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平成29年度入学式告辞(平成29年4月7日)

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 本日ここに、平成29年度の鹿児島大学入学式が挙行されますこと、誠に慶びに堪えません。新入生の皆さん、鹿児島大学への御入学おめでとうございます。鹿児島大学の教職員を代表して、皆さん一人ひとりの入学を心から歓迎致します。
 今年は、本学の9つの学部に、1,979名の学部学生、また、9の大学院研究科に617名の大学院生、総勢2,596名の新入生を迎えました。このうち70名の海外からの留学生を迎えています。
 みごと入学を果たされた皆さんの研鑽と努力に敬意を表し、その志を支えてこられたご家族の皆様には心よりお喜びを申し上げます。
 
 鹿児島大学の起源は、244年前の1773年に設立された藩学造士館にさかのぼります。この造士館では、当時の最高水準の学問と教育が施され、「進取の気性」に富む若者を育て、我が国の歴史の変革と近代化に大きな役割を果たしました。
 明治以降も、造士館の名称を受け継いだ第七高等学校造士館や、師範学校、高等農林学校、水産専門学校、工業専門学校、医学専門学校などの教育機関が設立され、我が国の発展を支えた多くの専門技術者や教育者を輩出しました。
 また、戦後の1949年には、これらの高等教育機関の歴史と伝統を受け継ぎ、新制の国立鹿児島大学が発足し、さらに2004年には国立大学の法人化に伴い、国立大学法人鹿児島大学となりました。鹿児島大学は、このような歴史を経て、現在では、9つの学部と9の大学院研究科を擁し、約1万1千名の学生が在籍する総合大学へと発展してきました。
 これまで、10万名を超える若者が、この鹿児島大学のキャンパスで学び、国内はもとより世界の各地で、それぞれの専門的知識と技術を生かし、人類の平和と繁栄・福祉の向上のために大きな足跡を残してきています。
 本学の大学憲章では、「自主自律と進取の精神を尊重し、自ら困難に立ち向かい、地域社会や国際社会で活躍しうる人材を育成する」ことを掲げています。また、「学生の潜在能力の発見と適性の開花に努める」ことを教育の基本姿勢とし、本学での学びが皆さんの人生設計の礎となるように、支援を惜しみません。
 その取組として、皆さんが「進取の精神」を自ら培うために、①自学自習のための学習環境の整備、②課題解決力を養成するための支援、③海外留学ならびに海外研修への支援、④就職・キャリアデザインの支援、⑤ボランテイア活動への支援、ならびに、⑥学生諸君の向上心を育て称えるための各種の表彰制度や奨学金制度を備えています。
 本学は、一昨年から学生支援として「進取の精神」支援募金を開始し、広く卒業生や社会の皆様にご寄付をお願いしております。その多くの浄財は、皆さんの海外留学や留学生を海外から招くための支援に使われます。
 また、皆さんが安心して学べるキャンパス環境を整えるために、学内の危機管理に対する備え、生活相談や進路相談、また健康上のカウンセリングを手厚く支援するなど、皆さんの大学生活の充実に向けて全学を挙げて努めてまいります。
 さて、皆さんが学生生活を送る鹿児島は、古くからアジアと世界の諸地域に開かれた南の玄関口として、海外との交流を通じ異文化の導入を率先して行い、豊かな文化や学術を育くみ、我が国の変革と近代化を推進した数多くの人材を輩出してきた地でもあります。皆さんは、このような風土の中で、鹿児島の教育の伝統である「進取の精神」を引き継いだ本学で、南北600キロをキャンパスとして、自分の夢の実現に向けて、学業に励むことになります。
 皆さんは本学での学びを通して、幅広い教養と専門的知識や技術を修得すると共に、社会との関わりの中での学びを深め、多様な物の考え方、地域課題の発見や地域資源の新たな創成の力、グローバルな視野と行動力、発信力、コミュニケーション力や粘り抜く力、困難を乗り越える力など、社会人としての基礎力をしっかりと身につけなければなりません。
 本学は、グローバルな視野を備えた人材の養成と共に、地域貢献マインドを備えた人材の育成にも力を注いでいます。そのために、地域の自治体、産業界、金融界、教育界ならびに医療界と連携し、地域特性を活かしたキャリア教育の推進や地域が求める人材を育成するプログラムを開発しています。
 特に本年度から、地域の活性化に貢献する人材を育成するための学部横断型の新たな教育プログラムとして、「地域人材育成プラットフォーム」を導入し、地域課題の発見と課題解決への方略を主眼に置き、地域のニーズに根ざした人材教育も展開します。新入生の皆さんには、未来を見据えて、これからの学生生活において積極的な学びを展開して、地域に貢献するマインドも身につけて、社会の力強い担い手に成長されることを祈念します。本学での地域貢献マインドの学びは、日本全国の地域創生支援にもつながるものであります。
 今、私たちは、混沌とした世界情勢の中で、様々なグローバルリスクに直面しています。世界的な人口急増と食料問題、地球温暖化と環境問題、グローバル経済の中での様々な歪みや社会分断、テロによる破壊ならびに難民の急増、軍備拡張と国際緊張など。私たちは、このような困難な課題が渦巻く中にいるからこそ、「進取の精神」を発揮して、自分の未来を拓き自己実現を目指さなければなりません。
 皆さんは、自分の将来像を描き夢見て、それぞれの学部を専攻しています。今日からは、より具体的な目標を定め、その目標に向かって将来設計を描かなければなりません。
 そのためには、本学で学ぶ共通教育や専門教育課程の幅広い知識の修得はもちろんのこと、より多くの書物に触れ、友との議論も深め、“①社会が自分に何を求めているか、②自分は社会に対してどのような貢献をすべきか、③人生にどのように向き合うべきか”など、自分のなすべき目標をつかむ努力をしなければなりません。そして、学ぶ事の楽しさを体験し、質問や疑問に対しては自ら声を発し、課題解決への努力を尽くし、社会へ貢献する姿勢を作り上げていただきたい。
 鹿児島大学では、地域の課題はもちろんのこと、国際的にも高い評価を受けている基礎研究や応用研究、またイノベーションに繋がる研究が展開されています。皆さんは、本学で行われている研究活動にも接し、また、世界の変化や科学技術のたゆまぬ進歩に心を踊らせ、世界をリードする研究者としての夢も描いていただきたいと思います。
 
