トップページトピックス【博物館・連大】数十年にわたり混乱していたフサカサゴ科・マツバラカサゴ属魚類を分類学的に再検討

【博物館・連大】数十年にわたり混乱していたフサカサゴ科・マツバラカサゴ属魚類を分類学的に再検討

[記事掲載日:23.11.02]

  • topics-SDGs-14(海の豊かさを守ろう)

 鹿児島大学総合研究博物館の研究チームはインド・西太平洋から得られたフサカサゴ科マツバラカサゴ属(Neomerinthe)魚類177標本に基づき、本属の5種を分類学的に再検討しました。マツバラカサゴ属はこれまで数十年間ものあいだ分類学的に混乱していたため、図鑑などでも誤同定が頻発していましたが、本研究により各種の学名や特徴が整理され、分布域も明らかになりました。本研究により南太平洋・バヌアツから新種「Neomerinthe harenartis」が記載され、さらに日本からはNeomerinthe megalepisが初めて確認されました。本研究ではこのN. megalepisに対し、新標準和名『オボロマツバラカサゴ』を提唱しました。この和名は本種の体が朧がかったように黒ずむこと、および本種の特徴が長年不明瞭で種としての実態があいまい(=朧)であったことにちなみます。オボロマツバラカサゴは国内では高知県の沖合からのみ標本が採集されています。

 また、日本近海にも生息する本属の1種「マツバラカサゴ」に対しては過去30年以上にわたり名義名(学名)Neomerinthe procurvaが使用されてきましたが、実際にはNeomerinthe bucephalusが適用されることも本研究により明らかとなりました。Neomerinthe bucephalusは1896年にインドで新種記載されて以来、魚類学者の間でもほぼ知られていませんでしたが、今回の研究により約120年ぶりに復活することとなりました。

 本研究成果は2023年10月8日に日本魚類学会が発行する査読付き英文誌Ichthyological Research(イクチオロジカル リサーチ)電子版に掲載されました。マツバラカサゴ属には日本近海を含めいまだに多くの未記載種が存在すると考えられており、本研究を皮切りにその多様性の解明が進むことが期待されます。


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日本初記録種・オボロマツバラカサゴ(体長6.9 cm;総合研究博物館所蔵)




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学名変更種・マツバラカサゴ(体長12.8 cm;総合研究博物館所蔵)




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新種・Neomerinthe harenartis(体長11.9 cm;総合研究博物館所蔵)


【掲載論文】Taxonomic review of the Neomerinthe bucephalus species group (Teleostei: Scorpaenidae), with description of a new species from Vanuatu., doi:,
【著者名】Tatsuya Matsumoto and Hiroyuki Motomura
【掲載誌】Ichthyological Research, 27 pages
【DOI】10.1007/s10228-023-00926-0

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