農業と人・社会の関係

農業は作物や家畜を育てる産業ですが,それらを育てるのは「人間」です。そのため農業を良くするためには,農業に関わる「人間」と,人間の集まりである「組織」(会社、組合など),あるいはもっと大きな単位である「社会」の面から考えることも必要です。
私は農業を社会科学(=人、組織、社会)の側面から研究しています。主に経済学の観点から分析していますが、農業は奥が深く、経済学だけでは十分に理解できない部分もたくさんあるので,関連する分野についても勉強しています。
さて、日本の農業には様々な問題がありますが、農業を良くするためには何が必要でしょうか? もちろん技術の改良・開発も必要ですし,経営・経済のことも大事です。しかし農業はただ儲かればいいというものではありません(儲からなくてもいいという人もいます)。一方で自然環境も守らなければなりません。また人々がの農村で共に暮らしていくことも大切です。このように農業は,非常に複雑(また豊か)なところがあります。
このような農業・農村の問題に対し,農家や農家組織は何をすればいいのか?自治体や国は何をすればいいのか?といったことを,現地の農家や関係者ヘの聞き取り調査,アンケート、統計分析などから見出すことが私の専門です。
島の農業

私が力を入れている研究の1つは,島の農業に関する研究です。
多くの島では,農業や水産業などの第一次産業が主な産業です。しかし島で農業をすることは必ずしも有利なことではありません。島は,小さく,本土から遠く離れ,海に囲まれているからです。作った農産物を島の中だけで売ろうとしても,少ししか売れません。かといって島の外に運べば、時間も費用もかかります。 また島は多様で,その条件によって農業の姿や問題も大きく異なります。
そうした中でも、島では多くの農家が農業に取り組み、多くの人々が農業や食に関連する仕事に従事し,そして生活しています。
私は,国内外の島を訪れて調査を行い,島特有の農業の問題に焦点を当てた研究を行っています。国内では,南西諸島(鹿児島県の離島や沖縄県)や九州の離島が主なフィールドです。海外の島に関しては,島の農業・農村を支える政策を研究の対象としています。