進取の気風にあふれる総合大学

国立大学法人鹿児島大学

文字サイズ

大学紹介

トップページ>大学紹介>平成18年度入学式告辞(平成18年4月7日)

平成18年度入学式告辞(平成18年4月7日)

 春爛漫の今日の記念すべきよき日に、若さ溢れる皆さんを鹿児島大学にお迎えできることは私たちの至上の喜びであります。
 鹿児島大学学部入学生2,114名、大学院入学生629名、総計2,743名の皆さん!ご入学おめでとう。また世界14ヶ国からの57名の留学生の皆さん、鹿児島大学は大きな喜びを持って入学を歓迎いたします。
 今日ここに、平成18年度鹿児島大学入学式が、御来賓、名誉教授ならびに関係各位の御臨席のもとに挙行できますことは、大きな喜びであります。
 皆さんはこれまで永年にわたって学業に勤しみ、蛍雪の功なって今日の入学に至ったのですが、その努力に対して心からの敬意を表します。また、今日まで皆さんを暖かく見守ってこられた御両親、御家族の皆様、そして関係者の皆様にはさぞお喜びのことと思います。
おめでとうございます。
 今日から新入生の皆さんを鹿児島大学の一員として、そして私たちの緑溢れるキャンパスの新しい主役として、全学をあげて歓迎いたします。
 鹿児島大学に入学された皆さんは入学の感激でいっぱいでありましょう。そして、「さあ、今日からやるぞ」と若さに満ち、ファイト満々の皆さんを前にして、私たちも感激で一杯であります。それは、皆さんが非常に若く、この混沌とする21世紀を背負って、きっと新しい世界を切り開いてくれるにちがいないという大きな期待と、そして可能性を一杯持っているからであります。
 鹿児島大学に入学された皆さんは入学の感激の中でこれからの4年間、あるいは6年間にどのような学生生活を送るか、すでに計画をしっかりと立てておいでかと思います。大学院に入学の皆さんも同様でありましょう。
 どのような学生生活を送るかをあらかじめ計画しておくことは、有意義な学生生活を送るうえで絶対に欠かせないことであります。その計画を立てるに当たっての一番の基本は、「自分は一生をかけて何をやりたいのか」ということに尽きるのではないかと思います。それはまた、「どのようなことで人々のために貢献できるか、貢献するか」ということであり、それを基本にして計画を立て、「どのようなことを学ぶか、どのような活動をするか」という目標が導きだされるのです。
 その目標を立てるにあたって、皆さんに是非認識してほしいことがあります。それは、今や世界はグローバル化の中にあるということです。国と国との垣根がなくなり、人も物も自由に行き来する時代になりました。その中で、多くの価値観、あるいは考え方が狭い地域、あるいは日本一国のみで通用する時代ではなくなりつつあるという認識を持ってください。そして、世界の現実は常に変化しているという認識を持つことも重要です。
 先の20世紀は科学技術が急速に進歩発展し、それによって人々の幸福が追求される時代でした。
 実際にわが国は1970年代から80年代にかけて世界一の近代工業社会を実現し世界をリードしていました。大学を出て就職すれば、あとは年功序列・終身雇用の安定した生活が待っていました。しかしその頃すでに世界は次の新しい時代に推移しつつあったのです。20世紀末から21世紀初頭の現在は社会の有り様が急速に変化し、その振幅が激しい不安定の時代であるといえます。それを人類の歴史の中での大変化の一つの時代だと指摘する人もいます。それは「知識基盤社会」と呼ばれて、「知恵の値打ちが経済成長と企業利益の主たる源泉になる時代」、すなわち「知恵の文化の時代」に移行しつつあるということです。
 このような認識のもとに大学生生活を送ってほしいのです。
 大学は真理を探求するところであります。従って、学ぶべき事柄は幅広く、より深く、人類が営々として蓄積してきた知的資源のすべてが含まれます。とくに最近の科学技術の進歩発展は学ぶべき知識量を膨大にしました。
 そのような状況の中で、「鹿児島大学生は如何にあるべきか」を、私は常々考えております。次の4つに集約し、学生の皆さんに求めたいと思います。

