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持続可能な未来のために。国会の衆議院環境委員会に参考人出席した学生にインタビュー

 4月23日、国会の衆議院環境委員会で、地球温暖化対策推進法の改正案が審議されていました。そこに参考人の一人として出席したのが、水産学部2年の中村 涼夏さんです。
 5歳まで種子島で過ごし、その後名古屋市へ引っ越した中村さんは、幼い頃から親しんだ「海」をフィールドに水産学を学ぶため、鹿児島に戻ってきました。現在は大学での勉強のかたわら、「FFFJ(未来のための金曜日、Friday For Futureの日本版)」の中心的メンバーとして、国や世界に早急な気候変動対策を求める活動を行っています。
 国会では、科学的なデータを根拠に「政府の環境対策は不十分」と指摘。気候変動を止めるためにはもっと野心的になるべきだと批判しました。
 
 中村さんに、活動のこと、学生生活のこと、将来のことをインタビューしました。

 

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中村 涼夏さん

水産学部2年

 

学外での活動について

現在の活動を始めたきっかけを教えてください。

中村さん 種子島のきれいな海を見て育ったので、名古屋に引っ越して、工業排水で真っ黒な海を見たときショックでした。「人がこんなにも自然を変えてしまうのか」って。それから生物多様性、生態系保全に興味を持って、高校生のときにはNGOのツアーや大学のフィールド調査に参加しました。その頃は気候変動にはそこまで関心はなかったのですが、高校3年生のとき、スウェーデンの少女グレタさんの発言(※1)を聞いて、私たちの未来が気候変動によって脅かされていると知りました。世界中の科学者や機関が、「気候変動を食い止めるためには2050年までに二酸化炭素排出量をゼロにしなければならない」と言っているのに、日本政府は現在も石炭火力発電を推進しています。
 グレタさんをきっかけに世界の若者に広がった「FFF」を日本でも、ということになり、立ち上げに関わりました。アル・ゴア元アメリカ副大統領主催のミーティングに参加したり、名古屋で「グローバル気候マーチ」を開催したりしました。
  • (※1)2019年1月の世界経済フォーラムの年次総会(ダボス会議)での発言。
 

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インタビューに答える中村さん
 
 
 

国会に出席した経緯と、話した内容を教えてください。

中村さん  国会で話したのは、主に2点。まずは、その前日に政府が発表した「2030年までに温室効果ガスを46%削減する」という内容への批判です。国内の温室効果ガス排出量を2030年までに2013年比で62%削減する必要があると報告されているのに(※2)全然足りない。私たちの未来が受ける深刻な影響が無視されていると感じました。
 もう1点は、科学に基づいた政策立案をしてほしいということ。気候変動は、多くの科学者が試算した結果をデータとして出していて、私たちが勝手に数値を出すべきではないからです。
 
 

国会での反応はいかがでしたか。

中村さん 1時間くらい質疑応答を行って、皆さん、熱心に聞いてくださいました。
 ただ、次の日には忘れているんだろうな、という思いもあって。行動に移してもらわない限り、私たちは安心できないので、声をあげ続けていきたいと思っています。
 

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別の日、Webミーティング中の中村さん。G7会合の声明文作成にあたり、石炭火力発電の日本の姿勢の欠如について話し合っている。
(その様子をテレビ局が取材しています) 
 
 
 

環境活動については、賛同の声もあれば、批判的な声もあると思います。
色々な意見をどのように受け止めていますか。率直な思いをお聞かせください。

中村さん 本当はすごく怖いです。私自身、周囲の目はすごく気にするし、両親も以前は批判的でした。デモにも良い印象を持っていなくて。今回国会に出席したことで、少し認めてもらえた部分はあるみたいですが…。
 でも、この怖さよりも、将来私たちに襲いかかる気候変動の方が怖いですし、未来の世代に、私はアクションしたんだと胸を張れる人間でありたいんですね。だから、否定的な意見によって活動をやめることはありません。
また、私たちの行動は一つの政治参加だと思います。今できることで政治に参加するということ。政治家や企業の方に、早く気づいてという思いで活動しています。

