トピックス

>トップページ >トピックス >【理工学】熱い抱擁を遂げた双子星の末路を解明

【理工学】熱い抱擁を遂げた双子星の末路を解明

[記事掲載日:22.01.12]

 理工学研究科附属天の川銀河研究センターの今井 裕准教授が一員となった国際研究チームは、天の川銀河における物質輪廻を現在担っている星々の正体を突き止めました。この成果は、日本が南米チリ高地で運用するアルマ電波望遠鏡(ALMA)を使った観測によって得られました。
 
概要

 私たちの太陽とは異なり、多くの星々には双子や三つ子のきょうだいが居て、お互いのすぐ周りをぐるぐる公転しています。これらの星系のなかには、長い年月をかけて星がお互いにどんどん近づいていくものがあります。そして、そのうち1つの星が進化して巨大化し、もう1つの星と一体となることが想定されています。この時、一体となった2つの星はガスと塵から成る分厚い層(共通外層)をまとうことになりますが、その中で一体何が起きるのか、様々な可能性が考えられてきました。
 
 スウェーデンやオランダ、スペイン、日本、米国の研究者から成るチームは、このような段階にある星々と目される「宇宙の噴水」天体に注目して、今回アルマ望遠鏡を使った観測を行いました。「宇宙の噴水」天体とは、水蒸気分子が放つ強力なメーザー(レーザーの電波版)が観測される双極高速ガス流を伴う天体です。1000 億個もの星々が存在する天の川銀河の中で、たった15 天体しか見つかっていないことと、高速ガス流がガスの分厚い層を貫くのに要する時間から、このような天体は星の寿命(数億年—数10 億年)のうち最後のたった100 年未満だと考えられています。
 
 研究チームは今回、観測した「宇宙の噴水」天体のほとんどが、星の質量の半分にも達する大量の物質をこの一瞬の間に星の外へ吐き出していることを突き止めました(図1参照)。これら物質の量を見積もるために、分厚い共通外層の中までも見通すことができる電波の輝線(炭素・酸素原子の微量同位体を含む一酸化炭素分子が放つ電波)を観測しました(図2参照)。これらの輝線は、アルマ望遠鏡の驚異的な感度によって「宇宙の噴水」天体で今回初めて検出されました。これら輝線の強さから、「宇宙の噴水」天体を成す星は、もともとは太陽程度、大きくてもその2—3 倍の質量しか持たない星であることが分かりました。
 この程度の星が単独で存在する場合、星が進化して最後に物質を大量に放出するにしても、その所要時間は数10 万年にも及びます。このことから推察して、研究チームは、「宇宙の噴水」天体が2つ以上の星(連星)から成り立っているという、より確実な証拠をつかみました。連星を成すと考えられているものの、1つ1つの星をはっきり区別して観測されたことはありませんので、この証拠を得たことはとても意義深いものです。
 
 さらに研究チームは、天の川銀河中の進化終末星の中で「宇宙の噴水」天体が占める割合に基づいて、太陽程度の軽い星々が連星系を成す場合、進化の最終段階で必ず「宇宙の噴水」天体へと変身する、と結論付けました。すると、このような連星系が、ある種の超新星爆発を起こしたり多様な形状を持つ惑星状星雲を作り出したりするもとになる天体だと推測されます。
 
 今回の研究成果を通して、「宇宙の噴水」天体が連星を成す多くの星々の最終進化の仕組みを解明する上で極めて重要な天体であることが分かりました。今後、人間寿命の間にこれら天体が本当に上記様々な天体を作り出すように進化するのか、精力的に見届けることが重要となります。
 
20220112hutago01.jpg
図1: 共通の大気(共通外層)の中にある連星から猛烈に吹き出すガス流の想像図
Credit: Danielle Futselaar, artsource.nl
 
 
 
20220112hutago02.jpg
図2: アルマによる観測結果の1つ、W 43A で検出された一酸化炭素同位体分子からの輝線スペクトル
 Credit: Khouri et al. 2021
 

【タイトル】

“Observational identification of a sample of likely recent Common-Envelope Events”

【著者】

Theo Khouri, Wouter H. T. Vlemmings, Daniel Tafoya, Andrés F. Pérez-Sánchez,
Carmen Sánchez Contreras, José F. Gómez, Hiroshi Imai and Raghvendra Sahai

【掲載誌】

Nature Astronomy

【DOI】

10.1038/s41550-021-01528-4