トップページ大学紹介平成18年度卒業式告辞(平成19年3月23日)

平成18年度卒業式告辞(平成19年3月23日)

 本日、鹿児島大学の学部を卒業される1,991名の皆さん、大学院を修了される553名の皆さん、まことにおめでとうございます。
 ここにご臨席をたまわっておりますご来賓、名誉教授、ご家族、列席の理事、各部局長、教職員とともに、皆様のご卒業・大学院修了を心からお祝い申しあげます。
 学部卒業・大学院修了という輝かしい到達点に達するために皆さんを支え、励まされてこられたご家族をはじめとするご関連の皆様にも、心からの敬意とお祝いを申し上げます。
皆さんは、学習や研究に真摯に取り組まれるとともに、ボランティア活動やサークル活動に参加し、各地へ旅行し、学友や先輩や教員と熱い議論をするなど、楽しい学生生活を謳歌されたことと思います。また一方、様々な悩みや困難にも直面されたことと思いますが、皆さんはそれらを見事に乗り切って、学位を取得されました。皆さんの努力と忍耐に心より敬意を表します。特に、留学生の皆さんには生活習慣の違う日本で、学生生活を送り、学位論文をまとめることはさぞかし大変であったろうと思います。この貴重な体験を活かして、母国で、また、世界で活躍されることを心より祈念しております。
 本学が位置する鹿児島は日本列島の南の玄関にあって、山岳と海洋と島嶼に恵まれ、後世に遺すべき優れた自然環境と豊かな文化を育んだ地であります。古くから海外との交流を通じて、異文化の導入を率先して行い、わが国の近代化を推進した英才を多数輩出してきました。鹿児島大学はこのような地理的・文化的特徴を遺産として受け継ぎ、これを教育研究活動の精神的基盤とし、学生、教職員が地域社会と一体となって、学術文化の向上、民主主義の尊重、人類福祉への奉仕、世界平和の維持および地球環境の保全に努め、もって世界を先導する総合学術共同体を目指すことを基本理念としています。
教育面では、幅広い教養と専門の学芸を習得し、真理を愛し、高い倫理観と芸術性を備え、堅固な自立心と壮健な心と体をもった人材の育成を教育目標としております。その目標達成のために、教職員により、不断に改善を積み重ねている共通教育と専門教育課程のなかで皆さんは、勉学に励まれ、学位を取得されたのでありますので、鹿児島大学での学生生活を一生涯を通じて、誇りとしていただけるものと確信しております。卒業後も、常に、自分の目で真実を見つめ、物事の本質を見極め、自らに問題を提起し、自分の考えを持ち、ひとのために考え、ひとのために働き、社会のために仕事ができるひとへと成長するために、心を高める、不断の努力を続けてほしいと思います。
 皆さんはこの4月から様々な進路を歩まれることになりますがどの進路を進むにしても、われわれの社会は、環境問題、エネルギー問題、高齢化問題や政治不信、経済的モラルの欠如、社会的信頼性の低下など看過できない諸問題を抱えていることを忘れないで頂きたい。皆さんには意識的に社会との接点をもち、日常生活においても地道に社会に積極的に参加し、鹿児島大学での学生生活の中で身につけた自立性、人間性、社会性、倫理観をさらに涵養し、人々が心豊かで安心して生活できる社会を実現するために貢献することが強く求められていることを自覚していただきたい。
 皆さんの人生の節目である新しい門出にあたり、アメリカの医学教育者オスラー博士の言葉を紹介します。オスラー博士は、1889年ペンシルベニア大学での卒業式での講演会において「学生諸君、平静の心を胸に抱き、これからの日々を歩き飛躍していただきたい。諸君は将来、失望あるいは失敗に見舞われることもあるだろう。たとえ最悪の事態に陥っても勇敢に立ち向かっていただきたい。敗北のときもあり、その苦しみに耐えねばならない者も出てくるだろう。その時に平静の心をもつことは、至難なことであるが、それにもかかわらず、心のあり方として必要である。それ故に、日頃より、不幸にめげない明るい『平静の心』を身につける努力が望まれる。」と述べ、さらに「勝ち取った成功や自分の持っている最も優れているものは、先人に負っていることを自覚できる『謙遜の徳』なしには、良い職業人にはなれない」と繰り返し強調しています。まさしく、卓見であります。
 今日の輝かしい門出を迎えることができたのは、皆さんの努力は無論でありますが、ご家族の愛情、人間的、社会的に独立できるように教育・研究・ゼミの指導をしていただいた大学の教職員の励ましがあったからこそであります。人の心の温かみや人間的絆とは何かを教えてくれた先輩や友人への感謝も忘れず、自己研鑽に努めてもらいたいと思います。
 皆さんが、元気でさらなる学習に、仕事に励まれることを祈念して、告辞と致します。
平成19年3月23日
鹿児島大学長  
吉 田 浩 己