心臓病患者さんの究極な治療は何か?

心臓は体の中で血液をポンプのように押し出して全身に酸素や栄養を届ける役割をしています。心臓に何らかの不具合が起こると心臓病になります。日本は、超高齢化社会となっており、心臓病に苦しむ患者さんが増えています。心臓病の患者さんは、動いたときに息が切れやすくなり、やりたいことができなくなったり、生命の長さも短くなることがあります。また、せっかくよくなったとしても再発することもあります。心臓病の患者さんの治療の目標は、活動できる力を改善させ、生活の質を向上させ、心臓病の再発予防を行いながら、最終的に生命の長さを延長させることです。現在、薬による治療だけでなく、カテーテルを用いた治療など、薬によらない治療方法もたくさん開発されていますが、薬の副作用を心配したり、痛みを伴う治療もあり、効果という面からもまだ十分とは言えません。一方、心臓リハビリテーションには、患者さんに運動をしてもらったり、どのような食生活を行うべきかといった栄養指導、服薬指導、禁煙などの生活指導、精神的に不安になった患者さんに対するカウンセリングなどが含まれます。心臓病患者さんに心臓リハビリテーションを行うと、運動能力が改善し、病気の再発が予防でき、命の長さも延長するといった効果があり、痛みを伴うことがないことなどを考えると、まさに、究極の治療方法といえます。
多職種介入による心臓リハビリテーションの効果を実証し浸透させたい

心臓リハビリテーションは医師や看護師、理学療法士、薬剤師、検査技師、栄養士、ソーシャルワーカーなど様々な職種が関与し、運動療法だけでなく、栄養指導や運動指導、服薬指導、禁煙指導、復職相談など、多方面から介入する包括的な治療です。しかし、重要な治療方法と分かっていても実施していない病院も存在しています。それを改善するために、多くの職種の先生方に心臓リハビリテーションの認識を向上してもらえるよう、勉強会を開催しています。一方、心臓リハビリテーションの重要性を明らかにするためには、心臓リハビリテーションの有効性を示す必要があります。心臓病患者さんに心肺運動負荷試験を行って運動能力を評価し、心臓リハビリテーションの効果を評価したり、心臓病の患者さんの命の長さに運動能力がどのように関係し、心臓リハビリテーションが役立つのか調査してきました。また、心臓リハビリテーションの質の向上を目指すことも重要だと考えており、九州の施設に協力いただいて、心臓リハビリテーションにかかわる医療スタッフや患者さんの満足度の調査を開始しています。日本全国多くの病院や施設で心臓リハビリテーションによる治療が受けられるようになることを目指して日々研究しています。
用語解説
*1 心肺運動負荷試験 運動をしながら呼吸や心臓の状態を評価する検査