トップページ大学紹介平成19年度卒業式告辞(平成20年3月25日)

平成19年度卒業式告辞(平成20年3月25日)

 桜が咲き始め、大学の植物園の木々の新芽も目に鮮やかな今日、ここに、平成19年度の卒業式・修了式を挙行できますことは、本学にとりまして大きな喜びであります。学部を卒業される2064名の皆さん、大学院を修了される535名の皆さん、まことにおめでとうございます。
 
 ここにご臨席をたまわっております、ご来賓、名誉教授、ご家族、ご列席の理事、各部局長、研究科長、教職員の皆さまとともに、心からお祝い申しあげます。
 
 卒業生、修了生の皆さんは、学習や研究に真摯に取り組まれるとともに、ボランティア活動やサークル活動などに参加し、学友や先輩や教員と熱い議論をするなど、楽しい学園生活を謳歌されたと思います。また一方、様々な悩みや困難にも直面されたことと思いますが、皆さんはそれらを見事に乗り切って、この日を迎えることができました。皆さんの努力と研鑽に心より敬意を表します。特に、留学生の皆さんには生活習慣の違う日本で、学園生活を送り、学位論文をまとめることはさぞかし大変だったろうと思います。母国の期待を担い、留学を立派に全うされた皆さんにとっては、感慨もひとしおと推察いたします。この貴重な体験を活かして、今後も鹿児島大学の学生や教職員および鹿児島の人々と絆を持ち続けて、母国、また、世界において活躍されることを心より祈念いたします。
 
 鹿児島は日本列島の南に位置し、アジアの諸地域に開かれ、海と火山と島々からなる豊かな自然環境に恵まれ、豊かな文化を育んだ地であります。厚い人情に溢れる鹿児島の人々とのふれあいは、若い皆さんの豊かな人格の形成に大きく貢献したに違いないと確信しています。皆さんにとって、鹿児島は生涯、第二の故郷、心の故郷になるに違いないと思います。鹿児島は、わが国の変革と近代化を推進する過程で、多くの困難に果敢に挑戦する人材を育成してきました。その象徴の一つとして、鹿児島中央駅前広場に文化勲章受賞者の中村晋也鹿児島大学名誉教授により創作され建立されている「若き薩摩の群像」があります。あの群像には高い志をもった薩摩の若者の気概を見ることができます。明治以降にも鹿児島にはさまざまの分野の高等教育機関が設置され、この教育的伝統と基盤が受け継がれてきました。そして昭和24年に国土のバランスある発展を意図して新制国立大学が配置されることになり、それぞれ長い歴史を刻んだ鹿児島の高等教育機関は包摂され、新制鹿児島大学が設置されました。鹿児島大学は使命と存在意義を再確認し、広く社会から支持・支援される大学として、本学の目指すべき基本的目標を明らかにするため、これまであった大学の基本理念の核となる「鹿児島大学憲章」を学内外の叡智を結集して作成し、平成19年11月15日の第59回の開学記念日に、制定しました。大学憲章の前文では、「鹿児島大学は鹿児島の地理的特性と教育的伝統を踏まえ、学問の自由と多様性を堅持しつつ、自主自律と進取の精神を尊重し、地域とともに社会の発展に貢献する総合大学をめざす」ことを謳い、鹿児島大学の基本理念を学内外に向かって明らかにしました。地域社会貢献の項目では、鹿児島大学は南九州を中心とする地域の産業の振興、医療と福祉の充実、環境の保全、教育・文化の向上など、地域社会の発展と活性化に貢献することを謳い、国際社会貢献の項目では、鹿児島大学は、アジアや太平洋諸国との連携を深め、研究者や学生の双方向交流および国際共同研究・教育を推進し、人類の福祉、世界平和の維持、地球環境の保全に貢献することを謳っています。教育の項目では、鹿児島大学は幅広い教養教育と高度な専門教育と行うとともに、地域の特性をいかした進取の気風を養い、真理を愛し、高い倫理性と社会性を備え、向上心を持って自ら困難に立ち向かい、国際社会で活躍しうる人材を育成することを力強く宣言しました。
 
 皆さんは、鹿児島の教育的伝統を踏まえた鹿児島大学の教育基本理念に基づき、設置、開設された共通教育と専門教育課程のなかでの勉学の結果、それぞれに設けている高い教育目標に到達されました。社会人としての教養と職業人として専門的知識・技能を十分に修得されたと判定され、本日、学位が授与されたのであります。皆さんを指導された鹿児島大学の教職員の皆さんへの思いと期待をしっかりと受け止めて新たな目標に向かって出発していただきたい。鹿児島大学で切磋琢磨し自らの学習目標を達成されたことは、これから一生涯を通じて、皆さんの誇りとなるものと確信しております。
 
 私ども、鹿児島大学に集うすべての教職員と在学生は一致協力し、鹿児島大学憲章の実現に向けてベクトルを一つにし、鹿児島大学発展の可能性を限りなく追求していく決意であります。どうか卒業生、修了生の皆さんも、自分の可能性を信じ、自分の夢に向かって果敢に挑戦し、勇躍されることを心から切望します。
 
 皆さんはこの4月から様々な進路を歩まれることになりますが、どの進路を進むにしても、われわれの社会は、環境問題、エネルギー問題、高齢化問題や政治不信、経済的モラルの欠如、などなど看過できない諸問題を抱えていることを忘れることはできません。皆さんは意識的に社会とさまざま分野で接点をもち、これらの問題解決にも果敢に挑戦していただきたいと考えます。人々が心豊かに安心して生活できる社会を実現するための夢と決意をもち、社会の持続的発展を支え、社会の改善に積極的に、建設的に参加していただきたいのです。そして、そのような実践の中で、鹿児島大学の中で身につけた人間性、社会性、倫理性をさらに豊かに涵養し、心を磨き、「世の一隅を照らす人物」になられんことを、強く希望してやみません。
 
 今日の輝かしい門出を迎えることができたのは、皆さんの努力の賜であることは無論でありますが、ご家族の愛情、大学の教職員の励まし、人の心の温かみや人間的絆とは何かを教えてくれた先輩や友人を忘れず、これからも自己研鑽に努めてもらいたいと思います。
 
 鹿児島大学は、地域に根差した知の拠点形成をめざして、教職員一同、一層邁進していく所存です。皆さんの健闘を称え、さらなる発展を祈念して、告辞と致します。
 
平成20年3月25日
 
鹿児島大学長  
吉 田 浩 己