大学院理工学研究科 工学専攻 電気電子工学プログラム

准教授

奥田 哲治

新たな電子・エネルギー物質の探索

物質の電子的性質

浮遊帯域溶融法(Floating Zone法)による遷移金属酸化物の単結晶育成

 我々の生活を支える電子機器は、様々な種類の電子デバイス、エネルギーデバイスで構成されています。実は、これらのデバイスは、物質の電子的性質をたくみに利用することで機能を実現しています。
 物質の電子的性質は、構成する原子の種類や配列(物質構造)など様々な要因で決まります。その電子的性質の元となる物質中の電子は、物質を構成する非常に多くの原子(※1)が持つ電子の一部です。原子の組み合わせや物質構造は無限に考えられるために、まだ知られていない未知の物質の電子的性質があるかもしれません。
 電子は、電流の源となる「電荷」や磁気の源となる「スピン」といった内部自由度を持っています。物質中では、さらに、原子中の電子がとる「軌道」や電子の置かれる「結晶格子」といった自由度があります。本研究室では、このような電子の持つ内部自由度に着目し、様々な方法(図1)を用いることにより、優れた熱電材料(※2)、新たな超伝導体(※3)、巨大な磁気抵抗効果を示す物質(※4)など、未来の電子・エネルギー技術をもたらす新たな物質の探索を行っています。

優れた熱電材料の探索

π型熱電変換素子

 物質の熱電特性とは、物質において観測されるゼーベック効果(※5)やペルチェ効果(※6)などの物理現象のことで、優れた熱電特性を示す物質(熱電材料)は、熱エネルギーと電気エネルギーを直接相互変換する熱電変換技術に用いられています。
 図2に代表的な熱電変換素子の構造図を示します。その形がギリシャ文字の「π」の形に似ていることから、「π型熱電素子」と呼ばれています。このπ型素子を用いた熱電発電では、人体から発電所にわたる様々な種類の排熱を電力に直接変えることができます。例えば、太陽光の弱い深宇宙を探索する宇宙船(※7)の電源には、プルトニウム238の放射線を熱源とする熱電素子が用いられています。
 この可動部を必要とせず静かで長寿命な熱電発電が世に広く普及しない大きな理由の一つが最良の素子でも5%程度に留まる低い変換効率(※8)にあります。この低い変換効率は、素子を構成する熱電材料の熱電特性がまだ不十分であることが主な原因です。本研究室では、新物質探索の一つとして、工学的特性に優れる遷移金属酸化物(※9)に着目した優れた熱電材料の探索を行っています。

用語解説

(※1)我々が手に持つ程度の大きさの物質は、アボガドロ数(約6×10の23乗)程度の非常に大きい数の原子できている。例えば、原子量が約56の鉄原子がアボガドロ数の数だけ集まれば、その重さは約56gとなる。
(※2)熱電材料 : 物質の熱電現象を利用して排熱から発電したり、電流により冷却したりする熱電変換素子に用いられる材料。現在の熱電変換素子には、無機化合物半導体が用いられている。
(※3)超伝導 : 低温で電気抵抗が零になる現象で、1911年にHeike Kamerlingh Onnesにより水銀で発見される。その後、現在に至るまで、超伝導を示す多くの物質が発見され続けており、超伝導が出現する温度が200Kを超える物質も現在までに発見されている。
(※4)磁気抵抗効果 : 磁場により抵抗が変わる現象。弱い磁場で大きい磁気抵抗効果を示す人工物質は、磁気記録ヘッドなどに応用されている。
(※5)ゼーベック効果 : 物質の熱電特性の一つで、1821年にSeebeck(ゼーベック)によって発見される。物質の片端に熱を加え、物質中に温度差を付けた時、温度差に比例した電圧が両端に生じる現象。排熱から電力を得る熱電発電の原理となっている。
(※6)ペルチェ効果 : 物質の熱電特性の一つで、1834年にPeltier(ペルチェ)によって発見される。物質に電流を流すと、物質の一方の片端で吸熱が起こり、もう一方の片端で放熱が起こる現象。電流により冷却・加熱を行うペルチェ素子の原理となっている。
(※7)NASAにより打ち上げられた宇宙船(Pioneer:1972年、1973年、Voyger:1977年、Ulysses:1990年、Galileo:1989年、Cassini:1997年)には、プルトニウムを熱源とした熱電発電が用いられている。
(※8)現在の熱電材料では、理想的に素子を作成できても変換効率は最大10%程度である。原理や用途が異なるため直接の比較対象にはならないが、市販の太陽光発電の場合、変換効率は15~20%である。
(※9)遷移金属酸化物 : 酸素と遷移金属の化合物のこと。無機化合物半導体よりは電気伝導性に劣るが、高温超伝導をはじめとして多彩な物理現象を示す。

