アフリカチビネズミってどんな動物?
アフリカチビネズミ(学名:Mus minutoides)という動物をご存知ですか?愛玩動物として注目されているので、ペットショップで見かけたことがある方もいるかもしれません。アフリカチビネズミはMus属に分類されるげっ歯類(ネズミの仲間)です。その名の通り、とても体が小さい動物で、体重は3 g、体長は30 mmほどしかありません。様々な研究で用いられるマウス(学名:Mus musculus)は体重が30 gほどなので、アフリカチビネズミはマウスの1/10の大きさしかありません。では、アフリカチビネズミとマウスの体の大きさは、なぜこんなにも異なっているのでしょうか?これまで、アフリカチビネズミについて体の大きさに着目した研究は全く行われていませんでした。そこで、私はアフリカチビネズミを研究しマウスと比較することによって、アフリカチビネズミの体の大きさを調節するメカニズムの特徴を調べています。この研究を糸口として、げっ歯類だけでなく、ヒトやイヌ、ウシなど様々な哺乳動物において共通するメカニズムを探し出したいと考えています。
アフリカチビネズミとマウスの遺伝子は違う?同じ?
哺乳動物の体の大きさに影響する因子は数多く存在すると考えられています。その中でも「成長ホルモン」は最も有名な因子のひとつで、高校の生物の授業で聞いたことがある方も多いと思います。成長ホルモンが作用するには、成長ホルモン受容体と呼ばれる受容体(*1)が必要です。私は「アフリカチビネズミが小さいのは成長ホルモン受容体がマウスとは異なっているからかもしれない!」と考え、アフリカチビネズミとマウスの成長ホルモン受容体の遺伝子を比較しました。すると、マウスやヒトでは共通しているのに、アフリカチビネズミでのみ異なっている領域があることを発見しました。さらに、情報生物学(*2)的予測ツールを用いて解析を行ったところ、この領域がアフリカチビネズミの成長ホルモン受容体の機能に変化をもたらしている可能性が示されました。このように、アフリカチビネズミの遺伝子の分子生物学的な特徴を明らかにすることによって、動物の体の大きさという大きな課題に挑戦しています。
用語解説
(*1) 細胞外からのシグナルを受け、細胞内に伝達するタンパク質。受容体の作動によって様々な生体反応が生じる。
(*2) 生物が持つ情報(DNAやアミノ酸の配列など)をコンピュータを用いて解析し、生命現象を解明する学問。