社会科って,いつからあるの?

日本で社会科という教科が誕生したのは,いつ頃でしょうか?「ずっと昔からあるのでは?」と思われるかもしれません。実は,戦後初期の1947年です。つまり,誕生してから百年も経っていません。
現代史の授業で,戦後教育改革を習った記憶はありますか?教科書に「GHQ」や「マッカーサー」が出てくるアレです。社会科の誕生は,その一環でした。となると,「占領政策だからアメリカ側の押しつけではないか!」と考える方もいるかもしれません。実際,かつてはそのような主張が数多くありました。しかし,今ではほとんどみられません。それは,社会科教育史を専門とする研究者がさまざまな成果を挙げ,反証してきたからです。
「史実」という言葉があります。歴史上の事実という意味です。事実と聞くと,「まちがいなんてないのでは?」と思われるかもしれません。たしかに,社会科が1947年に誕生したというのは紛れもない事実です。けれども,アメリカ側の押しつけかどうかは解釈が分かれます。つまり,時代によって事実の解釈は変わるのです。
社会科教育史の研究って,どうやるの?

社会科の成立過程を究明する研究領域を,成立史と言います。社会科教育史の研究領域は成立史だけではなく,理論史や実践史もあります。ここでいう「○○史」とは,できごとの過程や歩みを歴史的に叙述したものです。その軌跡をたどるのが,社会科教育史研究です。
軌跡をたどる方法は,大きく分けて二つあります。一つは,まだ誰も見たことのない資料を発掘し,価値づけることです。もう一つは,すでに見つかっている資料を再検討し,新たな解釈を導き出すことです。どちらも,並大抵の努力では務まりません。私も学生時代,師匠からくり返し言われました。
日本史でいうと現代よりも戦国時代が人気なように,歴史が浅くて戦いもない社会科教育史研究は不人気です。たしかに,西郷隆盛や勝海舟といった,教科書に出てくるような人物は登場しません。だからといって,当時の人物に決して魅力がないわけではありません。これまで日の当たらなかった側面を深掘りすることも,社会科教育史研究の醍醐味です。