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平成30年度卒業式・修了式告辞(平成31年3月25日)

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 本日ここに、平成30年度の卒業式・修了式を挙行できますことは、本学にとりまして大きな喜びであります。学部を卒業される1,984名の皆さん、大学院を修了される548名の皆さん、おめでとう。
 ここにご臨席を賜っております、ご来賓、名誉教授、列席の理事、部局長、教職員の皆さんと共に、心からお祝い申し上げます。
 ご家族の皆様には、心からのお慶びを申し上げますとともに、ここまで様々な面で長年にわたる励ましと支えを戴いたことに対し、鹿児島大学の教職員を代表して心よりお礼を申し上げます。
 
 皆さんは四年間あるいは六年間の大学生活をどのように過ごされましたでしょうか。学友と切磋琢磨し、学業に精励するとともに、ボランティアやサークル活動、また社会活動や海外研修などにも真摯に取り組み、学生としての本分を全うし、本日を迎えているものと思います。皆さんの日々の努力と研鑽に心からの敬意を表します。
 留学生の皆さんには、生活習慣の違う日本での学業はさぞかし大変であったであろうと察します。母国の期待を担い、留学を立派に全うされて、今、まさに達成感に満たされておられることでしょう。今後も、鹿児島大学および鹿児島の人々との絆を保ち、鹿児島と母国との架け橋として、大いに活躍されますことを心より祈念いたします。
 卒業生・修了生の諸君は、この卒業を機に、社会人としての新たなスタート・ラインに立ち、それぞれの専門性を実社会で生かし、自分の人生を切り拓いていくことになります。同時にまた、国民は皆さんに対し、社会の牽引者として若さと行動力を発揮されることに大きな期待を寄せています。
 
 これから、社会の最前線に立つ諸君は、社会の課題に真摯に向き合うと共に、「困難を乗り切る力」・「粘り抜く力」を培う努力が、これまで以上に求められます。 人生は、順風萬帆の時ばかりではありません。むしろ、絶えず大きな課題や困難に直面します。また、予期せぬ出来事や思い通りに事が進まない事態にもしばしば遭遇します。このような状況に向き合った時、迷ったり、思い悩んだり、尻込みしたり、思わず逃げ出したりするのが私たちの偽らざる姿ではないでしょうか。
 そうであるからこそ、我々は自分の弱さを認識しつつ、困難な状況を切り開くための勇気を育て、また、逆風の中でも、「前に進む努力」を積み重ねなければなりません。 この努力の積み重ねが、目の前の状況を切り拓く為の新たな知恵と力を生み出し、皆さんの自信と勇気を育む事になるのです。
 大空に舞う凧は向かい風で上昇し、海原を航海するヨットは向い風のときこそ、そのパフォーマンスを発揮します。皆さんは逆風に立ち向かう力を自ら培い、責任ある社会人として飛翔することを確信しています。
 
 さて、皆さんが卒業して社会に出ると新しい元号がスタートします。平成の時代はベルリンの壁の崩壊に続きソビエト連邦が消滅し、国際社会は冷戦の雪解けに向かうかに思われましたが、民族間・宗教宗派の対立、それに起因する紛争・テロ・破壊が頻発し、世界は動揺を続けてきました。また、国内ではバブルの崩壊に始まり、度重なる自然災害に見舞われ、国民は国土の復興への願いを込めて、艱難辛苦の中で、支援と社会再生の努力を重ねてきました。
 一方、スマートフォンやロボットに象徴されるごとく、ITやAI技術の革新は目覚しく、私達の生活様式も大きく変わりつつあります。また、世界的には、ヒト・モノ・カネが国境を越えて自由に行き来する“グローバリズム”の進行と貧富の格差拡大や難民の急増といったグローバリズムによる弊害が徐々に無視できなくなりました。その結果、世界の主要国での“反グローバリズム”・“自国第一主義”や“ポピュリズム”の高まりは、これまで、築かれてきた国際協調にもほころびを引き起こしつつあります。
 このような世界の動きの中で、国連では、今の国際社会が2030年までに達成すべき持続可能な開発目標“Sustainable Development Goals”を掲げています。この持続可能な開発目標には17の課題が掲げられ、“貧困、飢餓、健康・福祉、質の高い教育とジェンダー平等、水の確保と衛生などの開発途上地域の緊急課題”と共に、“気象変動への具体的対策、豊かな海と陸の保全、平和で包摂的な社会の構築、グローバル・パートナーシップの推進”なども挙げられ、今、我々が遭遇している全地球的課題への目標が掲げられています。私たちはIT・AI技術や生命科学の技術の進歩への貢献と共に人類の平和と福祉の向上に向けての行動も起こさねばなりません。 諸君は新しい時代を作っていくものとして、鹿児島大学で修得した知識や技術に加え、課題解決力、企画力、コミュニケーション力、ならびにリーダーシップを遺憾なく発揮し、これからの日本社会ならびに国際社会の発展に力強く貢献して戴きたい。
 
 皆さんの真正面に “進取の気風にあふれる総合大学”との本学の理念が掲げてあります。進取の気風とは、“自ら困難な課題に果敢に挑戦する態度”のことです。本学の大学憲章では、学生、教職員のすべての構成員が、それぞれの立場と持ち場で、新たな課題に挑戦する進取の気風に溢れたキャンパスを作ることを宣言し、学生諸君が作り上げた学生憲章でも、“学ぶことのできる環境に感謝し、桜島のように気高く、時には激しさを持ち、自らを磨き、進取の精神を継承する”ことを宣言しています。
 また、本学の“進取の気風広場”には、稲盛和夫名誉博士の立像が設置されています。稲盛和夫名誉博士からの学生へのメッセージとして、「どんな境遇に遭遇しようとも どれほど厳しい環境に置かれようとも 挫けることなく 常に明るい希望を持ち 地道な努力を一歩一歩たゆまず続けていくならば 自分が思い描いた夢は 必ず実現する」との銘文が掲げられています。これは、卒業する皆さんへの大いなる”はなむけ”の言葉でもあります。本学で培った「進取の精神」の思いを卒業後も育て続けて、日本および国際社会の様々な課題に果敢に挑戦し、世界の平和・福祉と繁栄のために一人ひとりの役割を果たして下さい。
 
 本日の卒業式において、皆さんの社会への勇躍壮途を祈念して、ここに集います全員で、「北辰斜めに」を力強く歌い、皆さんを社会へ送り出したいと思います。
 この「北辰斜めに」は、旧制第七高等学校生と鹿大生の間で百年に亘って歌い継がれてきました。鹿大生の魂のふるさととも言うべき不朽の名歌「北辰斜めに」を切磋琢磨した仲間と斉唱し、本学の卒業生として、地域社会と国際社会の豊かな発展のために生涯にわたり挑戦する決意を新たにしていただきたいと思います。
 皆さんの健闘を称え、さらなる発展を祈念して、告辞と致します。
 
平成31年3月25日
鹿児島大学長 前田芳實