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平成30年度入学式告辞(平成30年4月6日)

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 本日ここに、平成30年度の鹿児島大学入学式が挙行されますこと、誠に慶びに堪えません。新入生の皆さん、鹿児島大学への御入学おめでとうございます。鹿児島大学の教職員を代表して、皆さん一人ひとりの入学を心から歓迎致します。

今年は、本学の9つの学部に、1,965名の学部学生、また、10の大学院研究科に600名の大学院生、総勢2,565名の新入生を迎えました。このうち68名の海外からの留学生を迎えています。 みごと入学を果たされた皆さんの研鑽と努力に敬意を表し、その志を支えてこられたご家族の皆様には心よりお喜びを申し上げます。

 

 さて、鹿児島大学の起源は、1773年に薩摩藩主島津重豪が創設した“藩校造士館”にさかのぼります。この造士館は、「進取の気性」に富む若者を育て、我が国の歴史の変革と近代化に大きな役割を果たしました。明治以降、造士館の名称を受け継いだ第七高等学校造士館や、各種の高等専門学校が設立され、我が国の発展を支えた多くの専門技術者や教育者を輩出しました。

 また、戦後の1949年には、これらの高等教育機関の歴史と伝統を受け継ぎ、新制の国立鹿児島大学が発足し、さらに2004年には国立大学法人鹿児島大学となりました。

 鹿児島大学は、このような歴史を経て、現在では、学部と大学院研究科を併せて、約1万1千名の学生が在籍する総合大学へと発展し、これまで、11万名を超える若者が、この鹿児島大学のキャンパスで学び、国内はもとより世界の各地で、人類の平和と繁栄・福祉の向上のために大きな足跡を残してきています。

 

 さて、皆さんが学生生活を送るこの鹿児島は、古くからアジアと世界の諸地域に開かれた南の玄関口として、海外との交流を通じ異文化の導入を率先して行い、豊かな文化や学術を育くみ、我が国の変革と近代化を推進した西郷隆盛や大久保利通など、数多くの人材を輩出してきた地でもあります。 皆さんは、南九州から南西諸島などの離島を含む南北600キロを本学のキャンパスとして、そこにある自然・歴史・風土・産業を土台として、自分の夢の実現に向けて、学業に励むことになります。 

本学の大学憲章では、「自主自律と進取の精神を培い、自ら困難に立ち向かい、地域社会や国際社会で活躍しうる人材を養成する」と謳っています。また、教育の基本姿勢として、皆さん一人ひとりの潜在能力の発見と適性の開花に努め、「日本で一番学生を大切にする大学」を目指して、様々な教育改革と学生支援を行っています。

 

 我が国では、グローバル化の進展、技術革新、国内における生産人口の急減などに伴い、予見の困難な時代の中で新たな価値を創造していく力を育てることが大学教育に必要とされています。そのために鹿児島大学では、“知識・技能の確実な修得”をはじめ、“思考力・判断力・表現力や多様な人々と協働して学ぶ態度”を涵養するために、教育の質保証の改革を進めています。

 また、皆さんの学生生活を様々な点から支援するための取組を行っています。具体的には、「海外留学並びに海外研修への支援」、「就職・キャリアデザインの支援」、「ボランテイア活動への支援」並びに「学生諸君の向上心を育て称えるための各種の表彰制度や奨学金制度」などを備えています。

 さらに、学生諸君の自主的な社会活動の支援も行っています。これは、学生自らの提案による地域創成活動並びに社会に横たわる身近な課題解決のプロジェクトに対する活動資金の支援です。これまで、多くの学生諸君が様々な活動を展開し、課題解決への提案を行ってきました。新入生諸君も、これらの活動に積極的に参加し、新しい自分の発見にも時間を費やしてください。 

 

 本学は、それぞれの専門的知識・技術の修得とともに、グローバルな視野を備えて地域の活性化に貢献する人材の養成も行っています。具体的には、「地域人材育成プラットフォーム」があります。これは、地域課題の発見と課題解決への方策を主眼に置き、地域のニーズに根ざした人材教育を行うものです。新入生の皆さんには、未来を見据えて、これからの学生生活において積極的な学びを展開して、地域に貢献するマインドも身につけて、社会の力強い担い手に成長されることを祈念します。

 また、本学は海外留学を支援するための募金活動を行い、県内の企業や卒業生の皆様にご寄付をお願いしています。昨年はこれらの支援金等より、およそ500名の学生が海外留学や海外研修を体験しました。新入生の皆さんも、進んで海外留学や海外研修の機会を作り、国際的視野の拡大と異文化理解を深め、企画力、課題解決力、コミュニケーション力の向上など、自分の可能性にチャレンジして下さい。

 

 皆さんは、自分の将来像を描き夢見て、それぞれの学部を専攻しています。今日からは、より具体的な目標を定め、その目標に向かって将来設計を描かなければなりません。  

 そのためには、本学で学ぶ共通教育や専門教育課程の幅広い知識の修得はもちろんのこと、より多くの書物に触れ、友との議論や社会体験も深め、「社会が自分に何を求めているか」、「自分は社会に対してどのような貢献をすべきか」、「人生にどのように向き合うべきか」など、自分のなすべき目標をつかむ努力をしなければなりません。そして、学ぶ事の楽しさと同時に苦しさも体験し、質問や疑問に対しては自ら声を発し、課題解決への努力を尽くし、社会へ貢献する姿勢を作り上げていただきたいと思います。

 

 最後に、皆さんにお聞きします。稲盛和夫さんをご存知でしょうか?

 稲盛和夫氏は、京セラ株式会社を創業し、KDDIを設立され、さらに日本政府からの要請を受け、JAL(日本航空)の再建を見事に成し遂げられた、本学が誇りとする卒業生(OB)です。本学は、稲盛和夫氏のご功績とご貢献を称え、1999年に第1号の名誉博士号を授与するとともに、昨年、「名誉博士 稲盛和夫像」を本学の進取の気風広場に建立いたしました。稲盛和夫氏は学生諸君へ、次のような言葉をおくられています。

“どんな境遇に遭遇しようとも どれほど厳しい環境に置かれようとも 挫けることなく 常に明るい希望を持ち 地道な努力を一歩一歩たゆまず続けていくならば 自分が思い描いた夢は 必ず実現する”。

 この言葉は、銅像にしっかりと刻まれています。「名誉博士 稲盛和夫像」は、皆さんを心温かく出迎えてくれます。皆さんのご入学に当り、稲盛さんの銅像に接し、進取の精神を受け継ぐ決意を抱いていただきたい。 

 

 皆さん一人ひとりが、250年の歴史と伝統を有する鹿児島大学において、様々な研鑽を積む中で、新しい自分を発見し、「進取の精神」を育み、持続可能な社会の力強い担い手に成長されることを期待しております。

平成30年4月6日
鹿児島大学長 前田 芳實