トップページトピックス【水産学部】モジャコ漁場探索を効率化するための流れ藻マップを開発、社会実装化試験を開始

【水産学部】モジャコ漁場探索を効率化するための流れ藻マップを開発、社会実装化試験を開始

[記事掲載日:23.02.27]

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 水産学部水圏科学分野の研究グループは、高分解能海洋モデルおよび鹿児島大学練習船を利用し、モジャコ漁のスマート化システムを開発し、社会実装化試験を開始しました。

 ブリ類養殖は我が国の主要な海面養殖業であり、鹿児島県における基幹産業となっています。しかし、天然資源との価格競争、赤潮被害の常態化、飼料価格や燃油代の高騰など、予測困難な多くのリスク要因を抱えており、ブリ類養殖に関わる漁業者の収益は非常に厳しくなっています。特に、ブリ類養殖に欠かせない天然種苗を確保するためには、流れ藻が来遊する時期・海域を予測し、漁場探索を行う必要がありますが、多大な労力・時間・経費がかかるだけでなく、天然種苗の資源量や天然ブリ稚魚・モジャコの漁場の海洋環境が大きく変動するため、天然種苗確保の不確実性が非常に高くなっているのが問題です。
 令和3年度は記録的なモジャコ漁不漁に加えて、トンガ噴火による畜養魚損失、ロシア・ウクライナ戦争に伴う燃油代高騰に見舞われ、大きな影響が出ています。このため、天然種苗確保の不確実性を低減し、経費削減・業務効率化も可能とする技術の創出と社会実装により、ブリ類養殖業全体でのリスク分散をすることが急務となっています。

 そこで研究グループは、本学工学部で開発した高分解能沿岸海洋モデルを用いて、モジャコ漁場となる海域の詳細な海況図を自動的に作成するシステムを開発しました。また、モジャコ漁期前に本学所有の練習船・かごしま丸および南星丸による流れ藻観測を行い、モジャコ漁場における流れ藻の分布を流れ藻観測速報として公開しました。さらに、この海況図に流れ藻分布を登録できるシステムを開発し、広大な海域における海況と流れ藻の分布状況が把握できるウェブサイトを公開しました。実際に、これらのシステムやウェブサイトを用いて、東町漁業協同組合・南種子町漁業協同組合と共に社会実装化試験を開始しました。

 研究グループでは、これらの技術が社会実装されれば、地域の基幹産業が抱える問題のいくつかを解決できると考えています。例えば、流れ藻マップを漁業者が利用することで、モジャコ漁場探索のための労働時間短縮や燃油代削減が可能となるだけでなく、経験知を知的財産として次世代の漁業者に残すことができます。また、これまで流れ藻が来遊する時期・海域に一致したモジャコ採捕計画を策定することは非常に困難でしたが、科学的情報に従った現実的なモジャコ採捕計画を策定できる可能性があります。
 本学が地域産業のシンクタンクとなり、地域の海洋情報を使った地域特有の水産資源管理、海洋ビックデータを利用したスマート水産業の振興に繋がるようことが期待されます。


※同研究は、工学部、鹿児島大学練習船かごしま丸および南星丸との共同研究により実施しました。


【ウェブサイト】

流れ藻マップ

流れ藻観測速報