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平成31年度入学式告辞(平成31年4月5日)

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 新入生の皆さん、鹿児島大学への入学、おめでとうございます。また、ご臨席賜りましたご家族をはじめ全ての関係の方々にも、お祝いを申し上げます。鹿児島大学教職員一同を代表しまして、皆さんを心より歓迎いたします。
 本日は、あいにくの雨模様のお天気ですが、ここ鹿児島においては祝い事の際の雨を「島津雨」と言って吉兆のしるしとされています。
 さて、春爛漫、緑豊かな美しい本学のキャンパスと鹿児島の街並み、そして桜島も、皆さんを温かく迎え入れているように感じます。
 
 今年度は、本学の9つの学部に1,964名の学部学生、また、9つの大学院研究科に576名の大学院生、総勢2,540名の新入生を迎えました。このうち68名の海外からの留学生を迎えています。入学を果たされた皆さんの研鑽と努力に敬意を表し、その志を支えてこられた関係の皆様には心よりお喜びを申し上げます。
 
 現在、鹿児島大学は、9つの学部と9つの大学院研究科を擁し、約九千名の学部学生と約二千名の大学院生(うち留学生約三百名)、併せて約一万一千名の学生が在籍しています。学生数から見ましても、九州においては九州大学に次いで大きな南九州における最高学府として存在しますのが鹿児島大学です。鹿児島大学の起源は、江戸時代の1773年に設立された旧薩摩藩・藩学造士館にさかのぼりますが、現在の新制大学としての形を整えましたのは、昭和二十四年・1949年のことです。明治以降に設立された旧制第七高等学校造士館をはじめ各種の高等専門学校を統合して発足した新制国立鹿児島大学としての歴史は、今年でちょうど七十周年の節目を迎えます。また、入学生諸君は平成最後の入学生となり、新たな令和の年号とともに鹿児島大学に新しい世代として風を吹き込むことになった栄誉ある学年となりました。
 
 さて、本学の大学憲章では、「自主自律と進取の精神を培い、自ら困難に立ち向かい、地域社会や国際社会で活躍しうる人材を育成する」と謳っています。
 
 四半世紀前に本学学長を務められた井形昭弘先生は、平成五年に本学ご退職を機にまとめられたご著書には、今日の本学の目指す方向性を示されています。著書の題名は「地域と大学 ―限りなくローカルな問題を限りなくインターナショナルな舞台へー」であり、そこには「地域と大学は運命共同体」との思いから、「東大や京大と同じことをやっては格差がつく。地域の特性を生かし、鹿児島のことに関してはどこにも負けない分野を持った魅力ある大学でなければならない。」と、鹿児島大学が目指すべき方向性を明快な考え方で示しておられます。そのためには、鹿児島に愛着を持った教授陣を集めることや産学協同の勧めを説かれ、市民さらには障害者に対しても開かれた生涯教育をはじめとした大学の構想へと広げられています。日本人の教官や学生にも国際人としての素養が必要とされる「大学の内なる国際化」を進め、国際的発信を行う真のグローカル化を進めるべきであると述べられています。また、鹿児島の地が生んだ初代文部大臣・森有礼(ありのり)に思いを馳せ、「文教政策の軽視は日本の将来の命運に関わる」と明治政府の教育へのきわめて積極的な取り組みと森有礼の先見性に注目されています。これらの井形先生の思いは、四半世紀を経て、私が学長としての所信に掲げております「南九州から世界に羽ばたくグローカル教育研究拠点・鹿児島大学」のまさに鑑(かがみ)とすべき内容です。
 
