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【先端C】抗SARS-CoV-2活性を有する新規ビタミンK誘導体の探索

[記事掲載日:23.11.07]

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 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染によるCOVID-19の世界的なパンデミックから約4年が経過しようとしています。その間にmRNAに由来するワクチンが開発されるとともに、SARS-CoV-2由来のタンパク質を標的とする抗ウイルス薬がいくつか開発され、臨床の場で使用されております。しかし、COVID-19は治癒後も数ヶ月以上続くこともある種々の後遺症が深刻な問題となっております。中でも、血栓症を起こしやすくなることによる中枢神経障害や、一過性でない後遺症としての味覚障害や嗅覚障害は、神経の損傷がその原因として示唆されております。従って、抗ウイルス効果を有するとともに、これらの後遺症を防ぐ効果を有する薬剤の開発は極めて重要なものです。

 芝浦工業大学システム理工学部の須原義智教授の研究グループは、これまでの研究により、神経幹細胞を活性化してニューロンへ分化させる作用をもつ新規化合物として「ビタミンK誘導体」を見出しており、今回、鹿児島大学先端科学研究推進センターの岡本実佳特任教授と共同研究を行うことで、これらのビタミンK誘導体の中に、培養細胞においてSARS-CoV-2の増殖を選択的に抑制するものがあることを見出しました。さらに、その作用機序について検討したところ、当該ビタミンK誘導体はSARS-CoV-2のRNA合成酵素の活性を阻害することにより、抗SARS-CoV-2効果を示すことが示唆されました。

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新型コロナウイルス感染症とその後遺症のひとつである脳梗塞血栓症に対する治療効果を併せ持つ化合物の探索



 これらの研究成果については、芝浦工業大学と鹿児島大学で国際特許出願を行うとともに、米国化学会の科学雑誌であるACS Omega(Impact Factor:4.1,CiteScore:5.9)に投稿し、掲載が受理されました。今回の研究で同定したビタミンK誘導体の抗SARS-CoV-2効果は、COVID-19治療薬として臨床開発を進めるには不十分であるため、芝浦工業大学で引き続き各種の新規ビタミンK誘導体を合成し、鹿児島大学においてそれらの抗SARS-CoV-2効果の評価を続けています。