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平成25年度入学式告辞(平成25年4月5日)

130405_h25nyugaku-kokuji.jpg 本日ここに、平成25年度の鹿児島大学入学式が挙行されますこと、誠に慶びに堪えません。新入生の皆さん、鹿児島大学への御入学おめでとうございます。鹿児島大学の全構成員を代表して皆さん一人ひとりの入学を心から歓迎致します。
 今年は、法文学部、教育学部、理学部、医学部、歯学部、工学部、農学部、水産学部、共同獣医学部の9学部に、2,014名の学部学生、また、人文社会科学研究科、教育学研究科、保健学研究科、理工学研究科、農学研究科、水産学研究科、医歯学総合研究科、司法政策研究科、臨床心理学研究科および連合農学研究科の10の大学院研究科に509名の大学院生、さらに61名の外国人留学生を含め、総勢2,584名の新入生を迎えました。
 みごと入学を果たされた皆さんの研鑽と努力に敬意を表し、その志を支えてこられたご家族の皆様には心よりお喜びを申し上げます。

 さて、皆さんが学生生活を送る鹿児島は、日本列島の南に位置し、多くの離島を有し、活火山の桜島や霧島、世界自然遺産の屋久島および生物多様性に富む奄美群島など、後世に残すべき素晴らしい自然環境に恵まれています。また、黒潮と温暖な気候の中で、良質で豊富な農林水産物を産出し、それらを活用した食品産業が集積しており、我が国の「食料供給基地」としての重要な役割を担っています。さらに、アジアと世界の諸地域に開かれた南の玄関口として、海外との交流を通じ異文化の導入を率先して行い、豊かな文化を育んできた地であります。また、我が国の変革と近代化を推進した数多くの人材を輩出してきた地でもあります。皆さんは、このような風土の中で、鹿児島の教育の伝統である「進取の精神」を引き継いだ本学で、自分の夢の実現に向けて、学業に励む事になります。進取の精神とは、 ”自ら困難な課題に果敢に挑戦する精神”であります。英語では、Spirit of Enterpriseと表すことができます。

 鹿児島大学の起源は、240年前の1773年(安永2年)に設立された藩学造士館にさかのぼります。この造士館では、当時の最高水準の学問と教育が実施され、「進取の気性」に富む多くの若者を育て、我が国の歴史の変革と近代化に大きな役割を果たしました。
 明治以降も、ウイリアム・ウイリスを校長とする西洋医学校を始め、造士館の名跡を受け継いだ第七高等学校造士館や、師範学校、農林専門学校、水産専門学校、工業専門学校、医学専門学校などの教育機関が設立され、我が国の発展を支えた多くの専門技術者や教育者を輩出しました。
 また、戦後の1949年にはこれらの高等教育機関の伝統を受け継ぎ、新制の国立鹿児島大学が発足しました。現在では、9つの学部と10の大学院研究科を擁し、約11,000名の学生が在籍する西日本有数の総合大学へと発展してきました。
 これまで、約10万名の若者が、この鹿児島大学のキャンパスで学び、国内はもとより世界の各地で、それぞれの専門的知識と技術を生かし、人類の平和と繁栄・福祉の向上のために大きな足跡を残してきています。
 また、アジアを中心とした多くの留学生が本学で学び、帰国後は母国の発展のために重要な役割を担って活躍をしています。

 本学の「大学憲章」では、“自主自立と進取の精神を尊重し、地域とともに社会の発展に貢献する総合大学をめざす”ことを謳っています。特に教育においては、 “高い倫理性と社会性を備え、向上心を持って自ら困難に立ち向かい、国際社会で活躍しうる人材を育成する”ことを掲げています。
 また、本学には、学生自らが起草した「学生憲章」が制定されています。この学生憲章には、“進取の精神の継承、地球的視野の涵養、互いの友情や思いやりの醸成、積極的社会参加の実践”が謳われ、自らを磨き、未来を拓くことを宣言しています。
 本学は、この大学憲章ならびに学生憲章の精神が学生諸君のキャンパス生活の中で、しっかりと培われ、その事が諸君の人生設計の礎となるように、支援を惜しみません。
 その取組の一つとして、学生諸君が“進取の精神”を自ら培うために、海外研修への支援、ボランテイア活動への支援、「進取の精神」を具現化しチャレンジする取組への支援、さらに、学生諸君の向上心を育て称えるための奨学金制度や表彰制度を整えています。また、学生の主体的な学びと自主性の涵養を目的とする「学習交流プラザ」もまもなく完成します。

 我々は今、様々な課題に直面しています。温室効果に由来する地球環境の変化や自然災害、地球人口の急増と食料資源の創出、新たなエネルギー社会の構築や資源節約の克服のための革新的技術開発、また、貧困・較差・差別・紛争・感染症の脅威などが挙げられ、また、国内的課題として、急速な少子高齢化の進行と労働人口の減少や地域コミュ二ティーの衰退 、新興国の台頭による競争激化と社会の急激な変化、長引く経済の低迷と産業の空洞化、さらに、震災からの復興と再生の取り組みや、国土強靱化のための防災・減災対策、原発事故による先の見えない破局的な爪痕など、様々な課題が立ちはだかっています。私達はこれらの課題をひとつひとつ解決すべく、知恵を出し合い、希望ある未来と安定的かつ持続的な社会の実現に向けて貢献しなければなりません。鹿児島大学は、その責務として“社会の変革と発展にリーダーシップを発揮する人材”の養成を行います。
 3月11日の震災・原発事故から2年の月日が流れました。私達はこの悲惨で苦しい現実を決して風化させること無く、この南九州の地からも、一日も早い復旧と平安な生活を願って、支援を続けなければなりません。本学は、震災直後から、全教職員と学生が、様々な支援の取り組みを行い、被災地の方々の苦難に寄り添う活動を展開してきました。皆さんもこれらの活動を通して、国土の回復への努力と共に、苦難や悲しみの中にある隣人と共に生きる事を学んで戴きたい。
 また、新入生諸君は本学での学びを通して、幅広い教養と専門的知識や技術を修得すると共に、社会との関わりの中での学びを深め、多様な物の考え方、グローバルな視野と行動力、課題発見力、発信力、コミュニケーション力など、社会人としての基礎力をしっかりと身につけて欲しい。
 そして、学ぶ事の楽しさを体験し、質問や疑問に対しては自ら声を発し、課題解決への努力を尽くし、社会へ貢献する姿勢を作り上げていただきたい。
 鹿児島大学では、約2,500名の教職員が在籍し、それぞれの専門的知識と技術を駆使しての先導的な研究が行われています。地域の課題はもちろんのこと、国際的にも高い評価を受けている基礎研究や応用研究、またイノべーションに繋がる研究が展開されています。諸君は、本学で行われている研究活動にも接し、また、世界の変化や科学技術のたゆまぬ進歩に心を踊らせ、世界をリードする研究者としての夢も描いていただきたいと思います。

 これからの学生生活の主役は君たちです。全教職員の惜しみない支援と諸君の先輩たちの心強いサポートの下、未来を見据えた積極的な学びを展開していただきたい。
 最後に、新入生諸君に一つの言葉を提示致します。それは “自分で自分の限界を決めない”と言うことです。“自分で自分の限界を決めない!”。
 無限の可能性を秘めた若くて能力のある皆さん一人ひとりが、鹿児島大学で様々な研鑽を積む中で、新しい自分を発見し、「進取の精神」を引き継ぎ、持続可能な社会の力強い担い手に成長されることを心より祈念して、告辞といたします。

 

平成25年4月5日     

  鹿児島大学長 前田 芳實