 さて、皆さんが学生生活を送るこの鹿児島は、古くからアジアと世界の諸地域に開かれた南の玄関口として、海外との交流を通じ異文化の導入を率先して行い、豊かな文化や学術を育くみ、昨年のNHK大河ドラマ「西郷どん」でも取り上げられました我が国の変革と近代化を推進した西郷隆盛や大久保利通など、数多くの人材を輩出してきた地でもあります。 皆さんは、日本初の認定を受けた世界自然遺産・屋久島や世界文化遺産「明治日本の産業革命遺産」、さらには世界自然遺産を目指す奄美群島を含む南九州から南西諸島などの離島を含む南北600キロを本学のキャンパスとして、そこにある自然・歴史・風土・産業を土台として、自分の夢の実現に向けて、学業に励むことになります。 これらを背景とした地域に学ぶことは何物にも代えがたい、人生の土台を形成させてくれるものと思っています。そのためにも、学生の皆さんに対しては教育プログラム「地域人材育成プラットフォーム」を用意しています。そのカリキュラムの起点となる科目「大学と地域」は新入生全員に学んでいただきます。
 
 さらに、新入生諸君には、在学中に海外に出る体験をすることを、強く勧めたいと思います。本学は、海外研修や留学を支援する制度の充実を図っており、そのひとつとして、「鹿大『進取の精神』支援基金」があります。この基金は、県内の企業や卒業生の皆様にご寄附をお願いし、学生・留学生支援や研究者支援、地域貢献活動等の支援を目的に創設されました。昨年度は、この基金をはじめとする様々な支援制度を利用して、およそ400名の学生が海外留学や海外研修を体験しています。また、今年度からは鹿児島大学21世紀版薩摩藩英国留学生派遣事業「UCL稲盛留学生」制度の運営を開始し、ロンドン大学への大学院レベルの留学生を派遣しますし、文部科学省「大学の世界展開力強化事業」での「米国から鹿児島、そしてアジアへ ― 多極化時代の三極連携プログラム」に則った留学生の相互派遣の運営も開始されます。新入生の皆さん、進んで海外留学や海外研修の機会を得て、国際的視野の拡大と異文化理解を深め、企画力、課題解決力、コミュニケーション力の向上など、自分の可能性にチャレンジして下さい。
 
 本学では、これまでに述べてまいりましたように「グローバルな視点を有する地域人材育成」を行うことを目標に、教育を進めており、鹿児島県をはじめ地域社会と連携し、鹿児島大学の「地域の発展とともに歩むグローバル(グローカル)化」を実現したいと考えています。
 
 最後に、稲盛和夫・京セラ株式会社名誉会長のことをご紹介したいと思います。
 稲盛氏は、鹿児島市に生まれ育ち、鹿児島大学工学部をご卒業ののち、1959年に京セラ株式会社を創業され、1984年には第二電電のちのKDDIを設立され、さらには日本政府からの要請を受け、2010年に一度は破綻したJAL(日本航空)の再建を3年の短期間に見事に成し遂げられた、本学が誇りとする卒業生(OB)です。一昨年には、京セラの株式100万株(時価約80億円)のご寄附を頂き、本学においては「鹿児島大学稲盛和夫基金」を新設し、株式の配当金収益を教育・研究の充実・発展に役立てるよう運用しています。先ほど触れました「UCL稲盛留学生」制度は、その一端です。
 
 稲盛和夫氏は鹿児島大学の学生諸君へ、次のような言葉を贈られています。
 
 「どんな境遇に遭遇しようとも どれほど厳しい環境に置かれようとも 挫けることなく 常に明るい希望を持ち 地道な努力を一歩一歩たゆまず続けていくならば 自分が思い描いた夢は 必ず実現する。」
 
 この言葉は、一昨年に本学キャンパス内に建立された銅像に刻まれておりますので、「名誉博士 稲盛和夫像」に接し、進取の精神を受け継ぐ決意を抱いてください。 
 
 新入学の皆さん一人ひとりが、喜びと実り多い大学生活を送られ、鹿児島大学において、様々な研鑽を積む中で、新しい自分を発見し、真のグローカルたる次世代社会の立派な担い手に成長されることを心から祈り、私からの歓迎の言葉とさせていただきます。
 
平成31年4月5日
鹿児島大学長 佐野 輝