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【農林水産学研究科】学生が2022年度日本魚類学会年会で最優秀口頭発表賞を受賞

[記事掲載日:22.09.30]

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20220930nihongyorui01.jpg佐久間 美明 農林水産学研究科長と受賞者の森年エマ日向子さん


 9月17日から20日に大阪公立大学で開催された日本魚類学会年会にて、農林水産学研究科2年の森年エマ日向子さんが「アカオビハナダイにおける雌の密度が配偶システムと性様式に与える影響」について口頭発表を行い、最優秀口頭発表賞を受賞しました。森年さんは受賞を受け、「これまで支えて下さった共著者の皆様、そして研究の犠牲になってくれた多くのアカオビハナダイの命に感謝している。今回の受賞が、鹿児島湾の魅力を多くの方に知ってもらうきっかけになればと思う。」とコメントしました。



【口頭発表の内容をご紹介いたします!】


 アカオビハナダイは美しい外観をもつハタ科の小型種で、通常は水深の深い岩礁域に低密度で生息しています。鹿児島湾では桜島を中心とした水深の浅い岩礁・サンゴ礁域に高密度で生息し、スクーバダイビングにより容易に観察することができます。
 これまで本種は一夫多妻のハレムを形成し、雌から雄へと性転換する雌性先熟の繁殖様式をもつ(monandric species)と考えられてきました。鹿児島湾で潜水調査により毎月定期的に標本を採集し、生殖腺の組織学的観察を行いました。その結果、本種は全ての個体が精巣と卵巣が混在するbisexual phaseを経由し、その後性成熟すること、また、雌として産卵を経験する前に雄に性分化する一次雄と、産卵後に雄へと性転換する二次雄が存在する(diandric species)ことが明らかとなりました。一次雄は一万尾を超える大きな群れ付近でのみ出現しており、雄による雌への干渉の頻度の低さにより生じる現象と推察されました。

 以上の結果は、本種が単純な一夫多妻ではなく、複雑な社会構造をもつ可能性を強く示しており、個体数密度が極めて高い鹿児島湾にのみ特有の現象と考えられます。


20220930nihongyorui02.jpg鹿児島湾のアカオビハナダイ