Profile

大学院理工学研究科 工学専攻 電気電子工学プログラム

准教授

奥田 哲治

1997年東京大学大学院工学系研究科物理工学専攻博士課程修了、現在の産業技術総合研究所(つくば)内アトムテクノロジー研究体(JRCAT)博士研究員(JRCATフェロー、NEDOフェロー)を経て、2002年鹿児島大学大学院理工学研究科着任、2006年~2010年科学技術振興機構(JST)さきがけ研究員、2015年JST-CREST主たる共同研究者、至現在。博士(工学)。専門は物性物理学、物質科学、電子デバイス工学、担当授業は量子力学、光エレクトロニクスなど。

学生(受験生)へのメッセージ

 大学では、自由な時間がたくさんあると思います。ただし、大学生になってからは、その自由の責任は自分にあります。受験生の皆様には、大学時代は、できるだけ有意義な時間を過ごして欲しく思います。勉学をはじめとして部活、サークル、アルバイトなど色々な学生活動がありますが、上手に選択し有意義な経験をできるだけ多くしてください。そして、それらを通じて、より進んだ学問を修得したり、生涯の友達に出会ったり、様々な技能を身につけたりして、豊かな人生への糧としてください。

他の研究者

大学院理工学研究科 理学専攻 生物学プログラム

助教

渡部 俊太郎

総合教育機構

准教授

藤村 一郎

教育学部 音楽

准教授

今 由佳里

大学院理工学研究科 工学専攻 建築学プログラム

教授

柴田 晃宏

共同獣医学部 獣医学科

准教授

内藤 清惟

大学院医歯学総合研究科 先進治療科学専攻 顎顔面機能再建学講座 歯科麻酔全身管理学分野

助教

山下 薫

共通教育センター

准教授

塗木 淳夫

水産学部 水産経済学分野

助教

鈴木 崇史

医歯学総合研究科 歯科応用薬理学分野

助教

五十嵐 健人

医歯学総合研究科 先進治療科学専攻 生化学・分子生物学

教授

奥野 浩行

先端科学研究推進センター 生命科学動物実験ユニット

准教授

瀬戸山 健太郎

法文学部 法経社会学科 法学コース

准教授

上原 大祐

共同獣医学部

助教

森脇 潤

医学部 保健学科 理学療法学専攻 基礎理学療法学講座

教授

榊󠄀間 春利

水産学部 水産学科

助教

小玉 将史

グローバルセンター

教授

中谷 純江

鹿児島大学病院 発達系歯科センター 小児歯科

講師

稲田 絵美

鹿児島大学病院 消化器センター 消化器内科

講師

佐々木 文郷

大学院医歯学総合研究科 健康科学専攻 感染防御学講座

教授

原 博満

大学院理工学研究科 理学専攻 地球科学プログラム

准教授

礼満 ハフィーズ

教育学部 理科

准教授

川西 基博

大学院医歯学総合研究科 先進治療科学専攻 神経病学講座

教授

田川 義晃

農学部 農業生産科学科

教授

坂井 教郎

農学部 農業生産科学科

教授

坂巻 祥孝

農学部 食料生命科学科

准教授

藤田 清貴

農学部 食料生命科学科

准教授

濱中 大介

ヒトレトロウイルス学共同研究センター

教授

中畑 新吾

水産学部 水産学科

助教

熊谷 百慶

水産学部 水産資源科学分野

准教授

土井 航

大学院臨床心理学研究科

准教授

吉村 隆之

法文学部 法経社会学科

教授

井原 慶一郎

大学院医歯学総合研究科 先進治療科学専攻 生体機能制御学講座

助教

小栁 江梨子

大学院理工学研究科理学専攻物理・宇宙プログラム

教授

高桑 繁久

教育学研究科 教育実践高度化専攻

准教授

関山 徹

農学部 食料生命科学科

助教

坂尾 こず枝

農学部附属焼酎・発酵学教育研究センター

准教授

