桜島は火山噴火の天然の総合実験場

鹿児島のシンボル桜島はたびたび噴火する生きた火山ですが,地球上の何千という活火山のうち,これほど長期にわたり連続的に噴火する火山は多くはありません.1955年からは毎年のように複数回噴火し,現在も活発な状態が続いています.
火山噴火の規模・強度は極めて大きく,実験室内での再現は出来ません.しかし,桜島のように頻繁に噴火する場所ならば,観測機器を多数配置して何度も観測ができます.このようにして,徐々に桜島周辺には多種多様な観測機器類が設置されてきました.今では,その数は20種を超え,地震計やGPS,傾斜計などは十数地点以上で常時観測されています.これらの多くは,地下のマグマの動きを捉える手法であり,マグマの地下での上昇状況を知ることが可能になりました.しかし,マグマが地表に出たときにどんな噴火をするのか,それはマグマの動きを捉えるだけでは予測できないのが現状です.噴火様式を決める要素はマグマの性質(物性)やマグマの通り道(火道)の状態であり,それを知る手がかりとなるのが噴出物です.われわれは,噴出物の連続サンプリングと迅速分析により,桜島での噴出物モニタリングの実現を目指しています.
諏訪之瀬島は火山噴火のその場天然実験場

トカラ列島の諏訪之瀬島も桜島と同様,長期に噴火をし続けている数少ない火山の一つで,イタリアのエオリア諸島にあり,やはり長く噴火を続けているストロンボリ火山の「地中海の灯台」にちなんで,「東シナ海の灯台」と呼ばれています.諏訪之瀬島でも日々噴火が発生し,火山灰などが放出されています.特に諏訪之瀬島の噴火は規模が小さいため,火口内部の観測や,火口近傍でないと入手困難な火山弾などの採取ができます.
われわれの堆積物の研究によれば,このような活動は4000年近くも続いています.一方で,諏訪之瀬島では数百年程度に一度,大規模な噴火が発生しています.およそ200年前に発生した大噴火では,全島民が離島せざるを得なくなり,その後70年も無人島になったこともあります.このような大噴火はどのように推移していくのか,これを理解することがわれわれの大きな目的の一つです.過去の噴出物を地質調査により解析し,現在の噴火を観測・噴出物解析の両面から並行して進めることで,過去と現在の関係を整理して噴火推移のメカニズム理解につなげていくことができるのは,世界でも数少ない諏訪之瀬島ならではの研究です.