アフリカの都市人口増加で重要性を増すタンパク源としての水産物

近年、多くのアフリカ諸国は高い人口増加率と経済成長率で発展しています。経済発展がもたらすもの、それは農山漁村における第一次産業従事者の減少と、都市人口の増加です。私は2005年から現在まで、東アフリカのタンザニア連合共和国でフィールドワークに基づく研究を行っています。現在は、タンザニアの漁業・水産業の実態解明および、漁村の人々の経済活動や地域振興に関心を持っています。
タンザニアは、ビクトリア湖、タンガニイカ湖、ニャサ湖(マラウィ湖とも呼ばれる)など大湖の沿岸国で、インド洋にも面しており、漁業・水産業が盛んで、多くの人々が漁業・水産業に依拠した生活を送っています。主に乾燥や燻製に加工された水産加工品は、国の内外に広く流通しています。特に、それらは隣国のコンゴ民主共和国に大規模に輸出されています。
コンゴ民主共和国では、1990年代から2010年代半ばまで長く内戦や紛争が続きました。人々は家や村を追われ、熱帯雨林で野生動物を狩猟して日々の食料や現金稼得手段として利用してきました。その結果、同国の野生動物密度は激減しました。また、人口増加が著しい同国都市部では、食料生産とは異なる産業に従事する人々が増え、タンザニアから輸入される水産加工品が都市住民の日々の重要なタンパク源となっています。
生産者の利益が守られるためには何が必要か

日本には古くから漁業協同組合が発達しており、漁業者が協力して、地域社会や漁業者自身の利益を守るために様々な活動を行っています。漁業者がとった漁獲物を漁協が一括で販売する共同販売事業は、市場価値の高くない魚種や、価格が付きにくい漁獲物も有効活用できる、あるいは小規模生産者が価格交渉力で勝る大手企業や流通業者に対抗する手段として、大きな役割を果たしています。
日本では当然のように存在する漁業協同組合ですが、私が調査するタンザニアでは、漁業者や加工業者などで組織する生産者組織は長らく存在しませんでした。近年、Beach Management Unit (BMU) という漁業者・加工業者などが参加する組織が法整備され、各地で活動を開始しています。しかし、アフリカ漁村の人々の多くは組織運営に慣れておらず、ルールを決めてもそれが守られているかをチェックする体制もマンパワーも不十分で、有効に機能しているとは言えない状況です。そのため、地域の生産者が集荷・流通業者に買い叩かれる事態も頻発しています。このような、アフリカの漁業・水産業および流通段階における課題を発見し、生産者が必要とする政策や制度について研究を進めています。