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【理工学】アルマ望遠鏡が双子の星の軌道運動を明らかに

[記事掲載日:21.10.12]

 

 大学院理工学研究科博士前期課程学生 市川貴教氏 (研究当時)、城戸未宇氏、高桑繁久教授らの研究チームは、若い双子の星(連星)おうし座XZ星系を3年間にわたって観測したアルマ望遠鏡のアーカイブデータを解析することにより、連星が互いの周りを回る軌道運動を検出することに成功しました。アルマ望遠鏡の豊富なアーカイブデータを有効活用して若い連星の運動を動画として示した、初めての例であるといえます。この研究成果は、Takanori Ichikawa et al. “Misaligned Circumstellar Disks and Orbital Motion of the Young Binary XZ Tau”として、米国の天文学専門誌「アストロフィジカル・ジャーナル」に9月23日付けで掲載されました。本研究成果は、複数年にわたるアルマ望遠鏡観測データを解析することで天体の様々な時間変化を調べられることを示しており、「アルマ望遠鏡によるアニメーション」を用いた新たな科学の開拓が期待できます。

 

 宇宙は、2つの星が互いの周りを回っている双子の星、連星であふれています。また、年齢の若い連星のそれぞれの星の周囲には、分子ガスと塵(ちり)からなる「原始惑星系円盤」が存在し、この円盤が惑星形成の現場であることがわかっています。実際に連星に付随する惑星も多く検出されてきていますが、連星系でどのように円盤が形成され、その中で惑星が作られるのかはいまだに謎に包まれています。

 
 連星における惑星形成を調べるためには、2つの星が互いの周りを回っている軌道運動を観測から正確に求め、個々の原始惑星系円盤の傾き、回転方向と軌道運動を比較することが重要になります。もし連星や原始惑星系円盤が、ひとつの大きな円盤が分裂することによって形成されるのであれば、連星の軌道と個々の円盤は同一平面上に存在するはずです。一方、分子ガスが乱流によって分裂することで連星や原始惑星系円盤が形成されるのであれば、連星の軌道面と円盤の面は異なっていることが予想されます。これは、最終的に出来上がる惑星の軌道面にも影響する、大きな問題です。
 
 市川氏らの研究チームは、アルマ望遠鏡のアーカイブデータを活用して、年齢が1000万年程度の若い連星おうし座XZ星系(地球からの距離はおよそ480光年)について調べました。その結果、個々の原始惑星系円盤が40度以上傾いていることが明らかになりました。さらに2015、2016、2017年と1年おきに観測されたデータを解析した結果、連星が時計回りに運動していることを発見しました。これは連星の軌道運動を見ているものと考えられます。3年間での軌道運動の大きさは3.4天文単位(地球と太陽の間の距離の3.4倍)に達します。さらにこの連星系の軌道面は、個々の原始惑星系円盤の円盤面とも異なっていることが明らかになりました。つまり、連星を作る2つの星が持つ個々の円盤が互いに傾いているだけでなく、連星どうしの軌道を含めすべてが異なる平面上にあることが明らかになりました(図1)。
 
 これまでのアルマ望遠鏡による観測でも、若い連星の原始惑星系円盤が互いに傾いている例は発見されていました。しかし、連星の軌道運動を明らかにしたうえで、連星の軌道面とも異なる傾きを持っていることがわかったのは、今回が初めてのことです。
 
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図1: 今回の観測結果をもとに描いた、おうし座XZ星系の想像図。連星系を成す2つの若い星のまわりにそれぞれ原始惑星系円盤があり、互いに傾いています。また、2つの若い星はいずれの円盤面とも異なる平面上を軌道運動しています。
Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO)
 
▼説明会の様子(10/12追加)

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【タイトル】

Misaligned Circumstellar Disks and Orbital Motion of the Young Binary XZ Tau

【著者】

Takanori Ichikawa, Miyu Kido, Daisuke Takaishi, Yoshito Shimajiri, Yusuke Tsukamoto, and Shigehisa Takakuwa

【掲載誌】

Published 2021 September 23 • © 2021. The American Astronomical Society. All rights reserved.

The Astrophysical Journal, Volume 919, Number 1

【DOI】

10.3847/1538-4357/ac0dc3

 


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