今の目標は。

中村さん 気候変動を解決するために、科学に基づいた政策立案をしてもらうことが第一の目標です。その先に、気候変動によって影響を受ける人や自然をどう救うかという問題がありますが、私は、そういう課題には水産業でアプローチして、変えていきたいと思っています。
 よく「意識高い系」とか「活動家」と言われます。でも皆と変わらない一人の大学生。環境活動には懐疑的な方もいるけど、「気候変動」の問題は、本当はお隣さんくらい身近な存在。活動をしている人だけの問題ではなくて、皆のもの。皆と変えていきたいし、変えていけると思う。
 もちろん強制はしません。もっと身近に感じてもらえたらと思って、これからも声をあげていきたいです。
 

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「新聞に載った写真も目つきがグッ!となってましたよね~」と笑う中村さん
 
 
 

学生生活について

では、ここから学生生活について教えてください。まず、鹿児島大学の魅力は?

中村さん  自然が豊かで、机上だけではない、フィールドで確認できる環境が揃っているところ。それを提供してくれる先生もいる。昨年はほぼオンライン授業で、助けを求められなかったのが辛かったですが、先生に「どこどこの魚屋見てみな」と紹介されたり、離島で行われている研究について教えてもらったりして、農水というものをすごく身近に感じられるところが魅力です。
 絶対に飽きないフィールドってどこだろう?と考えたときに、「海」しかないと思って、水産学部のある鹿児島大学を選んだので、これからの乗船実習とかもすごく楽しみです。

これまでの大学生活を通じて、自身の成長を感じたことや印象的な出来事は?

中村さん  資源学や流通の授業を受けて、ものの見方がすごく広がったと思います。今まで見えなかったものが見えるようになったというか。
 例えば、パック詰めで売られている魚。どこでどういう風に獲れ、流通してきたものなのかというのは見えていなかったですが、それを見ようとする力がついたと思います。
 気候変動の問題では、エネルギーの使われ方やその影響力を見る力・見ようとする力が大切なのですが、授業を通して、自分の身近なところですら見えていなかったと気付かされました。きっかけを作ってくれたのが大学です。
 共通教育「初年次セミナー」も、レポートを書いて、初めて成果になったと感じたし、なおかつそれを評価してもらうのも初めてのことだったので、自分の成長を手助けしてくれたと思います。

これからの目標や、大学卒業後・将来の夢は?

中村さん  根底にあるのは「持続可能」。今ある自然を、自分がおばあちゃんになったときにも同じように残していたいので、そのプロセスとなる水産業の資源管理や、それを実現するための政策分野を学びたいです。
 横断的に探求できる研究室があれば入りたいですね。
 先日、私の活動を知ったアカデミア財団から奨学金をいただけることになりました。嬉しいです。それを資金に海外留学したいです。将来はNGOに入って、持続可能な水産業について考えながら活動したいです。

鹿児島大学への入学を希望している高校生に向けてのメッセージや本学のPRをお願いします。

中村さん  鹿児島大学には学べる材料が揃っています。ヒントも与えてくれます。あとは、この与えられた材料をどう料理していくか。与えられたものを最大限に活かすことで新たな発見につながり、色々な道が開けていきます。一緒に考えながら過ごして行けたらと思います。
 あ、あと、水産学部の図書館には、水産系の専門書がびっくりするくらい揃っていますよ!最初見たときは感動しました。

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おしゃれなマスクは、「名古屋の有松絞りのものなんです」と中村さん。
 
 
 

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国会に出た日も別の色のマスクを付けていたとのこと。とっておきの日に付けるそうです!
中村さん、どうもありがとうございました。
 
 
【インタビュー:2021年5月31日/掲載日:2021年6月9日】
 
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