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【総合研究博物館・連合農学研究科】研究チームがインド・太平洋から"吸盤をもつ魚"、ウバウオ科の3新種を発見

[記事掲載日:21.10.25]

 

 連合農学研究科3年の藤原 恭司さんは、腹部に発達した吸盤構造をもつことが特徴の魚類、ウバウオ科に含まれる3新種を発見しました。この内、西太平洋[鹿児島県(薩摩半島、屋久島、および奄美群島)を含む南日本とインドネシア]から生息が確認された種はLepadichthys geminus(レパディクティス ジェミヌス)と命名されました。種小名のgeminusはラテン語で「2つ」、「双子」を意味し、これは本種の特徴である腹部下面にある2本の黄色線に由来します(他種では1本)。Lepadichthys geminusは「タスジウミシダウバウオ」という標準和名で1985年から日本では存在が知られていましたが、その分類は未解決のままでした。本研究において、インド・太平洋の広域から得られた多数の標本に基づく調査から「タスジウミシダウバウオ」が新種L. geminusであることが明らかになりました。タスジウミシダウバウオは全長3 cmほどの小型魚類で、名前のとおり腹部の吸盤を用いてウミシダ類に吸着して生活しています。ウミシダ類を住処として利用するだけでなく、食料としても利用している可能性が高いことが分かりました。
 
 これらの報告は英文誌「Journal of Fish Biology」で2021年10月7日に掲載されました。本論文では、同時に南西インド洋に分布する2新種Lepadichthys heemstraorum(レパディクティス ヒームストラオルム)とLepadichthys polyastrous(レパディクティス ポリアストロス)も記載しました。これらの2新種は吸盤が楕円形(L. geminusでは正円形)であることや体にある黄色点の特徴によってL. geminusから容易に識別されます。
 
 上記の3新種について、本論文中では暫定的にミサキウバウオ属Lepadichthysに含められましたが、3新種の口部や感覚器官の特徴は本属に一般的にみられる特徴と大きく異なっていることから、今後、各種の系統関係を遺伝的特徴なども加え明らかにする研究が期待されます。
 
 
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タスジウミシダウバウオLepadichthys geminus(沖永良部島産 総合研究博物館所蔵のホロタイプ)
 
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Lepadichthys heemstraorum(南アフリカ共和国産 J. E. Randall氏撮影)
 
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Lepadichthys polyastrous(南アフリカ共和国産)
 
 

【タイトル】
Review of the Lepadichthys lineatus complex (Gobiesocidae: Diademichthyinae) with descriptions of three new species
【著者】
Kyoji Fujiwara and Hiroyuki Motomura
【掲載誌】
Journal of Fish Biology, pages 1–20
【DOI】
 
 
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