トップページトピックス【博物館・連合農学研究科】町のドブからお宝発見。マレーシアから新種のハゼ。

【博物館・連合農学研究科】町のドブからお宝発見。マレーシアから新種のハゼ。

[記事掲載日:26.01.07]

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 鹿児島大学総合研究博物館と大学院連合農学研究科の研究チームは、大学間国際学術交流協定校の一つであるマレーシア・トレンガヌ大学(Universiti Malaysia Terengganu)と共同研究を行い、マレーシア・トレンガヌ州から得られた標本に基づいて、ハゼ科カブキハゼ属の新種であるEugnathogobius ganuensis(ユーグナソゴビウス ガヌエンシス)を記載しました。学名「ganuensis」は、本種の採集地(タイプ産地)であるトレンガヌ地域のローカルな呼称「ganu」に因んでいます。

 本種は2025年7月にトレンガヌ州で行われた、鹿児島大学含む日本の複数機関とトレンガヌ大学の共同魚類相調査の過程で採集されました。このハゼは町中の調査チーム宿泊地に面した小さな溝(幅約60 cm、水深わずか5cmほど)から採集されました。採集時点(7月17日22時ごろ)においてこのハゼはEugnathogobius kabilia(ユーグナソゴビウス カビリア)というよく似た種の雄の成魚と思われていましたが、標本作成の過程で別種の可能性が高いことが判明し、急遽行った追加調査(18日2時ごろ)で幼魚と雌を合わせた計5個体が収集されました。これらの5標本は同属他種と形態的に識別されうることが判明したため、このたび新種として記載されました。本研究では、ガヌエンシスを帰属させたEugnathogobius(カブキハゼ属)および近縁属間に生じている分類学的問題についても言及してます。

 本種は頭部感覚管をもたないこと、眼の後ろに2本の縦縞模様があること、体側部の各鱗にそれぞれ横縞模様があること、肩部に不明瞭な黒色斜帯をもつことで前述のE. kabiliaと最も似ますが、第1背鰭が雌雄ともに高い傾向にあり、雄は特によく伸びた伸長鰭条をもつこと(E. kabiliaは低く、伸長鰭条をもたない)、上顎は雌雄ともに同程度の大きさで大きくないこと(雄は著しく大きい)、喉部が黄色であること(白い)、および第2背鰭が黄色みを帯びること(赤みを帯びる)において識別されます。

 本種のタイプ産地は明らかに人工的な環境であり、潮汐の影響を受けていると考えられたものの、採集地の塩分は0‰でした。この水路はトレンガヌ川に通じていることから、本種の本来の生息地は河川感潮域上部の低塩分環境と推測されます。こうした環境に着目した更なる調査により、本当の生息地が明らかにされて欲しいものです。町中にはまだまだ未知の魚が眠っているのかもしれません。

 本研究の成果は、Multidisciplinary Digital Publishing Institute (MDPI)が発行する英文電子版オープンアクセスジャーナルにて2025年12月17日に公開されました。今回使用された標本(タイプシリーズ)は、トレンガヌ大学と鹿児島大学総合研究博物館に収蔵されています。

【掲載論文】A new species of Eugnathogobius (Gobiidae) from Peninsular Malaysia
【著者名】Reo Koreeda, Ying Giat Seah and Hiroyuki Motomura
【掲載誌】Taxonomy
【DOI】https://doi.org/10.3390/taxonomy5040071

【関連ページ】
 総合研究博物館 本村浩之教授 ホームページ
http://www.museum.kagoshima-u.ac.jp/staff/motomura/motomura.html

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図:Eugnathogobius ganuensisの生鮮写真(A:ホロタイプ)、生時写真(B)、および採取風景(C)。