被災地を支援しつつ、災害を記録する
2011年3月11日の津波で、岩手県宮古市の実家が全壊しました。両親や親戚の生活再建をサポートしつつ、津波高の測量や、地震発生から津波到達時までの避難行動を聞き取り調査しました。また、両親が避難所から仮設住宅に移ってからは、2012年4月に日本地理学会「東日本大震災による被災地の再建にかかわる研究グループ」をつくり、代表・世話人として他のメンバーとともに、被災地の復旧・復興に係る研究を進めました。その成果の一つが、2021年4月発行の地学雑誌特集号「『ローカルな災害記録』の実態とあり方─他地域や後世にも伝える時空間情報の提示」です(写真1)。特集号編集委員長として全論文の査読・編集にかかわりました。東日本大震災の被災地を対象に、発災から復旧・復興までの災害の過程を把握しようとすると、十年以上の月日が必要になります。他にも、2015年口永良部島噴火による災害、2016年熊本地震災害等で現地に赴き、被災者や行政担当者等と「顔が見える」関係を築きつつ、被災者の避難行動を研究し、被災者の生活再建に係る助言をさまざまに行ってきました。
南九州・南西諸島での防災対策を講じる
被災地での調査研究を生かしつつ、南九州・南西諸島でも、防災対策の立案に係る研究や社会貢献活動を行っています。奄美大島の宇検村では、2021~2022年に海沿いの全13集落の標高を1000地点以上測量し、気象庁の宇検村「高潮警報・注意報」基準値の改定(2023年1月26日)に貢献しました。また、2024年に西之表市と奄美市で行われた内閣府「地震津波防災訓練」では、防災専門家として参画し、訓練地区の測量や対象住民の聞き取り調査を事前に行い、地域の実情に合わせた実践的訓練の実施に貢献するとともに、両自治体の地域防災計画の改定に係るデータを提供しました。一方、学生が地域防災に実践的に取り組める機会をつくっています。鹿児島市「桜島火山爆発総合防災訓練」に6年連続で参加し、共通教育科目「防災フィールドワーク」受講生が桜島防災研究をグループ発表し、市職員業務補助を行っています。他にも、鹿児島県総合防災訓練(2023年志布志市、2024姶良市)、2024年喜界町・鹿児島大学防災シンポジウム等で、「地域防災学実践」や「地域防災演習」の受講生が参加し、地域防災計画や個別避難計画の立案に係る活動を行っています。