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平成20年度卒業式告辞(平成21年3月25日)

 

 満開の桜、そして、目にも鮮やかな若葉、まさに春爛漫にして清明の今日、ここに、平成20年度の卒業式・修了式を挙行できますことは、本学にとりまして大きな喜びであります。学部を卒業される2050名の皆さん、大学院を修了される568名の皆さん、まことにおめでとうございます。

 

 ここにご臨席をたまわっております、ご来賓、ご家族、名誉教授、列席の役員、学部長、研究科長、病院長、教職員の皆さまとともに、心からお祝いを申しあげます。

 

 皆さんは、学業に精励されるとともに、ボランティアやサークル活動などに真摯に取り組み、学友と切磋琢磨して人格の向上に努め、充実した学園生活を謳歌されたと思います。また一方、様々な悩みや困難にも直面されたことと思いますが、皆さんはそれらを見事に乗り切って、この日を迎えることができました。皆さんの努力と研鑽に心より敬意を表したいと思います。特に、留学生の皆さんには、生活習慣の違う日本での学業はさぞかし大変であったことでしょう。母国の期待を担い、留学を立派に全うされた皆さんにとって、今、まさに感慨無量であることと思います。今後、鹿児島大学および鹿児島の人々と絆を持ち続けて、鹿児島と母国との架け橋として、おおいに活躍されんことを心より祈念いたします。

 

 鹿児島は北辰斜めにさす、日本列島の南に位置し、アジアの諸地域に開かれ、海と火山と島々からなる豊かな自然環境に恵まれた豊饒な文化を育んだ地であります。鹿児島は、わが国の変革と近代化を推進する過程で、鹿児島中央駅前広場に建立されている「若き薩摩の群像」の若者のように、幾多の困難に果敢に挑戦した、数多くの人材を輩出してきました。鹿児島大学の起源は、1773年(安永2年)に創立された藩学造士館であります。新制鹿児島大学は造士館の名跡と伝統を引き継いだ第七高等学校造士館や明治以降、鹿児島に設置された、さまざまの分野の高等教育機関が昭和24年に、統合し、創立されました。そして、鹿児島の教育的伝統である『進取の精神』が本学に受け継がれました。

 

 鹿児島大学は、「進取の気風にあふれる知の拠点」として、真理を愛し、高い倫理性と社会性を備え、向上心を持って自ら困難に立ち向かい、地域および国際社会で、活躍しうる人材を育成することを教育の基本理念としています。

 

 皆さんは、本学のこの理念に基づき、開設されている共通教育および専門教育の学士課程において、学業に励み、社会人としての豊かな教養と人間性を涵養し、職業人としての基本的専門知識・技能と態度を十分に修得し、また、修士課程および博士課程おいて、真理すなわち物事の本質を貫いている法則を探求するための創造的思考法の基本を修得したことにより、本日、学位記が授与されたのであります。学位記の取得とその過程で修得した人間力は、今後、皆さんの誇りとなり、皆さんの生涯を切り拓いていく力となるものと信じています。指導された教職員の皆さんへの期待をしっかりと受け止めて新たな目標に向かって出発していただきたい。自分の可能性を信じ、自分の夢に向かって果敢に挑戦し、飛躍されることを心から切望します。

 

 皆さんは、この4月から様々な進路を歩まれることになりますが、どの進路を進むにしても、われわれの社会には、少子高齢化、高度情報化、国際化などが急速に進む中、社会保障、環境問題、経済の活力の維持、地域間の格差の広がり、世代をまたがる社会的・経済的格差の固定化への懸念、社会における安全・安心の確保など看過できない諸問題が生じています。国際社会においても、グローバル化に伴う国際競争が激化する一方で、地球環境問題や食料・エネルギー問題など人類全体で取り組まなければならない問題が深刻化しています。また、民族・宗教紛争なども人類の安全を脅かしています。これらの諸問題に立ち向かい、乗り越えるための知恵を如何に生み出すか、如何に実行するかが、今まさに我々一人ひとりに鋭く問われていると思います。また、経済性や利便性といった単一の価値観を過剰に追求する風潮や人間関係の希薄化などの中で、他と調和して共に生きる喜びや、そのために求められる倫理などを含めた価値観をも重視し、人々が心豊かに安心して生活できる社会を実現するため、社会とさまざまな分野で接点をもち、これらの問題解決に果敢に挑戦する若者が求められています。地球的視野で考え、様々な課題を自らの問題として捉え、身近なところから取り組み、持続発展可能な社会づくりに、積極的に、建設的に参加していただきたい。このことが、鹿児島の教育的伝統である「進取の精神」を受け継いだ鹿児島大学で教育を受け、いま、まさに社会へ飛び立つ皆さんに課せられた使命ではないでしょうか。

 

 そして、そのような実践の中で、人間性、社会性、倫理性をさらに豊かに涵養し、生涯にわたり自己の人格の陶冶と自己実現を目指し、主体的参画者として持続可能で豊かな社会の創造に貢献されことを強く希望してやみません。

 

 豊かな自然と豊饒な文化の地である鹿児島での教職員や学友、そして地域における人情味豊かな人々とのふれあいは、若い皆さんの豊かな人格を形成する上で、大きな役割を果たしたに違いないと思っております。皆さんにとって、本学と鹿児島は生涯にわたり、「心の故郷」になるものと思います。

 

 今日の輝かしい門出を迎えることができたのは、皆さんの努力の賜であることは無論でありますが、ご家族の愛情、教職員の励まし、人間的絆とは何かを教えてくれた先輩や友人の心の温かさを忘れず、これからも自己研鑽に努めてもらいたいと思います。

 

 皆さんの健闘を称え、さらなる発展を祈念して、告辞と致します。

 

     平成21年3月25日

鹿児島大学長

吉 田 浩 己