南薩諸島の希少植物の生育環境を明らかにする

薩南諸島とは、鹿児島県の南側海域にある島々のことを指します。その中の奄美大島と徳之島には、アマミノクロウサギをはじめとした様々な固有種・希少種が生息しています。そのため、これらの島は、沖縄県の沖縄島北部、西表島とともに、世界自然遺産への登録申請が行われているところです。これらの固有種・希少種を保護するためには、まず生息環境を理解する必要があります。そこで、私たちは、徳之島の天然林において、希少植物であるエビネ属の生育環境を調べています。
これまでの研究では、成熟した森林(樹木のサイズが大きく、本数が少ない森林)でエビネ属の植物が多くなることが分かりました。成熟した森林では、光の量が少なく、土壌の肥沃度が高くなりますが、このような環境がエビネ属の生育に適しているのかもしれません。今後、光、水、養分などの環境要因の中で、エビネ属の生育に強く関係するものを特定していく予定です。これらの研究成果は「希少植物の保護にどのような森林を残した方がよいのか?」という疑問に答えてくれます。
早生樹の育林技術を開発する

森林は木材生産という役割も担っています。この役割は我々の生活に木造住宅や木質製品を提供してくれます。ただし、この役割の恩恵を受けるためには、日本の林業を活性化させる必要があります。その方法の一つとして、成長の速い樹種(早生樹)を育て、短期的に木材を収穫することが考えられます。
そこで、私たちは、成長が速く、材質も良いコウヨウザンという針葉樹に着目し、日本における育林技術(森林の造成技術)の開発を行っています。コウヨウザンは中国や台湾に生育する樹種ですが、日本で植林を行うと、その苗木がウサギに食べられてしまうことが分かってきました。
これを受けて、私たちは、食害を防ぐ植栽手法の提案とその実証実験を行っています。実用的な技術に達するには、さらに手法の低コスト化・簡易化が必要になりますが、今後、その道筋を一歩ずつ進んでいく予定です。