トップページ大学紹介平成25年度卒業式・修了式告辞(平成26年3月25日)

平成25年度卒業式・修了式告辞(平成26年3月25日)


140325kokuji.jpg 本日ここに、平成25年度の卒業式・修了式を挙行できますことは、本学にとりまして大きな喜びであります。学部を卒業される1,911名の皆さん、大学院を修了される506名の皆さん、おめでとう。ここにご臨席を賜っております、ご来賓、名誉教授、理事、部局長、教職員の皆さんと共に、心からお祝い申し上げます。また、ご家族の皆様には、心からのお慶びを申し上げますとともに、ここまで様々な面で長年にわたる励ましと支えを戴いたことに対し敬意を表します。
 皆さんは4年間あるいは6年間の大学生活をどのように過ごされましたでしょうか。 学友と切磋琢磨し、学業に精励するとともに、ボランティアやサークル活動、また社会活動などにも真摯に取り組み、学生としての本分を全うし、本日を迎えておられるものと思います。皆さんの日々の努力と研鑽に心からの敬意を表します。留学生の皆さんには、生活習慣の違う日本での学業はさぞかし大変であったであろうと察します。母国の期待を担い、留学を立派に全うされた皆さんにとって、今、まさに達成感に満たされておられることでしょう。今後も、鹿児島大学および鹿児島の人々との絆を保ち、鹿児島と母国との架け橋として、大いに活躍されますことを心より祈念いたします。
 皆さんは、この卒業を機に、社会人としての新たなスタート・ラインに立ち、それぞれの専門性を実社会で生かし、自分の人生を切り拓いていくことになります。同時にまた、国民は皆さんに対し、社会の牽引者として若さと行動力を発揮されることに大きな期待を寄せています。
 現代社会は、地球的レベルで、また、国内においても、様々な課題を抱えています。世界的な人口急増と食料問題、地球温暖化と環境問題や自然災害、地域紛争による破壊や難民の急増、安定的エネルギーの確保、国を越えての感染症の脅威など、また、国内では、未曾有の財政赤字、産業の空洞化の進行、超高齢化社会の到来と雇用や労働環境の変化、さらに若年貧困の問題、そして、決して忘れてはならない東日本大震災とその復興の問題など、解決すべき課題が山積しています。一方、生命科学、基礎物理学、宇宙・天文学、情報科学の発展はめざましく、それらの成果は新たなイノベーションの創出への夢を広げてくれます。諸君は、鹿児島大学で修得した知識や技術に加え、課題解決力、企画力、コミュニケーション力、ならびにリーダーシップを遺憾なく発揮し、これからの日本社会ならびに国際社会の発展に力強く貢献して戴きたい。
 鹿児島大学は、“進取の気風にあふれる総合大学”を目指しています。進取の気風とは“自ら困難な課題に果敢に挑戦する態度”のことで、本学に所属する学生、教職員のすべての構成員が、それぞれの立場と持ち場で、新たな課題に挑戦する気風にあふれたキャンパスを意味します。
 およそ150年前、この薩摩の地から19名の若者が西洋の進んだ学問や科学技術、産業、教育また社会の仕組みなどを学ぶために、幕府の監視を掻い潜り、密航してイギリスへ留学しました。異国での様々な困難を乗り越え、帰国後は、我が国の近代化に大きな足跡を残しました。鹿児島大学は郷土の先人たちのこのチャレンジ精神に学び、“進取の精神”を備えた人材を育成することを教育の基本理念としています。
 本学の大学憲章では、鹿児島大学は、“①学生の潜在能力の発見と適性の開花に努めること、②幅広い教養教育と高度な専門教育を行うこと、③真理の探求と高い倫理性・社会性を涵養すること、④進取の精神を養い、国際社会で活躍しうる人材を育成すること”等を謳っています。また、学生諸君が作り上げた本学の学生憲章では、“鹿児島大学の学生であることを誇りとし、学ぶことのできる環境に感謝し、桜島のように気高く、時には激しさを持ち、自らを磨き、進取の精神を継承する”ことを宣言しています。皆さんは大学憲章並びに学生憲章に掲げてある理念に基づき、本学での学びを修め、自らの人間力と専門性を深めてきました。このような鹿児島大学での学びを誇りとし、自信と勇気を持って、日本および国際社会の様々な課題に果敢に挑戦し、世界の平和・福祉と繁栄のためにひとりひとりの役割を果たして下さい。
 これから、社会の最前線に立つ諸君は、社会の課題に真摯に向き合うと共に、「困難を乗り切る力」・「粘り抜く力」を、これまで以上に培う為の努力が求められます。人生は、順風満帆の時ばかりではありません。むしろ、絶えず大きな課題や困難に直面します。また、予期せぬ出来事や思い通りに事が進まない事態にもしばしば遭遇します。このような状況に向き合った時、迷ったり、思い悩んだり、しり込みしたり、思わず逃げ出したりするのが私たちの偽らざる姿ではないでしょうか。であるからこそ、我々は自分の弱さを認識しつつ、困難な状況を切り開くための勇気を育て、また、逆風の中でも、「前に進む努力」を積み重ねなければなりません。この努力の積み重ねが、目の前の状況を切り拓く為の新たな力と知恵を生み出し、皆さんの自信と勇気を育み、進取の精神を発揮する力を育てるのです。「自分の弱さを知り、自分の弱さを磨き鍛え、自分の弱さを誇る」、そのような歩みを通して、逆風に立ち向かう力を自ら培って戴きたい。
 二十歳(はたち)の年代は、人生で最も成長し、充実し、上昇勾配の最も高い時であります。自らの「努力や研鑽」と共に、「新しい経験や出会い」が、皆さんの人生に厚みと深みと重みをもたらし、みなさん自身の心を高めるものとなります。焦らず、諦めず、地道な努力を重ね、自分の役割に邁進してください。
 また、私たちが責任ある社会人として忘れてはならないことのひとつに、「ハンディを担い、それを克服しながら生活を拓こうと努力している多くの方々がおられるということ」であります。心身の発達に障害を伴っている人、高齢のため支援を必要とする人、災害で生活拠点を奪われた人、育児への支援が必要な人、また、教育の機会に恵まれなかった人、等々、皆さんの力を必要としている多くの方がおられます。本学での学びが、皆さんの手助けを必要としている人々への力として積極的に生かされることを期待します。
 本日の卒業式において、皆さんの社会への勇躍を祈念して、この会場に集います全員で、「北辰斜めに」を力強く歌い、皆さんを社会へ送り出したいと思います。「北辰斜めにさすところ」は100年前の1915年に作詞作曲され、我が学舎(まなびや)は、北極星が北の夜空に低く斜めに見える鹿児島にあることを表現しているものであります。この「北辰斜めに」は旧制第七高等学校生と鹿大生に100年に亘って歌い継がれてきました。鹿大生の魂のふるさととも言うべき不朽の名歌「北辰斜めに」を切磋琢磨した仲間と斉唱し、本学の卒業生として、地域社会と国際社会の豊かな発展のために生涯にわたり挑戦する決意を新たにしていただきたいと思います。
 皆さんの健闘を称え、さらなる発展を祈念して、告辞と致します。

 

平成26年3月25日    
鹿児島大学長 前田 芳實