菌から得られたこと、天然の植物由来のフルクトース含有糖にはこの酵素が切断する化学結合が見つかっていないことなどから、微生物が宿主であるヒトとの共生関係のもと、人類が火を使うようになった以降に、食料中の糖質を分解・代謝する酵素として出現したと推測しました。
 本研究はカラメルや黒糖に含まれる主要なオリゴ糖であるDFA Iのビフィズス菌における分解メカニズムを初めて明らかにしたものであり、機能性オリゴ糖としてDFAIの価値が見直されることも期待できます。しかし、DFAIの詳細な分解代謝メカニズムの解明や他の細菌との関係も考慮する必要があり、さらなる研究が求められます。
 
 この研究成果は、米国科学雑誌「The Journal of Biological Chemistry」に掲載されました。
 
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(図上:B. dentiumにおいて推定されるDFAI分解メカニズム)
(図下:DFA Iシンターゼ/ヒドロラーゼの立体構造と反応が起こるポケット)
 
 

 

掲載誌:The Journal of Biological Chemistry

タイトル:Identification of a difructose dianhydride I synthase/hydrolase from oral bacterium establishes a novel glycoside hydrolase family

著者:Toma Kashima(a), Kouki Okumura(b), Akihiro Ishiwata(c), Machika Kaieda(b), Tohru Terada(a), Takatoshi Arakawa(a), Chihaya Yamada(a), Kentaro Shimizu(a), Katsunori Tanaka(c), Motomitsu Kitaoka(d), Yukishige Ito(e), Kiyotaka Fujita(b),#, and Shinya Fushinobu(a),#

a東京大学大学院農学生命科学研究科,b鹿児島大学農学部,c理化学研究所,d新潟大学農学部,e大阪大学理学研究科,#責任著者

 

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