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平成26年度入学式告辞(平成26年4月7日)

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 本日ここに、平成26年度の鹿児島大学入学式が挙行されますこと、誠に慶びに堪えません。
 新入生の皆さん、鹿児島大学への御入学おめでとうございます。鹿児島大学の全構成員を代表して皆さん一人ひとりの入学を心から歓迎致します。
 今年は、本学の9つの学部に、2,010名の学部学生、また、10の大学院研究科に563名の大学院生、総勢2,573名の新入生を迎えました。みごと入学を果たされた皆さんの研鑽と努力に敬意を表し、その志を支えてこられたご家族の皆様には心よりお喜びを申し上げます。
 さて、皆さんが学生生活を送る鹿児島は、日本列島の南に位置し、多くの離島を有し、活火山の桜島や霧島、世界自然遺産の屋久島および生物多様性に富む奄美群島など、後世に残すべき素晴らしい自然環境に恵まれています。また、この地はアジアと世界の諸地域に開かれた南の玄関口として、海外との交流を通じ異文化の導入を率先して行い、豊かな文化や学術を育くみ、我が国の変革と近代化を推進した数多くの人材を輩出してきた地でもあります。皆さんは、このような風土の中で、鹿児島の教育の伝統である「進取の精神」を引き継いだ本学で、自分の夢の実現に向けて、学業に励むことになります。進取の精神とは、“自ら困難な課題に果敢に挑戦する精神”であります。
 鹿児島大学の起源は、240年前の1773年に設立された藩学造士館にさかのぼります。この造士館では、当時の最高水準の学問と教育が実施され、「進取の気性」に富む若者を育て、我が国の歴史の変革と近代化に大きな役割を果たしました。明治以降も、造士館の名称を受け継いだ第七高等学校造士館や、師範学校、農林専門学校、水産専門学校、工業専門学校、医学専門学校などの教育機関が設立され、我が国の発展を支えた多くの専門技術者や教育者を輩出しました。また、戦後の1949年にはこれらの高等教育機関の伝統を受け継ぎ、新制の国立鹿児島大学が発足しました。現在では、9つの学部と10の大学院研究科を擁し、約11,000名の学生が在籍する西日本有数の総合大学へと発展してきました。これまで、10万名を超える若者が、この鹿児島大学のキャンパスで学び、国内はもとより世界の各地で、それぞれの専門的知識と技術を生かし、人類の平和と繁栄・福祉の向上のために大きな足跡を残してきています。
 本学の「大学憲章」では、“自主自立と進取の精神を尊重し、自ら困難に立ち向かい、地域社会・国際社会で活躍しうる人材を育成する”ことを掲げています。また、学生自らが起草した「学生憲章」には、“①進取の精神の継承、②地球的視野の学び、③友情や思いやりの醸成、④積極的社会参加の実践”が謳われ、自らを磨き、未来を拓くことを宣言しています。本学は、学生の潜在能力の発見と適性の開花に努めることを教育の基本理念とし、本学での学びが諸君の人生設計の礎となるように、支援を惜しみません。その取組の事例として、学生諸君が“進取の精神”を自ら培うために、①海外留学ならびに海外研修への支援、②ボランテイア活動への支援、③「進取の精神」を具現化しチャレンジする取組への支援、④就職・キャリアデザインの支援、さらに、⑤学生諸君の向上心を育て称えるための奨学金制度や表彰制度を整えています。また、⑥学生が安心して学べるキャンパス環境を整えるための努力を行っています。
 我々は今、様々な課題に直面しています。温室効果に由来する地球環境の変化や自然災害、地球人口の急増と食料資源の創出、新たなエネルギー社会の構築や資源節約の克服のための革新的技術開発、また、貧困・較差・差別・紛争・感染症の脅威や新たな冷戦の懸念などが挙げられ、また、国内的課題として、急速な少子高齢化の進行と労働人口の減少や地域コミュ二ティーの衰退 、新興国の台頭とグローバル化に伴う社会の急激な変化、長引く経済の低迷と産業の空洞化、さらに、東日本大震災からの復興と再生の取り組みや、国土強靱化のための防災・減災対策、原発事故による先の見えない破局的な爪痕など、様々な課題が立ちはだかっています。私達はこれらの課題に対して、知恵を出し合い、希望ある未来と安定的かつ持続的な社会の実現に向けて貢献しなければなりません。鹿児島大学は、その責務として“社会の変革と発展にリーダーシップを発揮する人材、グローバル社会で活躍する人材、また、イノベーションの創出に貢献する人材の養成を行います。新入生諸君は、本学での学びを通して、幅広い教養と専門的知識や技術を修得すると共に、社会との関わりの中での学びを深め、多様な物の考え方、グローバルな視野と行動力、課題発見力、発信力、コミュニケーション力や粘り抜く力、困難を乗り越える力など、社会人としての基礎力をしっかりと身につけて欲しい。
 新入生諸君は、さっそく本日より、自分の将来設計を描く作業に取り組んでください。諸君は自分の将来像を描いて、それぞれの学部を選んでいます。今日からは、より具体的な目標を定め、その目標に向かって将来設計を描かなければなりません。そのためには、共通教育や専門教育課程の幅広い知識の修得はもちろんのこと、日本の出来事・世界の出来事、学問や科学技術の進歩に目を見張り、より多くの書物に触れ、思索を重ねることが求められます。また、友や教職員との議論も深め、“①社会が自分に何を求めているか、②自分は社会に対してどのような貢献ができるか、③人生にどのように向き合うべきか”など、自分のなすべき目標をつかむ努力をしなければなりません。一人ひとりが地域社会・国際社会に貢献できる自分の道を探し、その目標を達成できるように、本学での学びを深めて下さい。そして、学ぶ事の楽しさを体験し、質問や疑問に対しては自ら声を発し、課題解決への努力を尽くし、社会へ貢献する姿勢を作り上げていただきたい。
 鹿児島大学では、約2,500名の教職員が在籍し、それぞれの専門的知識と技術を駆使しての、先導的な研究が行われています。地域の課題はもちろんのこと、国際的にも高い評価を受けている基礎研究や応用研究、またイノベーションに繋がる研究が展開されています。諸君は、本学で行われている研究活動にも接し、また、世界の変化や科学技術のたゆまぬ進歩に心を踊らせ、世界をリードする研究者としての夢も描いていただきたいと思います。これからの学生生活の主役は君たちです。全教職員の惜しみない支援と諸君の先輩たちの心強いサポートの下、未来を見据えた積極的な学びを展開していただきたい。
 最後に、新入生諸君に一つの言葉を提示致します。それは “自分で自分の限界を決めない”と言うことです“自分で自分の限界を決めない!”。弱そうに見える自分でも、困難に立ち向かう強い意思と勇気があれば、思わぬ力が発揮されるものであります。空に舞う凧は、破れてしまいそうな薄い紙でも、向かい風を受けることで高く昇るのです。無限の可能性を秘めた若くて能力のある皆さん一人ひとりが、鹿児島大学で様々な研鑽を積む中で、新しい自分を発見し、「進取の精神」を引き継ぎ、持続可能な社会の力強い担い手に成長されることを心より祈念して、告辞といたします。

 

平成26年4月7日    
  鹿児島大学長 前田芳實