 最後に、皆さんにお聞きします。稲盛和夫さんをご存知でしょうか?
 稲盛和夫氏は、京セラ株式会社を創業し、KDDIを設立され、さらに日本政府からの要請を受け、JAL(日本航空)の再建を見事に成し遂げられた、本学が誇りとする卒業生です。本学は、稲盛和夫氏のご功績とご貢献を称え、1999年に本学の第1号の名誉博士号を授与するとともに、つい10日ほど前の3月27日、「名誉博士 稲盛和夫像」を進取の気風広場に建立いたしました。稲盛和夫氏は学生諸君へ、次のような言葉をおくられています。

“どんな境遇に遭遇しようとも どれほど厳しい環境に置かれようとも 挫けることなく 常に明るい希望を持ち 地道な努力を一歩一歩たゆまず続けていくならば 自分が思い描いた夢は必ず実現する”。

 この言葉は、銅像にしっかりと刻まれています。「名誉博士 稲盛和夫像」は、皆さんを心温かく出迎えてくれます。皆さんのご入学にあたり、稲盛さんの銅像に接し、「進取の精神」を受け継ぐ決意を抱いていただきたい。
 皆さん一人ひとりが、250年の歴史と伝統を有する鹿児島大学において、様々な研鑽を積む中で、新しい自分を発見し、「進取の精神」を育み、持続可能な社会の力強い担い手に成長されることを期待しております。
 最後になりましたが、皆さんの大学生活が実り多いものとなることを心より祈念して、祝辞と致します。
 
平成29年4月7日
鹿児島大学長 前田 芳實