吉﨑 由美子

共通教育センター初年次教育・教養教育部門

准教授

今井 裕

高等教育研究開発センター

助教

森 裕生

農学部 食料生命科学科

准教授

池永 誠

鹿児島大学病院 心臓血管内科

講師

窪田 佳代子

大学院医歯学総合研究科 先進治療科学専攻 神経病学講座

講師

﨑山 佑介

大学院医歯学総合研究科 健康科学専攻 発生発達成育学講座

教授

岡本 康裕

教育学部 技術科

准教授

浅野 陽樹

教育学部 学校教育教員養成課程(心理学)

准教授

島 義弘

大学院理工学研究科 工学専攻 情報・生体工学プログラム

准教授

岡村 純也

大学院理工学研究科 工学専攻 化学生命工学プログラム

助教

新地 浩之

大学院理工学研究科 工学専攻 建築学プログラム

准教授

鷹野 敦

教育学部 教育学科

准教授

髙谷 哲也

大学院医歯学総合研究科 先進治療科学専攻 生体機能制御学講座

講師

柏谷 英樹

大学院理工学研究科 工学専攻 電気電子工学プログラム

准教授

渡邉 俊夫

大学院理工学研究科 工学専攻 化学工学プログラム

教授

武井 孝行

大学院理工学研究科 工学専攻 機械工学プログラム

教授

片野田 洋

法文学部 法経社会学科

准教授

酒井 佑輔

大学院医歯学総合研究科 先進治療科学専攻 顎顔面機能再建学講座

講師

河野 博史

大学院医歯学総合研究科 健康科学専攻 発生発達成育学講座

教授

宮脇 正一

鹿児島大学病院 発達系歯科センター 口腔保健科

助教

藤島 慶

共同獣医学部 獣医学科

教授

田仲 哲也

共同獣医学部 獣医学科

教授

帆保 誠二

水産学部 水産学科

准教授

田角 聡志

水産学部 食品生命科学分野

准教授

内匠 正太

大学院理工学研究科 理学専攻 化学プログラム

准教授

児玉谷 仁

大学院理工学研究科 理学専攻 数理情報科学プログラム

准教授

松本 詔

大学院理工学研究科 理学専攻 物理・宇宙プログラム

准教授

永山 貴宏

大学院理工学研究科 工学専攻 化学工学プログラム

教授

二井 晋

大学院理工学研究科 理学専攻 物理・宇宙プログラム

教授

小山 佳一

共同獣医学部 共同獣医学科

教授

三浦 直樹

国際島嶼教育研究センター

教授

高宮 広土

医学部 腫瘍学講座分子腫瘍学分野

准教授

河原 康一

国際島嶼教育研究センター

准教授

山本 宗立

グローバルセンター

講師

市島 佑起子

共通教育センター

准教授

藤田 志歩

共通教育センター

准教授

鄭 芝淑

大学院医歯学総合研究科 先進治療科学専攻 顎顔面機能再建学講座

教授

西村 正宏

医学部 保健学科 理学療法学専攻

教授

牧迫 飛雄馬

水産学部 水産学科

教授

小松 正治

水産学部 水産学科

助教

遠藤 光

農学部 農林環境科学科

准教授

鵜川 信

農学部 食料生命科学科

准教授

加治屋 勝子

農学部 農業生産科学科

教授

坂上 潤一

大学院理工学研究科 工学専攻 化学生命工学プログラム

教授

門川 淳一

大学院理工学研究科 工学専攻 機械工学プログラム

教授

松﨑 健一郎

大学院理工学研究科 理学専攻 生物学プログラム

教授

内海 俊樹

教育学部 数学教育

准教授

和田 信哉

法文学部 法経社会学科

准教授

農中 至

教育学部 家政教育

准教授

黒光 貴峰

高等教育研究開発センター

准教授

伊藤 奈賀子

教育学部 美術教育

教授

桶田 洋明

法文学部 人文学科 心理学コース 

准教授

山﨑 真理子

トップページに戻る