 すなわち、
 1.学問に勤しみ、真理を探究する
   これは学生の本分に全力を尽くすことを意味します。
 2.明るく、人間性豊かである
   これは人格の陶冶に勤め、豊かな人間性を形成することを意味します。
 3.社会活動に積極的に参加する
   これは社会人としての自覚と責任を持つとともに、社会貢献を行うことを意味します。
次に私は第4番目に、
 4.議論を尊び、相互理解を深める
   これはグローバル化の中で意志を正確に表現・伝達し、相互理解と交流に勤めることを意味します。
これらの4つを掲げ、皆さんが成就されることを求めたいと思います。

 学生の本分は、まず学問をすることから始まります。学問は物事の本質を追求することであり、その真理を探求することは、非常に魅力的であります。しかも大学生の皆さんには誰にも強制されない自主性が与えられています。それはまた無限に学ぶことが可能であることを意味し、一方ではそれをやり抜く忍耐力が必要になります。
 もし皆さんが学ぶ過程で疑問にぶっつかったら、わが優秀な教員に直接疑問をぶっつけて、自分の考えを述べるという作業を実行して下さい。また、いろいろな悩みや困難にぶち当たったら躊躇せずに指導教員に相談してください。 そして、大学は決して「目的もなく遊び呆けるところではない」という強い自覚を持って、一日一日を無為に過ごすことなく大切にして、是非有意義な学生生活を楽しみながら送ってください。
 大学院に進学の皆さん、急速に進歩・発展する科学の世界では、周到な準備と果敢に挑戦するという態度が必要です。21世紀が必要とする新しい研究課題を解明するには多くの困難が伴うかもしれません。そこではまず、課題の問題点を発見し、自らの力で解決する努力が必要です。同時に、指導教員との強い信頼関係のもとに、学問的な厳しい議論を展開し、指導を求めることは当然であり、臆することはありません。皆さんのひたむきな探求心と優秀な教員との真摯な激論がきっと新しい扉を開いてくれるはずです。
 大学は学問の府であり、学問するところであります。しかしまた、大学生時代は社会人としてのアイデンテイテイを確立するために様々なことを試みる心理的社会的猶予期間とも言えます。これは自分を見いだし、個性豊かな人間性を涵養することを意味します。
 大学の教育は教養教育と専門教育からなります。20世紀の科学の急速な進歩は学ぶべき専門知識量を相加相乗的に増大させました。しかし、21世紀の大学教育では、教養教育の重要性が再認識されて、わが鹿児島大学も教育センターを設置して、教養教育と基礎教育、専門教育を有機的に体系化したカリキュラムを編成し、4年あるいは6年間の一貫教育を実施しております。
 教養教育では、グローバル化の中で人類が直面しているさまざまな問題に鋭い関心を持ち、その原因や背景を広い視野から明らかにして、総合的な判断力・思考力を養うものであります。例えば、環境破壊、食糧危機、資源・エネルギー問題、テロや地域紛争、新興感染症、あるいはまた生命の尊厳や宗教などを多角的に学び、専門教育と連携させて、学問的視野を広げて、人間性を醸成させることを目的としています。是非教養教育の大切さを理解して、必ず受講してください。
 文明化した現代では個人が尊重され、個が優先される時代です。とくにわが国では個人の尊重と少子化が絡み合って、友達関係、上下関係、あるいは集団行動など、以前に比較して種々の人間関係の構築が困難な時代であり、豊かな人間性の醸成が困難なことが指摘されています。皆さんはそのような状況を大学生時代に是非打破して、素晴らしい多くの友や仲間を得ることに努めてほしいのです。
 鹿児島大学にはクラブ活動やスポーツ活動の組織が多数あります。スポーツ活動や各種の文化活動は人間関係を構築し、友情を育み、幅広い人間性を養う場になるはずです。地域の種々のボランティア活動にも積極的に参加してください。そこでは色々な人々に出会うチャンスがあります。そして自分を見つめ、自分を失わず、「人間とは何か」を考えるきっかけが与えられ、自己を確立するという作業が続くはずです。皆さんが学問を全うし、社会に出ていろいろな分野で活躍する時に、そこで培われた人間性や友情は社会生活を営むうえで非常に重要であります。
