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令和7年度 鹿児島大学入学式 告辞(令和7年4月7日)

 本日ここに、御来賓各位の御臨席を賜り、理事、副学長、部局長、教職員と共に一同に集い、鹿児島大学入学式を執り行うことができますことを、大変喜ばしく思います。学部学生1,924名、大学院学生621名、総勢2,545名の若き希望に溢れた皆様の一人一人を心から歓迎いたします。この中には18カ国に及ぶ海外の国々からの留学生76名が含まれています。入学を果たされた皆様のこれまでの日頃の研鑽と努力に敬意を表します。新入生の皆様、入学おめでとうございます。また、その志を支えてくださった、ご家族の皆様、友人、ご指導いただいた先生方など、ご支援いただいた方々に深く感謝しつつ、皆様にも心よりお慶び申し上げます。

 さて、本学の起源は、島津家25代、薩摩藩第8代藩主の島津重豪(しげひで)が250年前に創始した「藩学造士館」にさかのぼります。その流れを汲んだ第七高等学校造士館のほか高等農林学校、師範学校や水産専門学校などを統合し、新制の国立鹿児島大学として開設されたのが昭和24年のことでした。昭和30年には医学部と工学部を有した県立鹿児島大学が国立移管のうえ統合され、現在では、法文学、教育学、理学、医学、歯学、工学、農学、共同獣医学、水産学の合わせて9つの学部と、人文社会科学、教育学、保健学、理工学、農林水産学、医歯学、臨床心理学、共同獣医学、連合農学の9つの大学院研究科、その他に附属病院、附属図書館、附属学校・園、総合研究博物館、ヒトレトロウイルス学共同研究センターや種々の研究センターなどの施設を持ち、約1万数百人の学生・生徒と約4千人の教職員を擁する我が国を代表する総合大学であり、今日までに京セラ創始者の故稲盛和夫氏のような大先輩を含めて12万人を超える有為の人材を社会に送り出してまいりました。このように、歴史と伝統のある鹿児島大学に皆さんをお迎えできますことは慶びに堪えません。

 本学は、南西諸島を含む南北600kmに及ぶ広い県土と、そこに受け継がれてきた豊かな自然、固有の文化・伝統をキャンパスにして、起源となる藩学造士館の「進取の気風」を継承し、困難な課題にも果敢にチャレンジする「進取の精神」を備えた若者を育成してきました。本学のホームページに掲載していますが、日本経済新聞によるイメージ調査でも、採用を増やしたい大学、大学の取り組み、そして大学の地域貢献度で高く評価されています。私たち教職員も、これらの評価に裏付けられた教育力を持って、皆さんのこれからの学生生活を充実したものにできるよう、力を合わせて応援していきたいと決意を新たにしています。

 さて、皆さんは、本日から鹿児島大学で、大学生あるいは大学院生として、かけがえのない学生生活を送ることになります。そのような皆さんに2つのことを言っておきたいと思います。

 はじめに、皆さんはこれからご自身の専門分野を深く学ぶことになります。大学や大学院では、小学校や中学校、高校のように、答えのある課題を如何に上手に解くかを競うような学びはありません。学部によっては認証を受けたカリキュラムが用意されているものもありますが、皆さんがこれから学ぶことは単に試験の解答を求めるためのものではありません。もちろん、大学では高度な専門知識を学びますが、皆さんは大学で学んだことを活かして、社会に貢献すると共に、10年後、30年後、そしてそれ以降の未来を創っていかねばなりません。そして現在、国内外を見渡すと、世界情勢は混沌としており、貧困や食糧危機、学校で学ぶことどころか、生きることさえ当たり前ではない地域があり、地球温暖化による環境や生態系への影響、地震や水害などの自然災害など、多くの課題があります。今、急いで解決しなければならないこと、未来に向かって今始めなければならないこと、私たちには、100年後、あるいはもっと遠い未来にどのような社会、どのような地球を残すのか、責任があります。今日から始まる大切な学生生活で、専門知識はもとより、何事にも関心を持って幅広い知識を得るとともに課題を見出す力を養い、新しい社会や世界のあり方を考え、課題を解決する「何か」を創り出す力を養ってください。

 二つ目は、自分自身を大切にするとともに、友人や仲間たちの一人一人を大切にして下さい。これから皆さんは、より広い世界で、楽しいこと、悲しいこと、さまざまな経験を積むことと思います。時には気持ちが落ち込むこともあるでしょう。しかし、あなた方一人一人は、この世でたった一人の「あなた」というかけがえのない存在です。そして、その唯一の「あなた」、ありのままの「あなた」を大切に想う人が必ずいるということ、そのことを忘れずに、自分を大切にして下さい。そして、そのようなたった一人のかけがえのない「あなた」と同じ存在が、今、あなた方の隣や周りにいます。この会場に集まった「あなた」の周りにいる一人一人にも、そのお一人お一人を大切に想う家族や友人がいます。どうか、自分自身を大切にするとともに、友人や仲間たちの個性、異なった経験や考えをも尊重して、同じ時間を過ごす友人や仲間たちと大いに語り、共に学び、お互いを高め合い、鹿児島大学での学生生活を謳歌して下さい。

 鹿児島大学では奨学金制度に加えて、独自のプログラムや事業を用意しています。例えば、「かごしまキャリア教育プログラム」では、修了した学生を採用選考の過程で優遇する制度を地元企業22社において開始しています。また、JAL、JACと提携した「地域密着型パイロット人材創出プログラム」では、本学の卒業生・修了生にパイロットになる機会が与えられます。本学が準備しているプログラムや事業を大いに活用してください。

 本学は、在学生、卒業生、教職員、そして関係の皆様すべてが「誇れる」大学であり、さらに、社会の「憧れの」大学として、また、「地域に根ざしてグローバルに展開する」世界の鹿児島大学としての存在感を確立するために、皆さんと一緒に、更なる磨きをかけていきたいと思います。皆さん一人一人が、卒業時に心の底から鹿児島大学に来て、この広いキャンパスで学んで良かったと思えるように、そしてみなさんの心の中に「鹿児島大学の誇り」がしっかりと形づくられていることを期待しています。

 最後に、教職員一同、新入生の皆様の輝かしい未来を共に創っていくことを重ねてお約束して、新入学の皆様及び支援者の皆様へのお祝いの式辞といたします。

令和7年4月7日
鹿児島大学長 井戸 章雄