肝細胞移植法の最適なプロトコールを確立する

肝硬変や代謝性肝疾患といった難治性肝疾患に対して肝臓器移植に代わる根治的治療は未だ確立されていません。しかしながら、肝臓器移植の施行においては、手術侵襲が大きいことやドナー不足、生体肝移植におけるドナーの侵襲といった問題が存在します。肝細胞移植はマウスやラットなどの小動物肝疾患モデルを用いた研究において長期的なドナー肝細胞の生着による症状の緩和や生存率の向上が報告されています。肝細胞移植を行うメリットとして①単一の肝臓から複数の患者への移植が可能(ドナー不足の解消への期待)、②臓器移植に比べ手術侵襲を軽減、③臓器移植が困難な小児に対しても施術可能などが挙げられます。肝細胞移植のヒトでの臨床応用に関しては欧米を中心に先天性肝代謝性疾患症例を対象とした治療報告はありますが、いまだ少なく、治療プロトコールの最適化についてはいまだ検討段階にあります。そこで、我々はドナー肝細胞の長期的な生着とより高い治療効果を目指すための最適なプロトコールを確立するための研究を行っています。
本学の生命科学研究を支援する

私が所属する研究支援センター動物実験施設は鹿児島大学における生命科学研究の拠点の一つとなっています。動物実験施設では主に様々な病気の病態解明や治療法に関する研究が行われていますが、生物学など基礎的研究(遺伝学的研究、生理学的研究など)も行われています。私を含め、動物実験施設のスタッフは動物を用いた研究が倫理的かつ科学的に適正に行われるよう、実験者に教育、アドバイスをするとともに、日々、飼育している実験動物の健康、飼育管理も行っています。また、実験動物の管理だけでなく、薬剤の投与や採血、手術といった実験技術を実験者に指導、助言を行うとともに研究支援業務としてもこれら技術を実験者にも提供しています。特に私は獣医師であることからこれら健康管理、研究支援業務に獣医師として深く関与し、私個人の研究のみならず、本学における生命科学研究の推進に少しでも貢献できるよう、日々、実験動物や研究者と向き合っています。