 先日アメリカ・サンデイエゴで行われた第1回WBCでは日本は決勝戦を制し世界チャンピオンに輝き、日本中を興奮と感動の渦に巻き込みました。その中でイチロウ選手の野球に対するひたむきさと人間的な暖かさが称賛されました。イチロウは「野球人生最高の日」と言い、そして「本当にいい仲間に巡り会えた」と、限りなく信じ合える仲間を得たことに感動していました。
 皆さんも、誰にも負けない、「凛として爽やかな」鹿児島大学生らしい素晴らしい人間性と多様で豊かな個性を確立してください。
 議論を疎かにせず、議論を尽くすという作業は、非常に重要な意味を持っています。われわれ日本人は議論することが不得手なように思われます。しかし人間関係が複雑化するグローバル化の現代では、議論し、相手に意志を伝達する作業は絶対に必要なことであります。鹿児島には「議を言うな」という言葉があります。これは議論するなということではなく、正しい議論を大いにしましょうという意味だと私は解釈しております。意見を述べ、議論しないことにはお互いの考えや意思は伝わりません。議論することで、自分のしっかりとした意見、考えを確立することが可能になり、相手に理解され、そして相手をも理解することが可能になります。節度ある議論により、お互いに尊敬の念も湧いてくるはずです。すなわち、意志の伝達と相互交流・相互理解であります。
 当然ながら、その議論の基礎になるのは皆さんが学び、研究する過程で得られる疑問や知識、社会活動で得られる多様な経験であるはずです。そこに鹿児島大学生らしさや個性が生まれるといえます。臆せずに大いに議論をするという習慣をつけて下さい。
 快適で素晴らしい大学生生活、学園生活を送るには守るべき規律があります。わが大学の守るべき学則に是非目を通してください。さらにまた社会からは、大人として、そして社会人としての常識や守るべき倫理観が求められます。
 鹿児島大学では秋になりますと、学生が主体となった鹿児島大学祭が開かれます。この学園祭は大学を一般に公開し、大学の役割を広く知らせるという役割があり、大学と地域が一体となった交流が高く評価されております。しかし一方では、学園祭での飲酒や騒音などが批判されており、その意義が問われています。その一番の原因は、鹿児島大学生としての誇りを忘れ、また社会人であるという自覚を欠いていることにあります。大学構内での夜間の飲酒を禁止し、市民に愛され、地域と一体となった安心・安全の学園祭を私たちは目指しています。皆さんにも理解していただき、是非ご協力ください。
 さらにまた、鹿児島大学では全国に先駆けて大学構内での全面禁煙を実行しており、定められた場所以外での喫煙はできません。健康という観点からも新入生の皆さんが禁煙にこぞって協力されることを願っております。
 さて、21世紀の世界は新しい次元の世界に突入して、大転換期にあるといえます。鹿児島大学もまた大改革の中にあります。平成16年4月にはわが鹿児島大学も法人化され、国立大学法人鹿児島大学になりました。
 私は学長として、新しい時代に突入したという認識を皆で共有しようと呼びかけて、大きな目標を掲げております。

 それは学問の府として、鹿児島大学が
  1.日本の主要な「知の拠点」になることを目指し、世界に発信すること
  2.地域に貢献し、広く世界に貢献すること、そして
  3.21世紀に相応しい新しい大学を創出する、という3つの大きな目標を掲げて、教職員とともに21世紀の鹿児島大学を目指して大改革を進めているところであります。

 鹿児島大学は幸いにも長い歴史と伝統を持ち、学び、かつ諸々の活動をするにふさわしい教育研究組織、教職員、キャンパス、施設・設備を備えた全国でも有数の総合大学であります。このことは、鹿児島大学は新しい時代に対応することのできる十分な実力を有しているのだと断言することができます。
 しかし、大学の主役は学生の皆さんです。
 さあ、新しい時代の21世紀を担う皆さん!今日からそれぞれの学ぶべき道に向かって第一歩を踏み出そうではありませんか。新しい世界を作るために、そして未来を豊かにするために。
 皆さんが鹿児島大学で大活躍され、大いに発展されることを心から祈念して、告辞といたします。


   平成18年4月7日

      鹿児島大学長    
          永 田 行 博