①看護師のメンタルヘルスに関する研究
職業性ストレスによる極度の心身の疲労を表すバーンアウトは燃え尽き症候群とも呼ばれ、これまでに教員や医師および看護師などを対象とした先行研究が国内外で行われています。看護師を対象とした研究では、バーンアウトは離職や看護の質低下につながることが報告されています。看護師がバーンアウトに陥らず、陥ったとしても早期に回復することが、看護師と患者の双方において重要です。また、ストレスといった逆境に直面した際に、そのショックから回復し、状況に適応していく力を指す概念である「レジリエンス」がこの看護師のバーンアウトに有効であることが報告されています。そこで、我々はこのレジリエンスを高めるプログラム(Webを介した看護を語る会)を作成し、鹿児島県本土と離島の看護師を対象にその効果を検証しました。得られた結果は、本プログラムのバーンアウトへの有効性を示していました。今後は、結果を積み重ねて有効性を確認していく必要はありますが、研究および得られた知見の広報活動を続けることで、看護師の心身の健康と、患者への質の高い看護に貢献していきたいと思っています。
②意識と死亡リスクに関する研究
患者となる方が増えないようにすることも重要です。まず、生活習慣に由来する生活習慣病による死亡者は世界で1100万人とされ、29%は食事由来との報告があります。この生活習慣病の発生原因の1つは食べ過ぎであり、行動変容の最初の段階は意識から始まります。そこで、我々は食物の摂取を控えようとする意識(食物摂取制限意識)のある者は、意識の対象となる食物(カロリー/脂肪/甘いもの)の過剰摂取が減少し、結果的に死亡のリスクが減少するのではないか、との仮説を立て、日本人58,772名を対象に食物摂取制限意識と死亡との関連を検討しました。(実はよく分かっていない知見の1つなのです。)得られたデータの解析から、脂肪摂取制限意識ありの女性は実際の脂肪摂取量が少ないこと、および死亡リスクの低下が観察されました。しかし、更なる解析で、この死亡リスクの低下は必ずしも脂肪摂取量の減少によるものだけではなく、何か他のメカニズム(仕組み)が反映している可能性が示されました。
今後も研究を続け、予防という観点から人々の健康増進に貢献していきたいと思っています。