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令和2年度入学式告辞(令和2年4月7日)

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 新入生の皆さん、鹿児島大学への入学、おめでとうございます。鹿児島大学教職員一同を代表しまして、心からお祝いを申し上げます。入学を果たされた皆さんの今までの研鑽と努力に敬意を表しますとともに、その志を支えてこられたご家族をはじめとした関係の皆様方に対し、心からお慶び申し上げます。
 
 本来ならば、皆様方と一堂に会し、入学を祝福したいと考えておりましたが、世界的に流行が加速する新型コロナウイルス感染症拡大防止という観点から、今年度の鹿児島県総合体育センター体育館での入学式の開催を見送ることといたしました。人生の節目となるこの式典を心待ちにしていた皆さんにとって、本当に残念なことと思います。私どもにとりましても苦渋の決断でしたが、4月から新生活を迎える皆さんとご家族はじめ関係の皆様の、生命と健康を守ることを最優先にした結果であることを、どうかご理解ください。
 
 このような状況ではありますが、ここ鹿児島では、春爛漫、緑豊かな美しい本学のキャンパスと鹿児島の街並み、そして桜島も、皆さんを温かく迎え入れているように感じます。
 
 今年度は、本学の9つの学部に1,948名の学部学生、また、9つの大学院研究科に599名の大学院生、総勢2,547名の新入生を迎えました。このうち82名の海外からの留学生を迎えています。現在、鹿児島大学は、9つの学部と9つの大学院研究科を擁し、約9,000名の学部学生と約2,000名の大学院生(うち留学生約300名)、併せて約11,000名の学生が在籍しています。学生数から見ましても、九州においては九州大学に次いで大きな南九州における最高学府として存在するのが鹿児島大学です。鹿児島大学が、現在の新制大学としての形を整えましたのは、昭和24年・1949年のことです。明治以降に設立された旧制第七高等学校造士館(きゅうせいだいしちこうとうがっこう ぞうしかん)をはじめ各種の高等専門学校を統合して発足した新制国立鹿児島大学としての歴史は、昨年70周年の節目を迎えました。この70年の間には、戦後の復興と高度経済成長を経て、日本は世界有数の先進国となり、平和な社会を獲得しました。その間、鹿児島大学にとりましても、学生運動の大きな嵐もありましたが、最先端の学術研究の教育を受けた多くの人材を輩出し大きな役割を果たしてきました。
 
 さて、現在、パンデミックをもたらしている新型コロナウィルス感染症は、私たち人類にとって大きな試練となっています。昨今のグローバル化の進展により、小さな地域での感染症の発生が、すぐにも地球規模の問題となって拡散する事態を招いています。全世界で多数の死者が発生し、防疫のために各国は国境封鎖を行い、東京オリンピックは延期となり、経済活動への大きな打撃からの世界的な経済不安など、混迷は深まるばかりです。この事態は、地球レベルでの人類の共存を脅かしかねないレベルにまで陥っており、人類が営々と創り上げてきた社会・経済の仕組みそのものをも脅かすものとなりつつあります。しかし、このような時こそ、人類が蓄えてきた「知の力」を充分に活かすべきであると考えられます。「知の力」というものを考えると、大学とはその中心的な「知の拠点」であり、入学生の皆さんは私達と共に、その活動を支える仲間になったのです。「知の力」の「知」とは、知識の「知」のみならず、知恵の「知」であり、熟慮をしてこその「知」であります。本学の大学憲章では、「自主自律と進取の精神を培い、自ら困難に立ち向かい、地域社会や国際社会で活躍しうる人材を育成する」と謳っています。皆さんには、このような精神を持ち、「知の力」をもって地球レベルの困難に立ち向かう人材として育ってほしいと願います。
 
 今日の情報通信技術の急速な発達は、インターネットを介した知識の集積や流通を通じて「知」の世界に大きな革命をもたらしました。従来は、時間と労力をかけて書物などの資料にあたって得た知識が、スマートフォンやパソコンを使って瞬時に得ることができるようになっています。しかしながら、真の知識とは、自らが経験し思考することによって生みだされるものです。薄っぺらな、そして、あやふやな知識を鵜呑みにして、その洪水に飲み込まれてしまっていませんでしょうか。自分の頭で、じっくり考えて本当の「知」を掴まねばなりません。要領よく「知」を習得する方法などというようなものは存在しません。継続的な努力が必要になりますが、これは決して苦しいばかりの作業ではなく、むしろ面白いことだと感じるようになると思います。皆さんは「知の世界」の入り口の扉を今まさに開こうとしているのです。魅力あふれる「知の世界」へ、ようこそ。私たちは、皆さんの「知」への挑戦を、全力で応援したいと考えています。入学後に気づくことかと思いますが、今までとは違い、履修するカリキュラムを自らの手で組み、予習復習の時間を確保し、さらにはその余暇をサークル活動等で充実させるべく、頭を使って自らの行動を組み立てていかねばなりません。さあ、皆さん、「知の世界」での挑戦を始めましょう。
 
 さて、鹿児島大学は、“南九州から世界に羽ばたくグローカル教育研究拠点・鹿児島大学”となることを目指しています。本学の位置する鹿児島は、アジアと世界の諸地域に開かれた南の玄関口として、海外との交流を通じ異文化の導入を率先して行い、豊かな文化や学術を育み、我が国の変革と近代化を推進した数多くの人材を輩出してきた地でもあります。また、日本初の認定を受けた世界自然遺産「屋久島」や世界文化遺産「明治日本の産業革命遺産」を有し、さらには世界自然遺産を目指す奄美群島を含む、南九州から南西諸島など南北600キロに及ぶ県土を有する地に位置しています。皆さんは、この南北600キロに及ぶ県土を本学のキャンパスとして、そこにある自然・歴史・風土・産業を土台として、自分の夢の実現に向けて、学業に励むことになります。これらを背景とした「地域」に学ぶことは何物にも代えがたい、人生の土台を形成させてくれるものと思っています。先ほどまでの「知る」の「知」に対して、「地域の地」です。鹿児島大学では、平成26年度から平成30年度の文部科学省「地(知)の拠点整備事業(大学 COC (Center of Community) 事業)」「火山と島嶼を有する鹿児島の地域再生プログラム」に引き続き、平成27年度から令和元年度までは文部科学省「地(知)の拠点大学による地方創生推進事業COC+)」で鹿児島大学が採択された「食と観光で世界を魅了する『かごしま』の地元定着促進プログラム」の取組を行ってまいりました。これらの活動は、今年度から「大学地域コンソーシアム鹿児島」に引き継がれて発展させていこうと考えています。今後、鹿児島大学は、地域とともにある大学としての「地(知)の拠点」の活力を通じて、そしてまた「知の力」をもって地球レベルの困難に立ち向かう人材育成機関として真のグローカル教育研究拠点を目指して皆さんとともに進んでいきたいと思います。
 
 皆さんが、鹿児島大学という「知と地の力」を存分に活用し、充実した学生生活を送り、自らをいっそう鍛え、大きく成長することを願っています。また、日本全国あるいは世界の各地から集う仲間と、競い合いまた信頼しあう人間関係を築いてください。そして、これら鹿児島大学での体験を通じて、新しい自分を発見し、真のグローカルたる次世代社会の立派な担い手に成長されることを祈り、私からの歓迎の言葉・告辞とさせていただきます。
 
 
令和2年4月7日        
鹿児島大学長 佐野 輝