学長メッセージ
「進取の精神で、地域と世界の未来に挑む教育研究拠点」を目指して
鹿児島大学長 井戸 章雄
鹿児島大学は、9つの学部と9つの大学院研究科を擁し、約9,000名の学部学生と約2,000名の大学院生(うち留学生約300名)、併せて約11,000名の学生が在籍する南九州における最高学府です。鹿児島大学が、現在の新制大学としての形を整えましたのは、1949(昭和24)年のことです。明治以降に設立された旧制第七高等学校造士館をはじめ各種の高等専門学校を統合して発足した新制国立鹿児島大学としての歴史は、2019年に70周年の節目を迎えました。この70年の間には、戦後復興と高度経済成長を経て生活水準が向上し、日本は世界有数の先進国となり、最先端の学術研究の教育を受けた多くの人材を輩出し大きな役割を果たしてきました。
そして現在、長期的な経済停滞、高齢化社会問題、低出生率による人口減少、環境問題、グローバル化の進展など、新たな課題に直面しています。さらに、2022年2月に始まったロシアのウクライナ侵攻は世界全体にさまざまな影響をおよぼしており、国際社会の安定に対する脅威ともなっています。
しかし、このような時こそ、人類が蓄えてきた「知」を応用し、理解を深めて本質を見抜き、創造的な思考で問題解決につなげる「智」を活かすべきと考えます。大学は「知の拠点」として、知識を蓄積し、学習や経験によって得られる事実や理論などを学ぶだけでなく、「知」をどう活用するか、理解を深め、考える能力を養う「智の拠点」でもあります。本学の大学憲章では、「自主自律と進取の精神を培い、自ら困難に立ち向かい、地域社会や国際社会で活躍しうる人材を育成する」と謳っています。互いが協力し合い、「知」と「智」の力を合わせて地球レベルの困難に立ち向かいましょう。
さて、本学の位置する鹿児島は、アジアと世界の諸地域に開かれた南の玄関口として、海外との交流を通じ異文化の導入を率先して行い、豊かな文化や学術を育み、我が国の変革と近代化を推進した数多くの人材を輩出してきました。また、平成5年11月に日本初の認定を受けた世界自然遺産「屋久島」や令和3年7月に世界自然遺産登録された奄美群島を含む、南九州から南西諸島など南北600キロに及び県土を有する地に位置しており、世界文化遺産「明治日本の産業革命遺産」を有しています。
鹿児島大学は、この南北600キロに及ぶ県土を本学のキャンパスとして、そこにある自然・歴史・風土・産業を土台としつつ、地域とともにある大学として「知」と「智」の力をもって、皆さんとともに、"進取の精神で、地域と世界の未来に挑む教育研究拠点"となることを目指して進んでいきたいと思います。