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平成19年度入学式告辞(平成19年4月6日)

 
 鹿児島大学へ入学された皆さん、おめでとう。春爛漫の今日の記念すべきよき日に、若さ溢れる皆さんを鹿児島大学にお迎えできることは私たちの至上の喜びであります。
 
 今年は、法文学部、教育学部、理学部、医学部、歯学部、工学部、農学部、水産学部の8学部で、2036名が鹿児島大学に入学されました。人文社会科学研究科、教育学研究科、保健学研究科、理工学研究科、農学研究科、水産学研究科、医歯学総合研究科の修士課程、人文社会科学研究科、保健学研究科、理工学研究科、医歯学総合研究科、連合農学研究科の博士課程、および司法政策研究科、臨床心理学研究科の専門職学位課程、計643名を大学院へお迎え致しました。学部・大学院に入学される外国留学生は、16ヶ国、60名にのぼります。
 
 ここに、ご臨席をたまわっております、ご来賓、名誉教授、列席の理事、部局長、教職員、そして、すべての教職員と在学生とともに、皆さんを熱烈に歓迎いたします。
 
 皆さんはこれまで永年にわたって学業に励み、蛍雪の功なって今日の入学に至られたのであります。皆さんの努力に敬意を表します。また、今日まで皆さんを暖かく見守られたご両親、ご家族の皆様、そして関係者の皆様にはさぞお喜びのことと拝察いたします。
 
 皆さんが入学された鹿児島大学は昭和24年に新制大学となってからも既に57年が経っていますが、それぞれの学部はさらに長い歴史をもつ伝統ある総合大学であります。
 
 鹿児島大学の原点は1773年(安永2年)に創立された藩学造士館であります。
 
 明治2年に創立された西洋医学校、明治8年に創立された小学校授業講習所、明治9年に創立された鹿児島師範学校と鹿児島女子師範学校、明治14年に創立された鹿児島県立医学校、明治17年に創立された鹿児島県立中学造士館、明治34年に創立された第七高等学校造士館、明治41年に創立された鹿児島高等農林学校と鹿児島県立商船学校、大正13年に創立された鹿児島県立実業補習学校教員養成所、昭和18年に創立された鹿児島医学専門学校、昭和20年に創立された鹿児島県立工業専門学校が鹿児島大学の母体または直接の前身であります。
 
 鹿児島の地において、それぞれ長い歴史を刻んできた以上の高等教育機関が包摂されて新制鹿児島大学が設置されました。それぞれの清流が合流して大河「鹿児島大学」となったのです。その後 昭和52年に歯学部が新たに設置され、さらなる大河へと発達し、現在、8学部、10研究科からなり、12000名の学部学生と大学院生および2000名の教職員が在籍する質量ともわが国のトップレベルの総合大学へ発展いたしております。
 
 皆さんが学生生活をおくる鹿児島は日本列島の南の玄関にあって、山岳、海洋、島嶼に恵まれ、後世に遺すべき優れた自然環境と豊かな文化を育んだ地であります。古くから海外との交流を通じて、異文化の導入を率先して行い、わが国の近代化を推進した英才を多数輩出してきました。鹿児島大学はこのような地理的・文化的特徴を遺産として受け継ぎ、これを教育研究活動の精神的基盤として、学生、教職員が地域社会と一体となって、学術文化の向上、人類福祉への奉仕、世界平和の維持および地球環境の保全に努め、もって世界を先導する総合学術共同体を目指すことを基本理念としています。
 
 皆さんの活躍の場となる21世紀は新しい知識・情報・技術が政治・経済・文化をはじめ社会のあらゆる領域での活動の基盤として飛躍的に重要性をます、いわゆる知識基盤社会であり、新たな知の創造・継承・活用が社会の発展の基盤となります。そのために、特に高等教育を担う大学には、先見性・創造性・独創性に富み卓越した指導的人材を幅広い様々な分野で養成することが強く要請されています。また活力ある社会が持続的に発展していくためには、専門分野についての専門性を有するだけでなく、幅広い教養を身につけ、高い公共性・倫理性を保持しつつ、時代の変化にあわせて積極的に社会を支え、あるいは社会を改善していく資質を有する人材が不可欠であります。鹿児島大学はこの21世紀型市民の育成を重要な教育目標として、教育改革を継続いたしているところであります。
 
 皆さんが活躍する21世紀の社会は極めて複雑に変動しながら進化していくと思われます。皆さんが生涯にわたり、社会に関与し、社会を支え、改善し、社会の発展に寄与するためには、学問のすそ野を広げ、様々な角度から物事をとらえ、自主的・総合的に考え、的確に判断する能力を開発することが必要であります。そのために教養の習得が皆さんの鹿児島大学における第一の学習目標になります。
 
 教養を習得するためには、入学直後より開始される共通教育の授業においては、人類が直面している環境破壊、食糧危機、資源・エネルギー問題、テロと地域紛争、新興感染症あるいは宗教問題など様々な問題に鋭い関心をもち、その原因や背景を多角的に学び、専門分野の枠を超えて共通に求められる知識や思考方法等の知的な技法を習得し、人間としてのあり方や生き方に関する深い洞察、現実を正しく理解する力も涵養して頂きたい。鹿児島大学には課外活動のために沢山のサークルがあります。仲間との課外活動は人の心の温かみや人間の絆とは何かを教え、幅広い人間性を養う場になるはずです。スポーツで鍛えた心身は生涯の財産になります。広い視野で物事を議論しながら、課外活動を通じてえた友人は何にも代え難い一生の財産となります。地域の様々なボランティア活動にも積極的に参加していただきたい。幅広い、様々な人生観を持った人々に会うことができ、また、人生と社会とのかかわりを見つめるきっかけとなり、自己の確立のための絶好の研鑽の場となります。
 
 また、21世紀は新しい知が次から次へと創生される時代でもあります。皆さんが社会の発展に有効に寄与するためには、新しく創生される知を習得し、それを利用していく必要があります。21世紀は生涯にわたり学習する時代といえます。したがって、卒業後に生涯学習を円滑に行うために、鹿児島大学時代に勉学の習慣をつけることも皆さんの学習の第2の目標であります。
 
 鹿児島と先ほど紹介した鹿児島大学の母体となった教育機関では、卓越した教育が展開され、若き学徒は、若くして自我を確立し、国内外でどん欲に教養と専門の学芸を習得し、わが国の近代化の推進者へと成長しました。たとえばその中の一つであります、明治2年に、32歳のイギリス医学教育者ウィリアム ウィリスを校長に迎え、創立され、明治10年に西南戦争で廃校となる、西洋医学校においても、極めて短期間しか存在しなかったにもかかわらず、全国から集まった学徒と若き教師との切磋琢磨の中から慈恵会医科大学を創設した高木兼寛をはじめ多彩な英才が育っています。
 
 鹿児島大学に入学された皆さん、無限の可能性を秘めた若くて能力のある皆さんが、このような先人の気風を引き継ぎ、どん欲に学び、それぞれの学習目標を達成し、自我を確立し、自律的に成長し、我々を超え、鹿児島大学の新しい歴史を開くことを期待しています。そして、人々が心豊かで、安心して生活できる社会を築く担い手に成長されることを心より祈念して告辞といたします。
 
平成19年4月6日
鹿児島大学長  
吉 田 浩 己