何となくキモチ悪いという印象の寄生虫ですが…
「寄生虫」と聞いて皆さんはどのような印象をもたれるでしょうか?多くの方は、「キモチ悪い」とか、「なんでそんなものを研究するの?」と思われるのではないでしょうか。では、養殖場で寄生虫による魚の病気がしばしば発生していて、毎年かなりの経済的ダメージが出ていること、またその対策のために漁師さんたちは毎日重労働を強いられていること、という事実があるのですが、これらを知って同じ印象をもち続けることはできるでしょうか?寄生虫症(*1)は特効薬がほとんどなく、対応はとても難しいため、日本ばかりでなく、世界的にも大きな問題となっています。皆さんもご存じの通り、今なお世界の人口は増えつつけているため、食料の増産は人類にとって避けて通れない課題です。そのため、ヒトの栄養素の一つであるたんぱく質の供給源として、持続可能な魚介類の養殖業を維持・発展させていくことは、今後ますます重要になっていくことが予想されます。私たちは、養殖業に大きなロスを生じさせる、寄生虫症を予防する方法を見つけることを目指しています。特に、寄生虫が宿主(*2)をどのようにして認識しているのか、その仕組みについての研究を進めています。
寄生の仕組みを明らかにしようという挑戦
例外もあるのですが、多くの寄生虫は特定の宿主にしか寄生しないことが知られています。また、多くの寄生虫は宿主の体のどこにでも寄生するというわけではなく、ある決まった場所や組織に寄生することも知られています。これらのことは、古くから知られていたのですが、なぜそうであるのかはいまだに謎のままです。水産学的な立場からすると、これらの謎を解き明かすことができれば、寄生を予防する方法を見つけることができるかもしれないため、とても重要な課題といえます。私たちはこれまでに、トラフグとクサフグ、トラフグのみのエラに寄生するHeterobothrium okamotoi(通称、エラムシ)の組み合わせに着目して、特定の宿主にしか寄生しないメカニズムの解明を目指した研究を行ってきました。さらに、トラフグとトラフグ属魚類に寄生するCaligus fugu(通称、フグウオジラミ)の組み合わせにも着目し、特定の組織に寄生するメカニズムを明らかにしようとした研究を行っています。さらには最近、地元鹿児島で問題となっている、ブリやカンパチの寄生虫であるハダムシについても同じような研究に着手したところです。
用語解説
*1:寄生虫が原因で引き起こされる病気のこと。
*2:寄生虫に寄生される側の生物のこと。