観察角度に依らない三次元物体認識
私たちが見る物体の像は観察角度に依って変化します。しかし、私たちは観察角度に依らずに同じ物体を認識し、よく似た他の物体と区別できます。このような、観察角度に依らない三次元物体認識の脳内メカニズムについて研究しています。脳では多数の神経細胞がネットワークを形成し、外界の情報を表現しています。単一神経細胞の活動を調べる研究、神経細胞集団の活動を調べる研究、行動を調べる研究から、三次元物体が脳内でどのように表現され、ヒトの認識、行動に結びつくか明らかにしようとしています。特に、脳で視覚の情報が処理される最終段階の領域で、三次元物体がどのように表現されているのかを明らかにすることを目標に研究しています。近年、人工知能の発達に伴い、脳の視覚情報処理経路を模倣したシステムが考案されています。私たちが明らかにする神経基盤を、これまでに発達した人工知能システムに組み込み、新しい物体認識システムの構築を目指して研究を進めています。
視野の中心と周辺の機能の違いについて
視覚的に対象物を見るとき、その周辺からの影響を受けることが知られています。例えば、図のように縦縞の周りに傾いた縞目を置くと、縦縞が少し傾いて知覚されるかと思います。これらは錯視として良く知られています。このような錯視を引き起こす脳内メカニズムを調べています。光計測法という、光を照射するだけで脳の活動領域と非活動領域の違いを可視化する計測法から、脳内メカニズムを明らかにしようとしています。この光計測法は、脳に光を照射するだけで脳の活動を計測できるので、脳外科手術の支援システムとしても期待されています。
私たちが顔や物体を認識するとき、視野の中心で詳しく見ています。一方、視野の周辺は、例えば飛ぶ鳥の動きといった、動きを検出するのに適しています。視野の中心よりも、視野の周辺で錯視が引き起こされる程度が大きいので、視野の中心と周辺の機能の違いにも注目して、視覚的認識の脳内メカニズムを研究しています。研究成果は、より効率的な視覚的な呈示装置の開発、呈示方法の提案につながると考えています。